飯盒
2021年01月01日
これまで何度も炊飯器ケーキや飯盒ケーキを作ってきたのですが、ずっと懸案だったのが、ドライフルーツなどの具が下の方に沈殿してしまう事。売ってるケーキや他の人の作品をみると、下半分以下に沈殿してる、なんて事はなくて、上下に均等に混ざっています。いろいろ自分で考えて試してみたのですが、やっぱり下に溜まる。そこで今回から、他の人の作例を参考にして、「具が均等に混ざったパウンドケーキ」を目指していきます。
下半分に沈殿したラムレーズン
どうやったら均等に混ざって焼きあがるのか?
■温度管理が大事
パウンドケーキ関係の記事を見ていて、一番多く書いてあったのが、「温度に注意する事」という事でした。一般にパウンドケーキ作りでは、バター、卵は「常温に戻す」とされているのですが、この説明では不十分です。具体的には、バターは「パンに塗れるほどに柔らかく」、卵は「だいたい40度くらいの温かさ」にする必要がある様です。
バターの方は夏場なら、冷蔵庫の外に出しておけば、そのくらいの柔らかさになりそうですが、卵の方は夏でも湯につけて温める必要がありそうです。冬場ならバターも温めねばならないでしょう。ただし、バターは溶けてしまうと、固形の時とは全く性質が異なるそうです(ウェットでどっしりした仕上がりになるとか)。
どうして卵が冷えたままではダメなのかというと、ざっくり言えば、バターは脂、卵は水で、そのままでは決して混ざり合わないからです。まぁ、熱加えて焼いてしまえば混ざりますが、それでは具が沈殿してしまう原因になるとか。良い感じに混ざり合わせるのが肝心の様です。
バターはパンに塗れる程度に柔らかく
砂糖は一旦ゴムベラで混ぜてから
ハンドミキサーできっちりクリーム状に混ぜ込みます
約40度くらいのお湯で溶き卵を温めます
茹ってしまいそうですが、案外温まるのに時間がかかります
1/4ずつ入れて、ハンドミキサーでかき混ぜます
一気にやらない事
良い感じにクリーム状に混ざりました
いつもよりふんわりした感じです
今回はちゃんと篩を使って粉を振りました
■ドライフルーツの処理
具を沈殿させないためには、ドライフルーツの方の処理も必要だという事がわかりました。これまでは瓶から出したやつをそのまま生地に混ぜ込んでいたのですが、水分は出来るだけ切る必要があるそうです。具体的には、ザルで酒を落とし、キッチンペーパーで水気を取って、薄力粉をまぶすそうです。そうする事で、生地の中で抵抗力が生まれるのでしょうか、沈殿しにくくなるとか。
だったらいっその事、あらかじめ干しておいて使っても良さそうなものですが、今回は干してないので瓶から出したものを、調べた通りに水気を切って、粉をまぶして使ってみる事にしました。もっとも、どんな頑張っても若干の水気は残りますし、粉をまぶして混ぜても、シケシケした感じには変わりがありません。これでは果たして上手くいくのかしら。
キッチンペーパーで水気を切ったドライフルーツに
薄力粉をまぶして混ぜます
切る様にして混ぜた生地に、ドライフルーツを混ぜ込みます
いつもより力の要りました
なんか、いつもよりも量が多いし
どっしりしてます
■焼き時間
今回の材料の分量は、いつもの通り、バター200g、薄力粉200g、ベーキングパウダー10g、砂糖200g、卵L寸2個(170g)、ドライフルーツ200g、ラム酒は本来は50g入れるのですが、今回は忘れてしまいました。
普段とほぼ同じ量なのですが、今回の記事は、いつもよりも量が多く、しかもどっしりした感じです。温度管理とか混ぜ方とか、そういうのを気遣っただけで、いつもと仕上がりがちょっと違う様な気がします。まぁ、気のせいかもしれませんが。
160度に余熱したオーブンに、まずは蓋なしで20分入れて焼きました。頭に焼き目がついたら、包丁で切れ目を入れて再度焼くためです。ところが、20分経って出してみると、ほとんど焼き目はついておらず、むしろ液体に近い。とりあえず、切れ目らしいのを入れて、蓋なしで再度30分焼きます。
30分経って出してみると、表面は良い感じに焼けています。これまで作ってきた飯盒ケーキだと、これぐらいの時間焼けば、中まで熱が通っています。一応、竹串を刺して確認してみました。ところが、中はまだ全然焼けていませんでした。やはり、生地の作り方がこれまでとちょっと違うせいでしょうか。
そこで、今度は蓋をして追加で20分焼きました。今度はちゃんと中まで火が通ってました。これまでこうした点検はサボってましたが、やり方が変わってそれが定着するまでは、ちゃんと確かめておかないと、型から抜いたり切った時に悲惨な事になりますねぇ。
20分そこらでは、全然焼き目がついてませんでした
50分焼いても、中はまだ焼けてません
20分+30分+20分でやっとこ焼きあがりました
■熟成させる
これまで作ってきた飯盒ケーキは、出来て翌日には食べていたのですが、調べた情報の多くは、しばらく置いて熟成させるていました。長い人では5〜7日ほど置いています。常温でおく人、冷蔵庫に入れる人、様々でした。まぁ、時間が経てば、パンウンドケーキは固くなる傾向にありますし、自分みたいに固いケーキ好きな人には有用な情報です。
また、型から抜いた熱々の時に、ブランデーを塗るという情報もありました。熱々の時でないと洋酒がケーキに染み込まない事、熱が飛んでいく過程でアルコールが飛んで、良い感じの大人風味のケーキになるとの事。塗る量はお好みみたいですが、とある作例で80g(約100ml)も塗っていたのがあったので、自分もそれを真似して、ケーキ全体にラム酒を塗りたくりました。
その後、ラップに包んで4日ほど寝かせました。
100mlのラム酒を、底の部分含め
全体にまんべんなく塗っていきます
ラップしてしばらく放置
■結果
さて、ワクワクして切ってみました。結果は、、下半分にドライフルーツが沈殿してました。一体、何がいかんのやろなー。ここでちょっと疑問に感じたのは、どんなに温度に気をつけてバターと卵を混ぜてふんわり仕上げようとも、160度の熱で焼いたら、一旦は溶けて同じ事なんちゃうかな、という事。しかし、多くの人がそれで成功しているからには、やっぱり自分のやり方に何か問題があるのでしょう。
今回、初めてラム酒を100mlも塗ったわけですが、これは流石にやりすぎで、かなりビリビリくる味わいになりました。ただ、洋酒の香りのするケーキってのは、こうやって作ってるのだな、というのは理解できました。次回は50mlくらいにしようと思います。
洋酒を塗ったあと、ラップして置いていたのですが、粗熱をとってからラップしたにも関わらず、結構湿気っぽい、柔らかめの仕上がりになりました。まぁ、この辺りは好みの分かれるところでしょうが、自分はもうちょっと乾燥した固い感じが好きなので、ラップをかける時間とか、そういうのを再検討したいと思います。
今回は、具が沈殿したという意味では失敗でしたが、学ぶところも多い作成となりました。
次回また頑張ろう
2020年12月07日
以前、飯盒でパウンドケーキらしいものを作ろうと挑戦し、それっぽいものを作ったのですが、その後の調べで、パウンドケーキというのは、小麦粉、バター、砂糖、卵をそれぞれ1パウンドずつ使っているケーキである事が分かりました。お恥ずかしい話しですが、パウンド(pound)というのが量目の単位の事でなく、バウンド(bound)と勘違いしておりまして、その割には跳ね返る様な柔らかさはないよなー、とか思ってました。という訳で、パウンドケーキとして作り直します。
■材料
自分が炊飯器ケーキを作る際には、ホットケーキミックスを使っていたのですが(その延長で飯盒ケーキもホットケーキミックスを使っていた)、パウンドケーキでは薄力粉を使います。ホットケーキミックスは、ホットケーキを作るにあたって最適化された粉や砂糖などの配合がされている訳ですが、むしろそれがケーキを作る上で、砂糖だのバターだのの配合を難しくする要因でした。パウンドケーキでは、小麦粉、バター、砂糖、卵をそれぞれ1:1:1:1の割合で混ぜれば良いので、全然頭をつかう必要がありません。
とは言えども、パウンドケーキで検索すれば、星の数ほどレシピが出てきます。基本的な部分では共通していても、それぞれアレンジされていて、レシピの数だけ味わいがある、という事です。その意味で、当協会の飯盒パウンドケーキもオリジナルレシピ、という事になります。で、使う材料は以下の通り。
- バター:200g
- 砂糖:200g
- 溶き卵:200g
- ラム酒:50g
- 薄力粉:200g+ベーキングパウダー:10g
順番は使う順です。どうして200gなのかというと、バターが200gなのでそれに合わせました。300gにしても良いですが、飯盒からはみ出てしまいますし、飯盒からケーキを抜く時に胴体で千切れたり、熱が通り切ってなかったりする事がありますし、その前にそんなに沢山食べれません(爆)
バターの代わりにマーガリンやショートニングでも可
ただし、かなりライトな食味になります
■作り方
作り方は、一般的なパウンドケーキの作り方とほぼ同じです。むしろ重要なのは使用する道具で、ハンドミキサーはあった方が良いです。この女子力たっぷりな道具のお陰で、ケーキ作りの億劫さは20%くらいまでに軽減され、かつ準備さえ出来ていれば、2時間ほどでケーキを作る事が出来ます。では、作り方を説明します。
- まず、バターと卵を常温に戻します。冷蔵庫で冷えたままだと、いくらハンドミキサーを使ってもバターをかき混ぜる事が出来ません。また、卵が冷えていると、バターに混ぜる際にバターが固まってしまって、上手く混ぜる事が出来ません。
最初の内は、バターがミキサーに結構絡まります
- 常温に戻したバターをボウルに入れ、ハンドミキサーでざっと崩します。そして砂糖を3回くらいに分けながら、バターに混ぜていきます。一気に砂糖を入れると、ミキサーの勢いで砂糖が飛んだりしますので、ゆっくりしっかり混ぜましょう。
砂糖は散らばらない様に、少しずつ
- 次に溶き卵を混ぜます。これはほんのちょっとずつ、混ぜていきます。一気にドバッと入れると、なかなか上手い事混ざりません。室温が寒い等、上手いこと混ざらないときは、ボウルをぬるま湯に入れながらやると、上手い事いく時があります。ただし、バターが溶けない様に注意です。
卵は10回くらいに分けて入れるつもりで
- 卵が混ざったら、ラム酒を入れてかき混ぜ、ベーキングパウダーを混ぜた薄力粉を入れて混ぜます。これは一気に入れて大丈夫ですが、問題は混ぜ方で、ぐるぐるかき回す様なやり方でなく、ゴムベラで切る様に混ぜ、時々ひっくり返して徐々に混ぜていきます。ドライフルーツを入れたりするなら、完全に粉が混ざってから混ぜ込みます。
ラム酒を入れる頃には、大分液体っぽくなってます
粉は一気に入れていいです
ドライフルーツなどを入れると贅沢になります
- 混ぜたタネを飯盒に入れます。フッ素加工されている飯盒だとそのまま入れても大丈夫ですが、普通の飯盒の場合は、クッキングペーパーをせっとしてから入れます。
フッ素加工、また再販してほしいですねぇ
- オーブンは160度で余熱します。余熱が完了したら、まず20分は蓋なしで焼きます。その後、蓋をして5分焼きます。ずっと蓋をしてないと、ケーキの上の部分が黒焦げになります。逆にずっと蓋をしっぱなしだと、上の部分は焦げ目がつきません。
- 焼きあがったら、飯盒からケーキを出して、翌日まで放置します。飯盒に入れっぱなしだと、完全に冷えたあと、ケーキが飯盒から出てこない場合があります。焼きたては柔らかいケーキですが、翌日まで放置して完全に冷ますと、硬いパウンドケーキらしいケーキになります。
■焼き時間の関係
焼き時間は合計で70分です。結構長い時間焼きますが、試しに50分にしてみたところ、見た目はしっかり焼けてる様ですが、中が生だった事が何度かありました。逆に70分以上焼くと、表面の焦げの部分が分厚くなってしまいます。まぁ、いわゆる皮の部分で、そのカチカチの部分が好きって人もいるでしょうから、そのあたりはお好みで調整してください。
作り方でも説明しましたが、最初の20分は蓋をせずに焼く事で、上の部分も他の部分と同じ様に焼き目を入れる事が出来ます。そうする事で、切った時に、四辺がしっかりした感じになります。蓋をしっぱなしで焼くと上の部分は焼き目がつかず、従って切った時に、上の部分がふにゃふにゃした感じになります。まぁ、この辺りも、好みやアレンジの範囲ですので、いい感じにやっていただくと良いでしょう。
70分くらいだと、こんな感じの断面です
80分だと、結構焼けていましました
■硬さと沈殿
炊飯器ケーキは、バターを溶かして作る関係か、ドライフルーツなどを入れても全部沈殿して底に溜まってしまう傾向にありました。その反省から、パウンドケーキに挑戦したのですが、それでも半分から下の方に沈んでしまう傾向があり、作り方にまだまだ改善点がある様に思います。
ただ、個人的には、粉の量を1でなく1.5くらいに増量して、もう少し身の詰まった感じにしても良いのではないかなな、と思わないではないです。それではパウンドケーキにならないのですが、この辺りは好みでアレンジしても良いのかなと思います。
ちなみに、この手のケーキは一晩くらい冷ましておくと、翌日には結構硬くなるのですが(まぁそれが良いのですが)、現状の1:1:1:1だと、結構サクサクした様な感じです。粉を増やす、水飴を使うなどすると、もっと身が詰まってたり、しっとりした感じの仕上がりになるのかもしれません。
2020年03月29日
日本飯盒協会は、軍隊の飯盒とそれに類する調理器具を愛でる協会ですが、飯盒、つまり旧日本軍で開発された飯盒は、もっぱらコメを炊く道具としての役割が主であるとの考えから、この項では、ご飯の炊き方、美味しいご飯とはなんであるかについて述べたいと思います。
コメ離れ、などと言われて久しいですが
やっぱり日本人は日本のコメが美味しいと思う民族だと思うのです
■ご飯の炊き方
直火でのご飯の炊き方は、様々なサイトでも紹介されていて、飯盒で炊く方法についても、多くが語られています。そのどれを参考にしても差し支えないのですが、当協会としては、総則として以下の方法で行っております。
上記の炊き方は、常温無風の環境での場合に最適化されたもので、気温が低かったり、風が吹いていたりすると、炊く時間に差が出たり、炊き加減に違いが出たりします。特に焚き火の場合は、火力調整が容易でなく、環境の影響を大きく受けますので、難易度が高いです。
ですので、環境条件の違いを考慮しながら、上の炊き方(炊飯時間)により近づいた炊き方が出来た時、とても美味しいご飯を食べる事が出来ます。
ご飯の炊き方も大事ですが、
コメの研ぎ方も大事です意外と適当な人が多いです
- 米を研ぐ。ただし、軽く一回程度。濯ぎは3回ほど。
- 30分から1時間、水に漬ける。(冬場は1時間推奨)
- 2合炊きの場合:4〜5分で沸騰する強火にかけ、沸騰したら4〜5分弱火にかける。
- 4合炊きの場合:5分前後で沸騰する強火にかけ、沸騰したらそのまま1.5分炊き、その後3.5〜4分弱火にかける。
- 火から下ろして15分ほど蒸らす(飯盒はひっくり返さなくてもよい)
上記の炊き方は、常温無風の環境での場合に最適化されたもので、気温が低かったり、風が吹いていたりすると、炊く時間に差が出たり、炊き加減に違いが出たりします。特に焚き火の場合は、火力調整が容易でなく、環境の影響を大きく受けますので、難易度が高いです。
ですので、環境条件の違いを考慮しながら、上の炊き方(炊飯時間)により近づいた炊き方が出来た時、とても美味しいご飯を食べる事が出来ます。
ご飯の炊き方も大事ですが、
コメの研ぎ方も大事です意外と適当な人が多いです
焚き火による飯盒炊爨の実演
炊く作業自体は10分程度で終わります
■美味しいご飯とは何か
炊きたての飯の香りをいつくしみ、そのまろやかな舌ざわりと、あるかなきかのうま味を一生の友としてきた人びとも、少なくなってきたとはいいながら、その繊細微妙な米飯の風味というものを尊んできたのである。
大塚力『食における日本の近代化』(国際連合大学 1982年)
「美味しい」と「感じる」事は、個々人の味覚や感性によるところが大であって、何をもってして、また数値的に、「美味しい」という事を規定するのは非常に難しい事であるのですが、文学的な表現をすれば、上記の様になろうかと思います。
まず、それほど美味しくないご飯の食感をあげてみると、こんな感じであろうと思います。
- 芯があるご飯
水に浸ける時間が短かった、火力が弱かった、逆に強すぎた、炊飯時間が短かった、こういう場合になります。書いて字のごとく、固かったり粉っぽい芯が残ったご飯で、炊き損じの代表格です。 - べたべたのご飯
水に浸けすぎた、水の量が多かった、火力が弱くて炊きあがりに時間がかかった、こういう場合になります。芯飯に比べればマシですが、ご飯を食べる楽しみが減退します。 - なんかモソっとしたご飯
沸騰までに時間が掛かった割には、弱火で重湯が引く時間が短かった場合に多いです。芯飯になりかけたのが辛うじてならなかった感じです。 - 焦げ飯
火力が強すぎた時は言うに及ばず、弱火でも火にかけている時間が長いと焦げます。底が炭化した時は、飯がまずいだけでなく、飯盒の後始末も大変です。
では、美味しいご飯というのは、どういうものか。様々な表現がありますが、こんな感じであろうと思います。
- ふっくらしている
- 米が立っている(べたべたしていない)
- 米独自の香りがし、噛むほどに味が増す(オカズいらないほど)
昔の人は、一汁一菜といって、オカズはほとんど食べずご飯ばっかり食べていた、という話しがありますが、焚き火で炊いた美味しいご飯を食べてみると、欲しくなるのは沢庵や梅干しといった漬け物や、メザシといった焼き魚、みそ汁、果ては塩や醤油、味噌といった、いわゆる一汁一菜のおかずが欲しくなります。昔の人は、カマドで薪を焚いて、お釜でご飯を炊いていた訳ですが、お釜も下半分に火が当たる構造ですし、焚き火で炊いたご飯は唸るほど美味くて、大したオカズが要らなかったのではないか、と思うのです。
ところが、実際にはこれが結構美味かったりします
■ご飯が美味しくなる理由
お米というのは、主成分は澱粉ですが、これは生のままでは美味しくないどころか、人間の胃腸では消化も出来ません。そこで加熱して消化吸収し易くする訳ですが、この加熱、つまり炊いてご飯にする事よって、美味しく食べれる様になるのです。その炊飯の過程を科学的に表現すると、以下の様になります。
- 当初、米と水が分離していて、釜の底からの熱の伝導で熱せられた湯が、米粒の間隙を対流して米粒の加熱が行われる時期。
- 米の澱粉が溶けてコロイド状となり、ために湯の対流が止まり同時に米粒の中の澱粉の糊化が進む時期。
- いわゆる<蒸らす>ため、米粒間と釜底に残留する水分の蒸散、米粒の中心部への吸収と膨軟が期待される時期。
- 釜底の水分が涸れて加熱し、底一面に狐色に色づいてα化が進み、更に良化して香味がつき、かくて真にうまい飯が完成する時期
■バーナーの大きさと炊飯量の違い
飯盒に当たる火の範囲が広いほど、α化がよりよく進みます。焚き火は飯盒の全周を覆う様に火が当たりますから、焚き火で炊いたご飯は美味しくなるのです。カマドで羽釜を使って炊いたご飯もこれと同じ理屈で、釜の底全体に火が当たるから美味しい訳で、「直火炊き」をうたう炊飯器の釜の構造もそれに準じています。同じ直火でも、バーナーヘッドの小さいコンロではあまり美味しくないのは、火の当たる範囲が狭く熱伝導の範囲が狭く、その他の部分のα化が進まない事が原因です。同様に2合炊きでは美味しかったのに4合ではイマイチだったりするのも、熱が伝導しない部分のα化が進みにくいからです。![]() | 広口バーナーで2合炊きの場合 バーナーヘッドの大きい家庭用コンロやストーブの場合、飯盒の底全体に火が当たり、かつ2合炊きの場合は嵩も低いので熱が上まで伝導し易く、比較的美味しいご飯が炊けます。 |
![]() | 広口バーナーで4合炊きの場合 バーナーヘッドが大きいコンロでも、4合炊きの場合は嵩が高く、上に行くほど熱の伝導が落ちるので、上の方が水っぽい感じになる事が多いです。 |
![]() | 小口バーナーで2合炊きの場合 バーナーヘッドが小さいコンロの場合、火が当たる範囲が狭く、伝導する範囲も狭いので、2合炊きでも美味しく炊けなかったり、火の当たってる範囲が焦げたりします。 |
![]() | 小口バーナーで4合炊きの場合 バーナーヘッドが小さいコンロで4合炊きするのは、まったく難しく、上は水っぽいのに下は焦げている、という事がよく起こります。 |
![]() | 焚き火で2合炊きの場合 焚き火は飯盒全体に火が当たり、全体的に熱を伝導しますので、非常に美味しいご飯を炊く事が出来ます。これが飯盒本来の使い方です。沸騰したら、薪を入れるペースを落として、じっくりと炊きます。 |
![]() | 焚き火で4合炊きの場合 焚き火で4合炊く場合は、2合の場合より若干時間が伸びますが(強火5〜6分、弱火5〜6分)、熱は全体的に当たりますので、美味しく炊けます。12分以内に完了すれば、無駄に焦げずにいい感じに炊けます。 |
■炊爨と炊飯の違い
「飯盒炊飯なのか、飯盒炊爨なのか、どちらですか? 」という質問がよく寄せられません。読み方も「すいはん」と「すいさん」、三文字目の「は」と「さ」の違いでしかないですし、飯盒でご飯炊く事には違いないので、炊飯でも間違いないのでは?と思われがちですが、辞書的には「飯盒炊爨」が正解です。
そもそも、炊爨の「爨」という字の成り立ちですが、「火で木を燃したカマドの上に鍋を置く男女」という構図になっています。字の意味は「炊事をする」という意味で、ご飯だけでなくオカズも料理する事を意味しています。ここで重要なのは、木、すなわち薪を燃やして料理する、という事で、漢字が成立した時代には、料理は薪を使った火力で行われるのが一般でした。
時代は下って、飯盒が日本でも使われる様になった時代、まだまだ料理はカマドで行われる事が一般的でしたし、ましてや軍隊が飯盒で炊事をするのは、戦地や演習、すなわち野外でしたから、薪を使って直火で使うのが前提でした。故に「飯盒炊爨」という熟語になった訳です。
さて、さらに時代は下って、我々の日常的な生活での料理は、ガスを使う事が一般的になりました。アウトドアでも、ガソリンや灯油、アルコールといった燃料を使うポータブルストーブが主流で、薪を使って焚き火で料理するという機会は、滅多にありません。ましてやカマドがある家など、ほぼ皆無です。なので、炊爨という言葉が、死語となってしまいました。
そこで、当協会では、焚き火を使って飯盒でご飯を炊く事を「飯盒炊爨」、焚き火以外の火力を使う場合を「飯盒炊飯」と呼び分ける事にしました。そして、その言葉の間には、格段のスキルの差があると考えます。というのも、ポータブルストーブやコンロを使った場合よりも焚き火の場合の方が相当に難易度が高く、また焚き火を使った場合の方が美味しさが倍増するからです。
そもそも、炊爨の「爨」という字の成り立ちですが、「火で木を燃したカマドの上に鍋を置く男女」という構図になっています。字の意味は「炊事をする」という意味で、ご飯だけでなくオカズも料理する事を意味しています。ここで重要なのは、木、すなわち薪を燃やして料理する、という事で、漢字が成立した時代には、料理は薪を使った火力で行われるのが一般でした。
時代は下って、飯盒が日本でも使われる様になった時代、まだまだ料理はカマドで行われる事が一般的でしたし、ましてや軍隊が飯盒で炊事をするのは、戦地や演習、すなわち野外でしたから、薪を使って直火で使うのが前提でした。故に「飯盒炊爨」という熟語になった訳です。
さて、さらに時代は下って、我々の日常的な生活での料理は、ガスを使う事が一般的になりました。アウトドアでも、ガソリンや灯油、アルコールといった燃料を使うポータブルストーブが主流で、薪を使って焚き火で料理するという機会は、滅多にありません。ましてやカマドがある家など、ほぼ皆無です。なので、炊爨という言葉が、死語となってしまいました。
そこで、当協会では、焚き火を使って飯盒でご飯を炊く事を「飯盒炊爨」、焚き火以外の火力を使う場合を「飯盒炊飯」と呼び分ける事にしました。そして、その言葉の間には、格段のスキルの差があると考えます。というのも、ポータブルストーブやコンロを使った場合よりも焚き火の場合の方が相当に難易度が高く、また焚き火を使った場合の方が美味しさが倍増するからです。
2019年07月27日
今年は3月末の勝沼戦から、連続してWEXイーストに参戦しているのですが、その度に前夜祭を催し、飯盒炊飯も実施してきました。今回の爺ヶ岳戦は、今年の前半戦の締めくくりになるレースで、しかも前日の27日は土用の丑の日という事もあって、いつも以上に贅沢ゴージャスな内容を展開しました。
テントもバイクも準備が終わって
ダラダラタイムを楽しむエンデューロ部隊員
WEXでは前日にセクションスクールという試走があるのですが、これに出るのかどうなのかが、毎回エンデューロ部隊員のダラけた課題になります。ダラだけに本心では面倒くさくて出る気があまり無いのですが、人から言われて仕方なく出る事もあります。が、今回は誰も行く気が無かったので、即座にダラタイムに突入。と行っても、前日受付は1600時からでまだまだ時間がある。そこで先に買い出しに行くベー、という事で、近所の西友に繰り込みました。
さて、ここ最近、自分が口酸っぱくして主張するのは、「この歳になったらエエもん食わないかん」という事。同じ肉でも、アンガス牛とかじゃなく、倍の値段をしても霜降り和牛を食った方が、満足感が倍以上なのです。もしかしたら、明日はレースで大怪我するかもしれないし、美味いもの食って鋭気を養うのは大事な事なのです。すると、隊員たちも心得てきたのか、3000円もするたっかい牛肉を買っているでは無いですか。結構な事です。
そんな事より、我々の目を惹き付けて離さなかったのが、うなぎの蒲焼。もちろん安くて皮の硬い中国産ではなく、宮崎産の1匹1700円もするやつ。今日は土用なんだから、やっぱりウナギ食わないかんやろ、という事で、全員1匹ずつ購入。タレも買って、飯盒で温めて食う事にしました。
そんな事より、我々の目を惹き付けて離さなかったのが、うなぎの蒲焼。もちろん安くて皮の硬い中国産ではなく、宮崎産の1匹1700円もするやつ。今日は土用なんだから、やっぱりウナギ食わないかんやろ、という事で、全員1匹ずつ購入。タレも買って、飯盒で温めて食う事にしました。
4人だと3合くらいがお残し無しで丁度良いです
今回もプリムスIP-2243で炊飯
これはトランポに常備してるガスストーブです
パーフェクトな理想値で炊き上がり
ここんとこ好評の飯盒メシは、今回は3合の無洗米を用意。メシ以外にも色々食うので、4人くらいだと3合で丁度良い分量なのです。温泉に行く時にコメを水に浸しておいたので、小一時間は水に浸けてありました。
爺ヶ岳は地表より標高の高いところにありますが、暖かい季節でもあり、ガスの気化も良く、理想値の強火4分ほどで沸騰、そのまま強火を1分続け、弱火に切り替え3分半で炊飯完了。焦げ付きもなく、実に見事に炊けました。
爺ヶ岳は地表より標高の高いところにありますが、暖かい季節でもあり、ガスの気化も良く、理想値の強火4分ほどで沸騰、そのまま強火を1分続け、弱火に切り替え3分半で炊飯完了。焦げ付きもなく、実に見事に炊けました。
メシを蒸らしている間に、うなぎの蒲焼の準備。買ってきた時は冷凍されてたのか硬かったのですが、まずこれをハサミで半分に切り、飯盒の中に入れてタレを入れ、弱火で5分ほど温めました。
うなぎの蒲焼は半分にして飯盒へ
3匹入れたら、飯盒半分くらいになりました
メシを炊いてる間、他の隊員は和牛ファイヤー!
結果は大好評! これまでの前夜祭では、肉焼いて食うというのがメインでしたが、今回初めてご飯が活きる副食に当たりました。というか、こんな贅沢なもん、普段は食べてないので、もう、盆と正月が一緒に来た様な感じで大満足。やっぱりエエもんは食わんといかんなぁ、と思いました。
メシもうなぎもいい感じに出来ました
やっぱり、飯盒直食いは飯盒使いのロマンだと思うのです
2019年07月10日
先日作った缶詰カレーが今ひとつだったので、コンビーフ使った料理で簡単そうなのは無いかと探したところ、蒸すだけでOKのいい感じのがありましたので、早速チャレンジしてみました。レースの前夜は、何だかんだで忙しいので、簡単に出来るのは有り難く便利です。
キャベツ1/4個、エノキ1つをいい感じに切っておきます
■作り方
極めて簡単です。用意するのは、コンビーフ1缶(100g)、キャベツ大1/4、エノキダケ、水50cc、固形スープ1個、塩コショウ。キャベツは芯を取り、ザク切りにします。エノキは下の部分を切り落とし、半分くらいに切っておきます。
飯盒にキャベツとエノキを入れ、固形スープを入れて、水を入れ、蓋をして約7分蒸します。野菜が蒸せたら、コンビーフを入れてかき混ぜ、塩コショウで味を整えて、出来上がりです。
道具も飯盒意外に必要なく、極めて簡単です。もし一手間加えるとしたら、キャベツは一枚ずつ剥がして、太い筋を取って葉だけ入れると、もっと柔らかく仕上げる事が出来ます。
刻んだキャベツとエノキ、固形スープ、水を入れます
結構てんこ盛りになりました
蓋をして中火で7分蒸します
7分蒸したら、嵩が大分減りました
おもむろにコンビーフを入れます
レシピではこの段階でコンビーフを混ぜてましたが
キャベツにまだ芯が残ってたので、2分蒸しました
蒸し方完了
コンビーフは解してから入れた方が良かったです
コンビーフを混ぜて出来上がり
■食べてみた感想
味付けは固形スープだけですが、コンビーフ自体がコンビーフ味(当たり前ですが)ですので、実にコンビーフ風味の仕上がりになりました。コンビーフ好きにはたまらんと思いますが、逆にコンビーフが苦手な人には向かないかも。もっともコンビーフ嫌いな人は作らないでしょうが。。
個人的には、今ひとつでした。これならコンビーフに塩振って、そのまま食べた方が美味いと思いますし、絶対ご飯に合うと思います。コンビーフって、それそのものがある意味完成品ですから、それをさらにどうにかすると、元の持ち味が死んでしまう傾向のある食べ物だと思うのですが、この料理もその一つだなぁ、と感じました。
むしろ、コンビーフは混ぜない方が良かったかも?