飯盒

2020年03月29日

 日本飯盒協会は、軍隊の飯盒とそれに類する調理器具を愛でる協会ですが、飯盒、つまり旧日本軍で開発された飯盒は、もっぱらコメを炊く道具としての役割が主であるとの考えから、この項では、ご飯の炊き方、美味しいご飯とはなんであるかについて述べたいと思います。


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コメ離れ、などと言われて久しいですが
やっぱり日本人は日本のコメが美味しいと思う民族だと思うのです




■ご飯の炊き方

 直火でのご飯の炊き方は、様々なサイトでも紹介されていて、飯盒で炊く方法についても、多くが語られています。そのどれを参考にしても差し支えないのですが、当協会としては、総則として以下の方法で行っております。
  1. 米を研ぐ。ただし、軽く一回程度。濯ぎは3回ほど。
  2. 30分から1時間、水に漬ける。(冬場は1時間推奨)
  3. 2合炊きの場合:4〜5分で沸騰する強火にかけ、沸騰したら4〜5分弱火にかける。
  4. 4合炊きの場合:5分前後で沸騰する強火にかけ、沸騰したらそのまま1.5分炊き、その後3.5〜4分弱火にかける。
  5. 火から下ろして15分ほど蒸らす(飯盒はひっくり返さなくてもよい)
 美味しいご飯が炊けるかどうかは、一重にいい感じの時間で沸騰するかどうかに掛かっています。沸騰までに時間が極端に短い場合はうっかり焦がしてしまいます。逆に沸騰に時間がかかる、あるいは沸騰しないままに炊けてしまったといった場合は、ベタ飯になったり、芯飯になったりします。
 上記の炊き方は、常温無風の環境での場合に最適化されたもので、気温が低かったり、風が吹いていたりすると、炊く時間に差が出たり、炊き加減に違いが出たりします。特に焚き火の場合は、火力調整が容易でなく、環境の影響を大きく受けますので、難易度が高いです。
 ですので、環境条件の違いを考慮しながら、上の炊き方(炊飯時間)により近づいた炊き方が出来た時、とても美味しいご飯を食べる事が出来ます。


ご飯の炊き方も大事ですが、
コメの研ぎ方も大事です
意外と適当な人が多いです


焚き火による飯盒炊爨の実演
炊く作業自体は10分程度で終わります


■美味しいご飯とは何か

 炊きたての飯の香りをいつくしみ、そのまろやかな舌ざわりと、あるかなきかのうま味を一生の友としてきた人びとも、少なくなってきたとはいいながら、その繊細微妙な米飯の風味というものを尊んできたのである。

大塚力『食における日本の近代化』(国際連合大学 1982年)

 「美味しい」と「感じる」事は、個々人の味覚や感性によるところが大であって、何をもってして、また数値的に、「美味しい」という事を規定するのは非常に難しい事であるのですが、文学的な表現をすれば、上記の様になろうかと思います。
 まず、それほど美味しくないご飯の食感をあげてみると、こんな感じであろうと思います。
  • 芯があるご飯
    水に浸ける時間が短かった、火力が弱かった、逆に強すぎた、炊飯時間が短かった、こういう場合になります。書いて字のごとく、固かったり粉っぽい芯が残ったご飯で、炊き損じの代表格です。
  • べたべたのご飯
    水に浸けすぎた、水の量が多かった、火力が弱くて炊きあがりに時間がかかった、こういう場合になります。芯飯に比べればマシですが、ご飯を食べる楽しみが減退します。
  • なんかモソっとしたご飯
    沸騰までに時間が掛かった割には、弱火で重湯が引く時間が短かった場合に多いです。芯飯になりかけたのが辛うじてならなかった感じです。
  • 焦げ飯
    火力が強すぎた時は言うに及ばず、弱火でも火にかけている時間が長いと焦げます。底が炭化した時は、飯がまずいだけでなく、飯盒の後始末も大変です。
 では、美味しいご飯というのは、どういうものか。様々な表現がありますが、こんな感じであろうと思います。
  • ふっくらしている
  • 米が立っている(べたべたしていない)
  • 米独自の香りがし、噛むほどに味が増す(オカズいらないほど)
 昔の人は、一汁一菜といって、オカズはほとんど食べずご飯ばっかり食べていた、という話しがありますが、焚き火で炊いた美味しいご飯を食べてみると、欲しくなるのは沢庵や梅干しといった漬け物や、メザシといった焼き魚、みそ汁、果ては塩や醤油、味噌といった、いわゆる一汁一菜のおかずが欲しくなります。昔の人は、カマドで薪を焚いて、お釜でご飯を炊いていた訳ですが、お釜も下半分に火が当たる構造ですし、焚き火で炊いたご飯は唸るほど美味くて、大したオカズが要らなかったのではないか、と思うのです。

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某ギャンブル漫画の地下帝国で出てきた「貧しい食事」
ところが、実際にはこれが結構美味かったりします


■ご飯が美味しくなる理由

 お米というのは、主成分は澱粉ですが、これは生のままでは美味しくないどころか、人間の胃腸では消化も出来ません。そこで加熱して消化吸収し易くする訳ですが、この加熱、つまり炊いてご飯にする事よって、美味しく食べれる様になるのです。その炊飯の過程を科学的に表現すると、以下の様になります。
  1. 当初、米と水が分離していて、釜の底からの熱の伝導で熱せられた湯が、米粒の間隙を対流して米粒の加熱が行われる時期。
  2. 米の澱粉が溶けてコロイド状となり、ために湯の対流が止まり同時に米粒の中の澱粉の糊化が進む時期。
  3. いわゆる<蒸らす>ため、米粒間と釜底に残留する水分の蒸散、米粒の中心部への吸収と膨軟が期待される時期。
  4. 釜底の水分が涸れて加熱し、底一面に狐色に色づいてα化が進み、更に良化して香味がつき、かくて真にうまい飯が完成する時期
 唸るほど美味しいご飯というのは、4番目のα化と香味(底が軽く狐色に焦げることによる)によってもたらされるのですが、これは飯盒にどの様に火が当たっているかによって決まって来ます。

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小さい火でも炊けない事はないですが
それは炊くというより
ふやかすと言った方が近い出来栄えになります



■バーナーの大きさと炊飯量の違い

 飯盒に当たる火の範囲が広いほど、α化がよりよく進みます。焚き火は飯盒の全周を覆う様に火が当たりますから、焚き火で炊いたご飯は美味しくなるのです。カマドで羽釜を使って炊いたご飯もこれと同じ理屈で、釜の底全体に火が当たるから美味しい訳で、「直火炊き」をうたう炊飯器の釜の構造もそれに準じています。同じ直火でも、バーナーヘッドの小さいコンロではあまり美味しくないのは、火の当たる範囲が狭く熱伝導の範囲が狭く、その他の部分のα化が進まない事が原因です。同様に2合炊きでは美味しかったのに4合ではイマイチだったりするのも、熱が伝導しない部分のα化が進みにくいからです。

hango_fire1広口バーナーで2合炊きの場合
 バーナーヘッドの大きい家庭用コンロやストーブの場合、飯盒の底全体に火が当たり、かつ2合炊きの場合は嵩も低いので熱が上まで伝導し易く、比較的美味しいご飯が炊けます。
hango_fire2広口バーナーで4合炊きの場合
 バーナーヘッドが大きいコンロでも、4合炊きの場合は嵩が高く、上に行くほど熱の伝導が落ちるので、上の方が水っぽい感じになる事が多いです。
hango_fire3小口バーナーで2合炊きの場合
 バーナーヘッドが小さいコンロの場合、火が当たる範囲が狭く、伝導する範囲も狭いので、2合炊きでも美味しく炊けなかったり、火の当たってる範囲が焦げたりします。
hango_fire4小口バーナーで4合炊きの場合
 バーナーヘッドが小さいコンロで4合炊きするのは、まったく難しく、上は水っぽいのに下は焦げている、という事がよく起こります。
hango_fire5焚き火で2合炊きの場合
 焚き火は飯盒全体に火が当たり、全体的に熱を伝導しますので、非常に美味しいご飯を炊く事が出来ます。これが飯盒本来の使い方です。沸騰したら、薪を入れるペースを落として、じっくりと炊きます。
hango_fire6焚き火で4合炊きの場合
 焚き火で4合炊く場合は、2合の場合より若干時間が伸びますが(強火5〜6分、弱火5〜6分)、熱は全体的に当たりますので、美味しく炊けます。12分以内に完了すれば、無駄に焦げずにいい感じに炊けます。

■炊爨と炊飯の違い

 「飯盒炊飯なのか、飯盒炊爨なのか、どちらですか? 」という質問がよく寄せられません。読み方も「すいはん」と「すいさん」、三文字目の「は」と「さ」の違いでしかないですし、飯盒でご飯炊く事には違いないので、炊飯でも間違いないのでは?と思われがちですが、辞書的には「飯盒炊爨」が正解です。
 そもそも、炊爨の「爨」という字の成り立ちですが、「火で木を燃したカマドの上に鍋を置く男女」という構図になっています。字の意味は「炊事をする」という意味で、ご飯だけでなくオカズも料理する事を意味しています。ここで重要なのは、木、すなわち薪を燃やして料理する、という事で、漢字が成立した時代には、料理は薪を使った火力で行われるのが一般でした。
 時代は下って、飯盒が日本でも使われる様になった時代、まだまだ料理はカマドで行われる事が一般的でしたし、ましてや軍隊が飯盒で炊事をするのは、戦地や演習、すなわち野外でしたから、薪を使って直火で使うのが前提でした。故に「飯盒炊爨」という熟語になった訳です。
 さて、さらに時代は下って、我々の日常的な生活での料理は、ガスを使う事が一般的になりました。アウトドアでも、ガソリンや灯油、アルコールといった燃料を使うポータブルストーブが主流で、薪を使って焚き火で料理するという機会は、滅多にありません。ましてやカマドがある家など、ほぼ皆無です。なので、炊爨という言葉が、死語となってしまいました。
 そこで、当協会では、焚き火を使って飯盒でご飯を炊く事を「飯盒炊爨」、焚き火以外の火力を使う場合を「飯盒炊飯」と呼び分ける事にしました。そして、その言葉の間には、格段のスキルの差があると考えます。というのも、ポータブルストーブやコンロを使った場合よりも焚き火の場合の方が相当に難易度が高く、また焚き火を使った場合の方が美味しさが倍増するからです。

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ポータブルストーブの出現で
炊爨は炊飯になり、時と場所をあまり選ばなくなった

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しかし、本当に美味しいご飯が炊けるのは
こんな感じで、鍋釜を覆う様な火で炊いた時です





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2019年07月27日

 今年は3月末の勝沼戦から、連続してWEXイーストに参戦しているのですが、その度に前夜祭を催し、飯盒炊飯も実施してきました。今回の爺ヶ岳戦は、今年の前半戦の締めくくりになるレースで、しかも前日の27日は土用の丑の日という事もあって、いつも以上に贅沢ゴージャスな内容を展開しました。

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テントもバイクも準備が終わって
ダラダラタイムを楽しむエンデューロ部隊員






 WEXでは前日にセクションスクールという試走があるのですが、これに出るのかどうなのかが、毎回エンデューロ部隊員のダラけた課題になります。ダラだけに本心では面倒くさくて出る気があまり無いのですが、人から言われて仕方なく出る事もあります。が、今回は誰も行く気が無かったので、即座にダラタイムに突入。と行っても、前日受付は1600時からでまだまだ時間がある。そこで先に買い出しに行くベー、という事で、近所の西友に繰り込みました。
 さて、ここ最近、自分が口酸っぱくして主張するのは、「この歳になったらエエもん食わないかん」という事。同じ肉でも、アンガス牛とかじゃなく、倍の値段をしても霜降り和牛を食った方が、満足感が倍以上なのです。もしかしたら、明日はレースで大怪我するかもしれないし、美味いもの食って鋭気を養うのは大事な事なのです。すると、隊員たちも心得てきたのか、3000円もするたっかい牛肉を買っているでは無いですか。結構な事です。
 そんな事より、我々の目を惹き付けて離さなかったのが、うなぎの蒲焼。もちろん安くて皮の硬い中国産ではなく、宮崎産の1匹1700円もするやつ。今日は土用なんだから、やっぱりウナギ食わないかんやろ、という事で、全員1匹ずつ購入。タレも買って、飯盒で温めて食う事にしました。

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4人だと3合くらいがお残し無しで丁度良いです

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今回もプリムスIP-2243で炊飯
これはトランポに常備してるガスストーブです

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パーフェクトな理想値で炊き上がり


 ここんとこ好評の飯盒メシは、今回は3合の無洗米を用意。メシ以外にも色々食うので、4人くらいだと3合で丁度良い分量なのです。温泉に行く時にコメを水に浸しておいたので、小一時間は水に浸けてありました。
 爺ヶ岳は地表より標高の高いところにありますが、暖かい季節でもあり、ガスの気化も良く、理想値の強火4分ほどで沸騰、そのまま強火を1分続け、弱火に切り替え3分半で炊飯完了。焦げ付きもなく、実に見事に炊けました。
 メシを蒸らしている間に、うなぎの蒲焼の準備。買ってきた時は冷凍されてたのか硬かったのですが、まずこれをハサミで半分に切り、飯盒の中に入れてタレを入れ、弱火で5分ほど温めました。

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うなぎの蒲焼は半分にして飯盒へ
3匹入れたら、飯盒半分くらいになりました

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メシを炊いてる間、他の隊員は和牛ファイヤー!


 結果は大好評! これまでの前夜祭では、肉焼いて食うというのがメインでしたが、今回初めてご飯が活きる副食に当たりました。というか、こんな贅沢なもん、普段は食べてないので、もう、盆と正月が一緒に来た様な感じで大満足。やっぱりエエもんは食わんといかんなぁ、と思いました。

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メシもうなぎもいい感じに出来ました

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やっぱり、飯盒直食いは飯盒使いのロマンだと思うのです







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tanisi_corp at 20:00コメント(4)

2019年07月10日

 先日作った缶詰カレーが今ひとつだったので、コンビーフ使った料理で簡単そうなのは無いかと探したところ、蒸すだけでOKのいい感じのがありましたので、早速チャレンジしてみました。レースの前夜は、何だかんだで忙しいので、簡単に出来るのは有り難く便利です。


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キャベツ1/4個、エノキ1つをいい感じに切っておきます




■作り方

 極めて簡単です。用意するのは、コンビーフ1缶(100g)、キャベツ大1/4、エノキダケ、水50cc、固形スープ1個、塩コショウ。キャベツは芯を取り、ザク切りにします。エノキは下の部分を切り落とし、半分くらいに切っておきます。
 飯盒にキャベツとエノキを入れ、固形スープを入れて、水を入れ、蓋をして約7分蒸します。野菜が蒸せたら、コンビーフを入れてかき混ぜ、塩コショウで味を整えて、出来上がりです。
 道具も飯盒意外に必要なく、極めて簡単です。もし一手間加えるとしたら、キャベツは一枚ずつ剥がして、太い筋を取って葉だけ入れると、もっと柔らかく仕上げる事が出来ます。

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刻んだキャベツとエノキ、固形スープ、水を入れます
結構てんこ盛りになりました

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蓋をして中火で7分蒸します

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7分蒸したら、嵩が大分減りました

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おもむろにコンビーフを入れます
レシピではこの段階でコンビーフを混ぜてましたが
キャベツにまだ芯が残ってたので、2分蒸しました

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蒸し方完了
コンビーフは解してから入れた方が良かったです

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コンビーフを混ぜて出来上がり


■食べてみた感想

 味付けは固形スープだけですが、コンビーフ自体がコンビーフ味(当たり前ですが)ですので、実にコンビーフ風味の仕上がりになりました。コンビーフ好きにはたまらんと思いますが、逆にコンビーフが苦手な人には向かないかも。もっともコンビーフ嫌いな人は作らないでしょうが。。
 個人的には、今ひとつでした。これならコンビーフに塩振って、そのまま食べた方が美味いと思いますし、絶対ご飯に合うと思います。コンビーフって、それそのものがある意味完成品ですから、それをさらにどうにかすると、元の持ち味が死んでしまう傾向のある食べ物だと思うのですが、この料理もその一つだなぁ、と感じました。

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むしろ、コンビーフは混ぜない方が良かったかも?

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やっぱり、そのまま食べた方が美味しいです










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tanisi_corp at 00:00コメント(0)

2019年07月01日

 「飯盒でご飯を炊く」というと、結構難しい印象がある様です。 電気炊飯器みたいに、スイッチ一つで炊飯から保温までやってくれる訳ではないので、その意味では難しいのは確かです。しかし、実際にやってみて慣れてくると、その難しさというのは、火加減とか火力といった部分で、それさえ感覚的に理解出来ていれば、整った環境ならそれほど難しいものではありません。
 ここでは、飯盒を使った基本的なご飯の炊き方と、難しいと思われる状況、環境を解説したいと思います。



 
家庭用ガスコンロを使った飯盒炊飯
動画は4合炊きの場合
寒い季節なので、沸騰に時間がかかりました





■飯盒の解説

 今、市販されている飯盒は、旧日本軍が開発した兵隊用のものを踏襲したもので、基本的な使い方は当時と変わりありません。この飯盒では、最大で4合のご飯を炊く事が出来ますが、2合ないし3合でも炊く事が出来ます。ただし、1合は火加減の関係で上手に炊けない事が多いです。
 蓋と掛子(中蓋)は米の計量器の代わりで、各々すりきり一杯で蓋は3合、掛子は2合図る事が出来ます。飯盒本体には上下二箇所に水量線が打刻してあって、下は2合の時の、上は4合の時の、水を入れる位置です。3合の場合はその中間まで入れます。
 飯盒はもともとは焚き火に吊り下げて使うのを前提としているので、釣り手が付いています。もっとも、現代家屋やキャンプであっても、飯盒を吊り下げて使う機会というのは滅多になく、コンロに直接置いて使う事が多いです。本稿でもその様な使い方で紹介します。
 革通というのは、もともと飯盒は背嚢に縛着して運搬するのを前提として作られており、この革通に背嚢の革のストラップを通して使ったのですが、その名残です。ただ、最近出回っている中国製の飯盒にはこの革通が省略されていて、これの有無が日本製の見分け方の一つになっています。(→どこで(どこの)飯盒を買えば良いか

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■炊く準備

 ご飯を炊く準備というのは、米を研ぐ事です。そもそも米を研ぐというのは、昔は精米技術がまだ未熟で、精米した米に糠の粉が残っていたりして、そのままで炊くと糠臭い飯になってしまうので、しっかり研いで炊いたという事に由来します。現在市販されている精米は、そこまで気合入れて研がなくても臭い飯になったりしませんが、精米機などで自家精米する人は、ちゃんと研いだ方が良い場合もあります。逆に、無洗米はその名の通り、洗わなくてもそのまま使える米(糠層が完全に除去されている)なので、研ぎません。
 米の研ぎ方は人によって様々ですが、一般的なのは、一旦米に水を入れて、水を切ったあと、米に手を入れて「の」の字を書く様に4〜5回かき回し、水を入れてとぎ汁を捨て、また「の」の字を書いて、というのを2〜3回繰り返した後、水を入れては捨てを水が澄むまで繰り返して、最後に入れた米の分の水量線まで水を入れる、というやり方だと思います。
 変わった研ぎ方としては、米と水を飯盒に入れて、掛子をかけて、飯盒を上下にシャッフルする、というやり方。シャッフルした後、飯盒に水を入れて、掛子をして、掛子と飯盒の隙間から水を漉して流し、またシャッフルします。このやり方だと、手を米に入れずに済むので、手が多少汚れていても米を洗う事が出来ます。アウトドアで応用できるやり方です。
 米を洗い終わり、水をセットしたら、しばらく米を水に浸けておきます。これは米に水を吸わせる行程で、これをやらないと固い飯になってしまいます。夏場なら30分、冬場なら60分浸けます。

 
お米の研ぎ方

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米はよく濯がないと、糠くさいご飯になったりします


■ご飯の炊き方(炊き干し法)

 ここからが本題です。よくご飯の炊き方で「はじめチョロチョロ中パッパ、ジュウジュウ吹いたら火を引いて、ひと握りのわら燃やし、赤子泣いてもふた取るな」というのがありますが、あれはカマドで羽釜などを使って炊く時の要領です。飯盒で炊く場合、特にガスコンロで炊く場合は、「はじめチョロチョロ」は必要なく、いきなり強火で炊きます。
  1. 強火に飯盒をかけ、沸騰させる(大体4〜6分)
  2. 4合の場合は2分、3合の場合は1分、強火のまま炊く
  3. 上記の時間が過ぎたら弱火にする。2合の場合は沸騰したら弱火にする
  4. 弱火で3分3秒かけたら、火から下ろす
  5. 10〜15分蒸らして出来上がり
 いきなり強火で炊くと焦げてしまうのでは?と思われるかもしれませんが、水が沸騰して米が対流している間は焦げません。むしろ、強い火力でしっかり沸騰させないと、美味しいご飯になりません。4
4合や3合の時に、強火のまま延長して炊くのは、量が多いのでしっかり対流させて熱を上の方まで伝えるのと、噴きこぼす事で余分な水分を排出する為です。2合では量が少ないので沸騰したら弱火にして水分を米に吸わせます。
 ご飯が焦げるのは、むしろ弱火に落とした時で、米が水分を吸って膨らみ、対流が落ちてきた時に底にいつまでも火が当たっているから焦げるのであって、焦げる前に火から降ろせば焦げないか、焦げても少々です。
 この炊き方は、「炊き干し法」と言って、飯盒に限らず、土鍋や文化鍋で炊く場合も一般的にこの方法がとられています。電気炊飯器での炊き方もこの方法によるものです。


ファイヤーボックスを使った飯盒炊爨
基本的なやり方は、ガスがガソリンなどのストーブでも同じです



■環境の違いによる難しさ

 飯盒に限った事ではありませんが、直火でご飯を炊く際の難しさは、環境が良くない時にあります。具体的には、風がある時と気温が低い時です。
 屋内で炊く時はまず風の影響を受けませんが、屋外で炊く時は風がきついと風に火が煽られて消えたり、風で熱が飛ばされて火力が低くなります。風のある時は、風避けを用意して出来るだけ風を防ぐ必要があります。
 気温が低すぎる場合も、沸騰までに時間がかかり、上手に炊けないどころか、炊飯自体が無理な場合があります。具体的には、沸騰に時間がかかり、8分超えても沸騰せず、気がついたら低温の湯で米が膨らんでふやけてしまい、それでいて底が焦げている、というパターンです。あるいは、極低温だと米さえ膨らまず、芯の残ったまま半煮え飯になってしまいます。
 これら環境が整わない場合には、上記の炊き干し法による炊飯は実質的には無理で、他の方法を取らねばなりません。

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屋外では風の影響はモロに受けます
風除けをするとしなとでは大違いです

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あまりに寒いと、ガスストーブは言うに及ばず
ガソリンストーブでもちゃんと炊けない時があります

■湯立て法

 湯立て法とは、沸騰した湯に米を入れて強火で炊き上げる方法で、旧日本陸軍の軍隊調理法にも掲載されている炊き方です。この湯立て法、今でこそマイナーな炊き方になりましたが、江戸時代くらいまではポピュラーな炊き方でした。
 具体的には、
  1. 洗った米をザルにあけておき
  2. 4合なら860ミリリットル、2合ならその半分の水を飯盒で沸かし
  3. 沸いた湯に洗った米を入れて蓋をして強火のまま炊いて再び沸騰させ
  4. 4〜5分経ったら火から下ろして、15分蒸らす
 というやり方をします。手順からわかる様に、火力の調整が要らないやり方です。その代わり、洗った米を別に取り分けて、後から入れるという面倒があります。この炊き方は、本来は羽釜や平釜といった、大きめの釜で大量の米を炊くのに適したやり方ですが、飯盒でも応用可能です。
 ご飯の出来栄えの比較としては、やはり炊き干し法の方が美味しいと思います。しかし、湯を沸騰させてから米を入れるやり方ですので、気温の低い時や火力の弱い熱源を使う時に行う事が多いです。例えば、アルコールストーブや缶入り固形燃料で炊飯する場合です。
 もっとも、いくら湯が沸騰していても、気温が低くて米が冷えている、あるいは火力が弱い時は、米を入れた後の再沸騰までに時間がかかり、美味く炊けない事もあります。

 
缶入り固形燃料を使った湯立て法による炊飯


■ハイゼックス炊飯法

 旧日本陸軍主計少将の川島四郎博士が開発した飯袋(セロファン筒)というのがあって、これは、
    一、最モ簡易ニ炊事(焦付カズ、半煮ナシ)シ得
    二、濁水ヲ以テ炊事シ得
    三、乾固又ハ凍結後ノ再温再生可能
    四、容易ニ變敗セズ
    五、携帯及分配容易ニシテ投擲ニモ耐ユ
    六、肉野菜類等ヲモ合炊シ得
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川島四郎著『炊飯の科学』より


 という優れた炊飯用品だったのですが、これはハイゼックス炊飯袋という名称で今日も発売されており、もっぱら防災用品として扱われています。
 これは袋の中に米1合と規定の水(袋に線が書いてある)を入れ、口を括って、熱湯に入れ30分間湯がいたら出来上がり、という至極簡単なものです。寒くてなかなか沸騰してくれなさそうな時でも、気兼ねなく炊ける利便性があります。これも本来は大釜で大量にやるやり方ですが、飯盒だと2つほど同時に炊く事が出来ます。
 湯がくのに使った湯は再利用が可能であるほか、投擲以外は上に書かれた効能そのものですので(もっとも、肉や野菜を一緒に炊いた事ないですが)、いよいよ飯盒炊飯が難しい時は、こういったやり方があるのを知っておき、予め予備として炊飯袋を用意しておくのも智恵の一つだと思います。

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これがハイゼックス炊飯袋

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規定の量の米と水を入れて、輪ゴムで袋の口を括ります

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沸かした湯に入れ、30分間煮沸します

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これが出来上がり
焚き火で炊いたご飯には及びませんが、普通に食べれるご飯です









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tanisi_corp at 22:00コメント(0)

2019年06月11日

 前回、肉饂飩というのを作ったのですが、調味料の量がいまいち分からず、いまいちな出来栄えでした。ところで、軍隊調理法には重複する様なメニューが乗っていたりするもので、例えば、牛肉佃煮肉飯なんかもそうなんですが、今回挑戦した肉うどん汁も、肉饂飩と重複する様なメニューです。



2019-02-15 22.46.30
今回も使うのは人参と玉ねぎ
うどんの具としては珍しい具材です
今回の肉は豚肉です

肉うどん汁
こちらがレシピ





■作り方

 まず、たっぷりのお湯で干うどんを湯がき、ザルで湯を越して冷水で締めます。次に飯盒で油を熱して、肉と人参を炒めます。次に水を入れるのですが、今回は水の分量が書いてありました。一人分270ミリリットルです。続いて玉ねぎを投入し、調味料として醤油30ミリリットル、砂糖2グラムを入れます。砂糖は好みによって入れると書いてありました。この様にちゃんと分量が書いてあると、手探りで味つけしなくても良いので、より正確に当時の味を再現する事が出来ます。

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今回は2人前でしたので、麺の量も多く熱かったです

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豚肉と人参を炒めます
人参を先に炒めるのは、火がなかなか通らないからです

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豚肉と人参に火が通ったら、水を入れます
今回は2人前なので540mlです

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続いて玉ねぎを投入

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そして醤油。ちょっと薄味かも?

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砂糖は入れても入れなくても良い様です


■仕上がり

 玉ねぎと調味料を入れたあと、しばし煮込みます。玉ねぎが透き通るくらいまでで良いので、8分ほど強火で煮込みました。
 いい感じに玉ねぎに火が通ったら、茹でたうどんを飯盒に入れてかき混ぜ、ちょっと煮込んだら出来上がりです。前回の肉饂飩と比べると、今回は玉ねぎと醤油の甘辛い香りがして、食欲をそそられます。

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玉ねぎに火が通るまで、強火で煮込みます

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玉ねぎが透き通ってしんなりしました

2019-02-15 23.06.00
先ほどのうどんを投入し、よく具とかき混ぜます

2019-02-15 23.08.17
いい感じに煮込んで出来上がり


■感想

 今度の肉うどん汁は、具こそ玉ねぎだの人参だのですが、今のうどんに近いものが出来ました。肉饂飩もそうですが、軍隊調理法では出汁の入った麺つゆを使わないのが特徴ですが、これはこれで十分美味しく感じました。

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今回は2人前作ったのですが、飯盒1個で出来ました
ちょっとご飯ほしくなりましたねぇ









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