食器
2018年06月12日
掛子(かけこ、かけご)というのは、飯盒の中に入っている内蓋の事です。その意味は「ほかの箱の縁にかけて,中にはまるように作った箱」という事で、昔の手箱とかで使われていた言葉です。その掛子は、すり切り一杯で2合分の米が計れる計量器として(といっても、メーカーによって大きさが違ったりするから、あまりアテにならない事がある)、また皿として使うのですが、実際にはあまり用事がなかったりします。
■掛子の使い道
日本の飯盒の掛子は、ドイツ軍とかのと比較して深さがあまり無く、それ故に調理向きではありません。もっとも、開発した日本陸軍自体が、飯と同時に掛子で何か作ったりするのを推奨してませんから、そもそも料理向きではないのです。といいつつ、メシ炊きながら掛子でシュウマイ蒸したりする話しがあったりするから、昔からどうにか使おうとする努力はなされていた様です。
自分も、シュウマイ蒸したり、麺ゆでた時の湯切りや米磨いだ時の水切りに使ったりと、色々やってみたのですが、今ひとつ使い勝手が良くない。
そこでひらめいたのが、掛子にパンチングメッシュみたいに穴を開けたらどうだろう、という事でした。以前、製作したパンチングメッシュ製の飯盒蒸し器は、蒸し器以外の機能は持っていなかったのですが、掛子に穴が開いていれば、蒸し器としてだけでなく、水切りや笊としても使えるのではないか。そうすれば、飯盒の活用法もより幅が広がると思った訳です。
とはいえ、掛子は飯盒に一つしか付いてませんし、それを穴開けたら、本来の皿としても使い方が出来なくなってしまいます。そこで、この話しをツイッターで書いたところ、日本飯盒協会新潟管区魚沼支部から、大量の中古の飯盒が送られてきました。その中から、今使ってる12年物のキャプテンスタッグの飯盒に合う掛子を探し出し、それを使って掛子蒸し器を製作する事にしました。

魚沼支部から送られて来た飯盒
使えそうなのを分類しました

メーカーが違うと掛子のサイズも違います
オオイ金属OEMのロゴスやキャプテンスタッグの掛子が
2合ぴったりの容量です
(写真の下の掛子)

数ある掛子を一つずつはめて
良い感じのを選びました

良い感じのは、飯盒の底にも収まるので
収納もし易いです

穴を開けるために、パンチ穴をプリントした紙を
セロテープで止めます

9年前にトランポの床に板張りする時に買った電動ドリル
刃が古くて穴が開きませんでした

ステンレス用のドリルの刃を買って来て
ばりばり開けて行きます

といっても、結構骨の折れる作業なので
休み休みやります

手作業なので、真っ直ぐとは行きませんでしたが
ともあれ穴が開きました

水切りとしては、穴無しの掛子よりも優秀です
■掛子蒸し器の使い勝手
前回作った蒸し器との違いは、掛子を使ってるので当たり前ではあるのですが、飯盒にきっちりセット出来る、という点です。また、前回のペラいパンチングメッシュと違って、こっちはカッチリした掛子ですので、早々壊れたりはしないと思います。
さて、早速使ってみました。まずは、通常の掛子と同じ様に、飯盒の上にセットするやり方。今回は、敢えて飯を炊きながらシュウマイを蒸してみました。この場合、最初っからセットしてるとシュウマイがふやけてしまうので、弱火の後半から蒸らしの時間に掛けて、蒸し器をセットしました。まぁ、普通に蒸す事が出来ました。ただ、このやり方だと、穴開きでない掛子でも出来る訳で、掛子蒸し器としての利点はあまり感じられません。それどころか、醤油を掛けたら穴からこぼれるので、その点で不便を感じました。
次に掛子蒸し器を飯盒の底にセットして、庭で穫れたジャガイモを蒸してみました。小振りとはいえジャガイモですので、蒸すにも時間が掛かると思って、空焚きしない様に多めに水を入れたのですが、沸騰すると穴から沸いた湯が噴き出してきて、蒸してるのか茹でてるのか分からん状態でした。まぁ、ジャガイモですのでどっちでも良いのですが、蒸し器をかさ上げした方が良さそうです。
そこで、底にノーマルの掛子を入れ、その上に蒸し器を乗せて、肉まんを蒸してみました。掛子の厚みくらいの水を入れたのですが、それでも少々沸いた湯が上がって来てたみたいです。それでも中火で7分くらいで蒸せました(説明書きだと、強火で15分と書いてあった)。
専用の蒸し器ではないので、火加減だの空焚きだのに気をつけねばならんのは、前作と同様ですが、前作よりはかっちりした造りですし、笊だの水切りだのに使える事を考えたら、掛子蒸し器の方が使い勝手は上かな、と感じました。

やってみて気が付いたのは
穴が開いているので、醤油がたらせない事でした
蓋もインしてたらしました

この手は蒸すのに時間がかかります
途中、差し水しながら使う必要があります

掛子を下にいれて、かさ上げしました
この使い方がベストな様です

デカい肉まんだと、斜めに入れる感じ
あくまでお一人様様ですねw
さて、作っておいてこういうのも何ですが、この手の蒸し器があって、じゃぁ蒸し物をしょっちゅうやるか、と言われると、実は全然やらないんですよね。前作の蒸し器も、ホコリ被ってました。ただまぁ、今回のは飯盒の底にイン出来ますし、その意味では邪魔にも嵩張りもしないので、それなりにイイモン作ったかな、という所です。もし、製品化したいメーカーがあれば、お問い合わせ下さい。
■掛子の使い道
日本の飯盒の掛子は、ドイツ軍とかのと比較して深さがあまり無く、それ故に調理向きではありません。もっとも、開発した日本陸軍自体が、飯と同時に掛子で何か作ったりするのを推奨してませんから、そもそも料理向きではないのです。といいつつ、メシ炊きながら掛子でシュウマイ蒸したりする話しがあったりするから、昔からどうにか使おうとする努力はなされていた様です。
自分も、シュウマイ蒸したり、麺ゆでた時の湯切りや米磨いだ時の水切りに使ったりと、色々やってみたのですが、今ひとつ使い勝手が良くない。
そこでひらめいたのが、掛子にパンチングメッシュみたいに穴を開けたらどうだろう、という事でした。以前、製作したパンチングメッシュ製の飯盒蒸し器は、蒸し器以外の機能は持っていなかったのですが、掛子に穴が開いていれば、蒸し器としてだけでなく、水切りや笊としても使えるのではないか。そうすれば、飯盒の活用法もより幅が広がると思った訳です。
とはいえ、掛子は飯盒に一つしか付いてませんし、それを穴開けたら、本来の皿としても使い方が出来なくなってしまいます。そこで、この話しをツイッターで書いたところ、日本飯盒協会新潟管区魚沼支部から、大量の中古の飯盒が送られてきました。その中から、今使ってる12年物のキャプテンスタッグの飯盒に合う掛子を探し出し、それを使って掛子蒸し器を製作する事にしました。

魚沼支部から送られて来た飯盒
使えそうなのを分類しました

メーカーが違うと掛子のサイズも違います
オオイ金属OEMのロゴスやキャプテンスタッグの掛子が
2合ぴったりの容量です
(写真の下の掛子)

数ある掛子を一つずつはめて
良い感じのを選びました

良い感じのは、飯盒の底にも収まるので
収納もし易いです

穴を開けるために、パンチ穴をプリントした紙を
セロテープで止めます

9年前にトランポの床に板張りする時に買った電動ドリル
刃が古くて穴が開きませんでした

ステンレス用のドリルの刃を買って来て
ばりばり開けて行きます

といっても、結構骨の折れる作業なので
休み休みやります

手作業なので、真っ直ぐとは行きませんでしたが
ともあれ穴が開きました

水切りとしては、穴無しの掛子よりも優秀です
■掛子蒸し器の使い勝手
前回作った蒸し器との違いは、掛子を使ってるので当たり前ではあるのですが、飯盒にきっちりセット出来る、という点です。また、前回のペラいパンチングメッシュと違って、こっちはカッチリした掛子ですので、早々壊れたりはしないと思います。
さて、早速使ってみました。まずは、通常の掛子と同じ様に、飯盒の上にセットするやり方。今回は、敢えて飯を炊きながらシュウマイを蒸してみました。この場合、最初っからセットしてるとシュウマイがふやけてしまうので、弱火の後半から蒸らしの時間に掛けて、蒸し器をセットしました。まぁ、普通に蒸す事が出来ました。ただ、このやり方だと、穴開きでない掛子でも出来る訳で、掛子蒸し器としての利点はあまり感じられません。それどころか、醤油を掛けたら穴からこぼれるので、その点で不便を感じました。
次に掛子蒸し器を飯盒の底にセットして、庭で穫れたジャガイモを蒸してみました。小振りとはいえジャガイモですので、蒸すにも時間が掛かると思って、空焚きしない様に多めに水を入れたのですが、沸騰すると穴から沸いた湯が噴き出してきて、蒸してるのか茹でてるのか分からん状態でした。まぁ、ジャガイモですのでどっちでも良いのですが、蒸し器をかさ上げした方が良さそうです。
そこで、底にノーマルの掛子を入れ、その上に蒸し器を乗せて、肉まんを蒸してみました。掛子の厚みくらいの水を入れたのですが、それでも少々沸いた湯が上がって来てたみたいです。それでも中火で7分くらいで蒸せました(説明書きだと、強火で15分と書いてあった)。
専用の蒸し器ではないので、火加減だの空焚きだのに気をつけねばならんのは、前作と同様ですが、前作よりはかっちりした造りですし、笊だの水切りだのに使える事を考えたら、掛子蒸し器の方が使い勝手は上かな、と感じました。

やってみて気が付いたのは
穴が開いているので、醤油がたらせない事でした
蓋もインしてたらしました

この手は蒸すのに時間がかかります
途中、差し水しながら使う必要があります

掛子を下にいれて、かさ上げしました
この使い方がベストな様です

デカい肉まんだと、斜めに入れる感じ
あくまでお一人様様ですねw
さて、作っておいてこういうのも何ですが、この手の蒸し器があって、じゃぁ蒸し物をしょっちゅうやるか、と言われると、実は全然やらないんですよね。前作の蒸し器も、ホコリ被ってました。ただまぁ、今回のは飯盒の底にイン出来ますし、その意味では邪魔にも嵩張りもしないので、それなりにイイモン作ったかな、という所です。もし、製品化したいメーカーがあれば、お問い合わせ下さい。
2016年10月11日
自分の飯盒使用歴は18歳の夏から始まるのですが、この飯盒は2代目の飯盒にあたります。初代の飯盒が、純粋に生活用品だったのに対して、この飯盒は野宿ライダーを意識して購入しました。もっとも、当時はそこまで飯盒愛に目覚めていなくて、さらに小型でパッキングし易いクッカーという事で、モリタの角形クッカーに意識が行ってしまい、さりとて自宅で飯盒を使って飯を炊くのは嫌気が指していたので、ほとんど使わずしまいのまま、処分してしまいました。
そもそも兵用の飯盒は4合炊きなのですが、これは2人1組になって、一人が飯(1人辺り2合)、もう一人が汁を作るのを前提に設計されています。軍隊ですから、複数の部隊で行動する訳ですし、その最小単位としても組炊爨での運用が、兵用の飯盒の設計思想なのです。
ところが、戦後、登山やキャンプなどで使われる様になってからは、この組炊爨の前提は大きく崩れる事になります。団体で登山する場合は、軍隊式の組炊爨もあったでしょうが、そういう使い方よりも、個々人で飯盒を使う機会が増えたのだと思われます。となると、流石に一人で4合も飯を食う事はないでしょうし、せいぜい2〜3合くらいしか炊かないとなると、4合もの容量は必要なくなった、という事でしょう。
また兵式飯盒は、ご存知の通り、底が深い鍋なのですが、これを食器として考えた時、底が深過ぎて食べにくいというのは、確かにその通りです。4合も炊ける必要がなく、かつ底もそんなに深くなくて良い、という事であれば、3合の容量にして底を浅くしようという発想になるのは、一人用の飯盒としては、至極合理的な考え方であると思います。
飯盒がまだまだ日本のアウトドアシーンで主流だった時代には、飯盒を入れ子にするアイテムが色々考案されていました。その中でもモリタのミニハンゴーは兵式飯盒にスッポリ収まる2合炊きの飯盒で、それ単体でも使える優れものでしたが、それでもソロ用として考えた時、4合炊きの兵式飯盒と併用ではパッキングサイズが無駄に大きい物になります。
そこで、飯盒本体を3合に縮小し、中に鍋を1個入れる事で、省スペース化とクッカー2つを実現したのが、この3合飯盒です。つまり、飯盒本体でご飯を炊き、中鍋でオカズを作るというスタイルを実現したのでした。
脱着式なのでパッキング時にハンドルが邪魔にならない。また炊飯時にも外しておけるので邪魔になりません。チャチな作りに見えますが、そこそこの重さには耐えるので、中鍋でラーメン作って、ハンドルを持って食べる事も可能です。
この3合飯盒の蓋と掛子の容量を調べてみたところ、いずれも3合2合より多い容量をもっている事が分りました。これは谷口金属の飯盒にも見られた事です。一説によると、その昔、旧陸軍が精白米から胚芽米に切り替えた時に、飯盒の容量も変更になったという話しがあるようですが、その関係で、戦後、蓋と掛子の容量が違う製品が出回ったのかもしれません。
また、蓋には真ん中で仕切りが出来る様になっているのですが、これはオカズ入れとしての利便性を持たせたものだと思われます。弁当箱として使うなら、現代人としてはこのサイズであっても結構大きい訳ですが、掛子に違うオカズを2種類入れれるのは便利です。
3合飯盒の釣り手は、旧陸軍の将校用飯盒に使われていたのと同じタイプのスライド式の釣り手で、これは戦後、自衛隊の1型飯盒でも採用されています。このスライド式釣り手は、押し込めば耳金の所で釣り手がロックされ、蓋を押さえる構造になっています。ところが、3合飯盒の釣り手は、明らかに設計ミスで、押し込んでもロックの位置が耳金より上にあってロック出来ません。この点は是非とも改善して欲しい部分でした。
また、この釣り手は鉄製で塗装がなされているのですが、使っているウチに塗装が剥げて、鉄の地金が見えてしまい、そこが錆びてスライドさせられなくなります。これは自衛隊の1型飯盒でも同じなのですが、戦後、発売された旧陸軍の将校用飯盒などは、この釣り手にメッキが施されており、剥げにくくなっています。可動する部分でもあるので、ぜひともメッキを施すか、ステンレス製の釣り手にして欲しかったものです。
それだけ、飯盒は日本のアウトドアシーンに根付いていたのです。その中で、この3合飯盒は、我が国の飯盒文化の最晩期に登場した、日本飯盒の集大成であったと思います。この飯盒を基にして、次第に飯盒はアウトドアシーン、特に登山やソロキャンプで使われなくなっていき、かつて飯盒を作っていたメーカーは軒並み潰れるか、飯盒を作らなくなりました。
この3合飯盒と、現行の自衛隊の戦闘飯盒2型を比較した時、調理器具としての飯盒は決定的にその機能を後退させ、食器の機能により特化した形になりました。そもそも「飯盒」という言葉が、飯を入れる蓋付きの器、つまり弁当箱の意味だったのですが、その意味の通りに日本飯盒は回帰してしまった、というべきかもしれません。
しかし、我々の頭の中では、飯盒はやはり飯を炊く調理器具の意味という認識が色濃い訳です。その飯盒が、一人で使うにもっとも便利な形に進化を遂げた最終形態が、この3合飯盒であった事を、記憶に止めておいて良かろうと思います。
しかし、後年、この飯盒が、ソロ用の飯盒として、非常によく考えられた製品であり、おそらく、日本飯盒が行き着いた最高傑作であったと認識する様になりました。とうの昔に製造終了しており、そもそも作ってた会社もなくなってしまい、ネット上でも情報が非常に少なく、また出物もなかったのですが、このたび、奇跡的に入手する事が出来ました。
■外観的特徴
この飯盒の特徴は、3合炊きという事で、一般的な4合炊きの兵式飯盒よりも背が低くコンパクトになっています。そして、革通しが蓋に付き、付属のハンドルでフライパンとして使う事を前提としています。また、掛子には取り外しの出来る仕切りの板があり、オカズ入れとして使い易くなっているだけでなく、米を量る時に便利になっています(仕切りを入れれば、1合が量れる)。中には中鍋が入っていて、これも付属のハンドルが付けれる様になっています(蓋と中鍋はハンドル共通)。そして、釣り手は、旧陸軍の将校用飯盒や自衛隊の1型飯盒と同様にスライド式です。■なぜ3合なのか
この飯盒が3合炊きを目指した理由は、まさに日本の飯盒がソロクッカーとして進化する要望があった事を如実に現しています。そもそも兵用の飯盒は4合炊きなのですが、これは2人1組になって、一人が飯(1人辺り2合)、もう一人が汁を作るのを前提に設計されています。軍隊ですから、複数の部隊で行動する訳ですし、その最小単位としても組炊爨での運用が、兵用の飯盒の設計思想なのです。
ところが、戦後、登山やキャンプなどで使われる様になってからは、この組炊爨の前提は大きく崩れる事になります。団体で登山する場合は、軍隊式の組炊爨もあったでしょうが、そういう使い方よりも、個々人で飯盒を使う機会が増えたのだと思われます。となると、流石に一人で4合も飯を食う事はないでしょうし、せいぜい2〜3合くらいしか炊かないとなると、4合もの容量は必要なくなった、という事でしょう。
また兵式飯盒は、ご存知の通り、底が深い鍋なのですが、これを食器として考えた時、底が深過ぎて食べにくいというのは、確かにその通りです。4合も炊ける必要がなく、かつ底もそんなに深くなくて良い、という事であれば、3合の容量にして底を浅くしようという発想になるのは、一人用の飯盒としては、至極合理的な考え方であると思います。
■中鍋の意味
先に述べた様に、4合炊きの飯盒では、ご飯とオカズは2つの飯盒を使って作り、それを二人で分けて食べる前提で設計されていたのですが、これが1つの飯盒しかないとなると、飯は炊けてもオカズが作れない、という事になります。そしてこれはソロクッカーとしては具合の悪い話しです。その為、ソロクッカーの多くは、大小2つのクッカーをスタッキングするスタイルになっています。飯盒がまだまだ日本のアウトドアシーンで主流だった時代には、飯盒を入れ子にするアイテムが色々考案されていました。その中でもモリタのミニハンゴーは兵式飯盒にスッポリ収まる2合炊きの飯盒で、それ単体でも使える優れものでしたが、それでもソロ用として考えた時、4合炊きの兵式飯盒と併用ではパッキングサイズが無駄に大きい物になります。
そこで、飯盒本体を3合に縮小し、中に鍋を1個入れる事で、省スペース化とクッカー2つを実現したのが、この3合飯盒です。つまり、飯盒本体でご飯を炊き、中鍋でオカズを作るというスタイルを実現したのでした。
■その他の所見
この3合飯盒は、中鍋だけでなく、蓋もフライパンとして使える様に、革通しを蓋の方に付け、それに脱着式のハンドルを取り付けて使用できる様になっています。このハンドル、アルミ製のチャチなハンドルなのですが、実はこれが非常に使い易い。脱着式なのでパッキング時にハンドルが邪魔にならない。また炊飯時にも外しておけるので邪魔になりません。チャチな作りに見えますが、そこそこの重さには耐えるので、中鍋でラーメン作って、ハンドルを持って食べる事も可能です。
この3合飯盒の蓋と掛子の容量を調べてみたところ、いずれも3合2合より多い容量をもっている事が分りました。これは谷口金属の飯盒にも見られた事です。一説によると、その昔、旧陸軍が精白米から胚芽米に切り替えた時に、飯盒の容量も変更になったという話しがあるようですが、その関係で、戦後、蓋と掛子の容量が違う製品が出回ったのかもしれません。
また、蓋には真ん中で仕切りが出来る様になっているのですが、これはオカズ入れとしての利便性を持たせたものだと思われます。弁当箱として使うなら、現代人としてはこのサイズであっても結構大きい訳ですが、掛子に違うオカズを2種類入れれるのは便利です。
■改善点
ニュートップという会社は、とうの昔に潰れてなくなってしまい、当然この3合飯盒も再販される事なく、歴史の彼方の逸品になってしまったので、今さら改善点を言っても始まらないのですが、あえて付言するなら、この飯盒の釣り手は大いに改良の余地があります。3合飯盒の釣り手は、旧陸軍の将校用飯盒に使われていたのと同じタイプのスライド式の釣り手で、これは戦後、自衛隊の1型飯盒でも採用されています。このスライド式釣り手は、押し込めば耳金の所で釣り手がロックされ、蓋を押さえる構造になっています。ところが、3合飯盒の釣り手は、明らかに設計ミスで、押し込んでもロックの位置が耳金より上にあってロック出来ません。この点は是非とも改善して欲しい部分でした。
また、この釣り手は鉄製で塗装がなされているのですが、使っているウチに塗装が剥げて、鉄の地金が見えてしまい、そこが錆びてスライドさせられなくなります。これは自衛隊の1型飯盒でも同じなのですが、戦後、発売された旧陸軍の将校用飯盒などは、この釣り手にメッキが施されており、剥げにくくなっています。可動する部分でもあるので、ぜひともメッキを施すか、ステンレス製の釣り手にして欲しかったものです。
■感想
この3合飯盒が売られていた頃は、まだ登山具店には普通に兵式飯盒が売られていましたし、先に述べたミニハンゴーだけでなく、テフロン加工を施したカラー飯盒まで売られていました。むしろ、キャンプでご飯を炊く道具としては、飯盒の他に思いつかなかった時代でもありました。それだけ、飯盒は日本のアウトドアシーンに根付いていたのです。その中で、この3合飯盒は、我が国の飯盒文化の最晩期に登場した、日本飯盒の集大成であったと思います。この飯盒を基にして、次第に飯盒はアウトドアシーン、特に登山やソロキャンプで使われなくなっていき、かつて飯盒を作っていたメーカーは軒並み潰れるか、飯盒を作らなくなりました。
この3合飯盒と、現行の自衛隊の戦闘飯盒2型を比較した時、調理器具としての飯盒は決定的にその機能を後退させ、食器の機能により特化した形になりました。そもそも「飯盒」という言葉が、飯を入れる蓋付きの器、つまり弁当箱の意味だったのですが、その意味の通りに日本飯盒は回帰してしまった、というべきかもしれません。
しかし、我々の頭の中では、飯盒はやはり飯を炊く調理器具の意味という認識が色濃い訳です。その飯盒が、一人で使うにもっとも便利な形に進化を遂げた最終形態が、この3合飯盒であった事を、記憶に止めておいて良かろうと思います。
2016年06月29日
以前紹介したベルリン警察飯盒が、御徒町の中田商店でゴロゴロ売られていた頃、崩壊して間無しの東ドイツの軍装が大量に入って来ていて、はやりゴロゴロ売られていたのが、この東ドイツ軍の飯盒です。ベルリン警察飯盒と同じく、旧ドイツ軍の飯盒の系譜にありながら、あまりのチープな作りに、ベルリン警察飯盒より少し安い値段で売ってた様に記憶しています。
■見た目と造り
上にも書いた様に、東ドイツ軍飯盒も旧ドイツ軍のKochgeschirr31の後継に当たる飯盒です。詳しい歴史は分らないのですが、海外のサイトによると、当初、内務省の部隊で使われていたのは、ほぼ旧軍の飯盒だった様です。次にハンドルのストラップを通す穴の上の穴が廃止されて、次に下も廃止されて、この形になった様です。そして、掛子についてるハンドルも、初期型はアルミ板だったのですが、あとでワイヤータイプになったそうです。かつて中田商店で買ったのも、今回改めて調達した物も、ハンドルに革通しがなく掛子のハンドルはワイヤーのタイプですので、後期型という事でしょう。
さて、物は御覧の通りなのですが、正直、出来が良くありません。東ドイツは当時の東側諸国の中では優秀で「東欧の日本」なんて言われてたそうですが、アルミの材質も悪そうだし、それ以上にハンドルの立て付けが悪くガタガタだったり、蓋がガタガタと、とりあえず形だけ飯盒にしました的な出来栄えです。この飯盒がいつ頃の製造なのか分りませんが、恐らく東ドイツ崩壊の少し前のデッドストックでしょうから、その頃には国だけでなく工業力も左前だった、という事なんでしょうか。
しかし、物の出来栄えとしては、おそらくこの辺りがヨーロッパ標準なのかも知れません。それが事項以降で検証したいと思います。

塗装が剥げているのは仕方ないとして
蓋のハンドルの塗装がいい加減になってるのは
なんだかなぁ〜〜と感じました

東ドイツ軍飯盒は、蓋と掛子を連結する事が出来ません
別個に食器もしくは調理器具として使うのを想定しています

飯盒本体には、500mlおきの目盛りがあります
釣り手のセンターは軽く凹みがある程度で
飯盒を棒に吊るしたら、簡単に左右にずれそうです
■ベルリン警察飯盒との比較
似た様な形してる飯盒、という事でベルリン警察飯盒と比較してみます。といっても、東ドイツ軍の飯盒は、東ドイツが崩壊するまで生産されていたのに対して、ベルリン警察のはせいぜい1960年代くらいまでの製品です。どんな物でもそうですが、始めの頃は造りが良かったり材質が良かったりするもので、後になれば経費節減とかで悪くなって行く傾向にあります。それを踏まえた上で、厳しく比較していこうと思います。
まず、材質ですが、これはどっちもどっちかな、という印象を持ちました。アルミニウムにも色々ランクがあるようですが、基本的には火に掛ける物ですし、穴が開かん程度の材質って事でしょう。仕上げも同じ様な感じで、蓋でスパムとか焼いたら、漏れなく焦げ付くだろうなー、という仕上げでした。
問題は造りの方で、ベルリン警察飯盒の方は、蓋も掛子もあまりガタツキがなく、蓋のハンドルもカッチリしてるのですが、東ドイツ軍飯盒の方はもうガタガタです。まぁ、ドイツ人は飯盒でメシ炊いたりしないでしょうが、東ドイツ軍の飯盒だと、蓋の隙間から蒸気漏れまくりで、とんでもないメシが炊けそうです。とはいえ、ベルリン警察の飯盒は、そこそこピッタリしてる訳ですから、物作りに対する姿勢が、西と東では全然違ってたという事でしょう。同じドイツ人にして、主義思想の差がここまで影響するのか、という感じです。
飯盒本体はそれでも大きな差はないのですが、顕著に違うのは掛子です。ベルリン警察の飯盒の掛子はハンドルに連結して使う様になっていますが、東ドイツ軍のは掛子にもハンドルが付いています。そしてそのハンドルの付け根に、蓋のハンドルの爪を入れれる様になっています。配食を受ける時は、蓋と掛子のハンドルを指で掴んで、バラけない様にします。どちらが使い勝手良いかは意見の分かれる所だと思います。掛子としての容量はベルリン警察の方が深いので多いです。
上にも書いた様に、ハンドルの形状も異なります。ベルリン警察飯盒の方は、背嚢に縛着する為の革通しがあるのですが、東ドイツ軍飯盒では、革通しが省略されています。そこで、東ドイツ軍の野戦の軍装を色々調べてみたのですが、どうやら何回かの変遷を経て、第二次大戦当時とは野戦装具が大分変化してて、飯盒を背嚢などに縛着しなくなっていった様です。つまり、縛着しないから革通しは要らん、という事になったのでしょう。

蓋についてるハンドルは、ベルリン警察の方がしっかりしています
東ドイツのは、うっかりすると取れそうですw

蓋と掛子は連結出来ますが
各々のハンドルを手で押さえないといけません

掛子は、ベルリン警察の方が深さがあります

釣り手の耳金の違い
東ドイツ軍のは、旧軍のに近い形をしています
■日本製飯盒との比較
これまた比較としてはハンデのある比較ですが、日本製のキャプテンスタッグ(ロゴスと同様、オオイ金属製)の飯盒と比較しました。材質、仕上げともに、比較にならないほど、日本製の方が上です。実はこれは今に始まった事ではなくて、シベリア抑留の時には、ロシア兵からだけでなくドイツ兵からも日本の飯盒は盗まれるほど、出来栄えが良かったそうです。
もちろん、日本の飯盒には蓋にハンドルが付いてませんので、ガタガタする部分が少ないというのもあるのですが、やっぱり飯盒の肝は飯盒本体であると思います。それゆえに、材質が悪そうだったり、仕上げが良くないというのは、持ちの悪い感じがしても仕方ない事です。
もっとも、それではベルリン警察飯盒は出来が良いのか、というと、東ドイツ軍のよりガタツキが大幅に少ない、というだけで、上にも書いた様に材質や仕上げにはそれほどの差がありません。ついでに言うと、イギリス軍のメスティンや、チェコ軍のメスキットも似たり寄ったです。つまり、日本の飯盒の出来栄えがダントツに良いだけの話しで、欧米の軍用のメスティンは、総じてそんなもんなのかもしれません。とはいえ、東独のは出来が酷いですが。
2016年06月02日
自分は基本的には日本の兵式飯盒愛好家で、飯盒の蓋にハンドルが着いてなくても構わない派なのですが、蓋をフライパン代わりにするなら、そりゃハンドル着いてた方が楽だろう、くらいには思います。ただし、ドイツの飯盒の様に、良く出来たハンドル付き飯盒がないのが実情です。今回紹介する飯盒は、ハンドルが脱着できるタイプです。

この飯盒はハンドルが脱着式
ハンドルを取り付ける基部が蓋に付けられています

ハンドルは簡素なものです

箱がありませんでしたので、どこのメーカーの物か分りません
住之江から出ていたものと同じ物の様ですが
革通しにメーカーの刻印が入っていません
■この飯盒の特徴
この飯盒の特徴は、言うまでもなく脱着できるハンドルなのですが、このハンドルが少々難物です。付け方は、ハンドルを取り付け基部の穴に入れるだけなのですが、これが下の写真の様に、きっちり取り付ける事が出来ません。その為、ちょっと重たい物を蓋に入れると、ヘコーっと蓋が下におじぎしてしまいます。これではフライパンとしては全然役に立ちません。
試しに、ハンドルを逆向きに付けてみると、今度はしっかり取り付け出来ます。ところが、ハンドルの角度が下向きになってしまい、ロゴスのハンドル付き飯盒と同様に、とても使いにくい事になってしまいます。ハンドルの角度としては、上向きに付けた方が正解だと思います。なので、対策としては、取り付け基部のスリットの上の部分を少し削って、ハンドルが左右に広がる様にしてやると良いかもしれません。
ちなみに、住之江の同様品を持っている人に伺ったところ、ハンドル基部も問題はまったく同じだそうです。恐らく、販売元が違っても製造元が同じだった可能性が大です。
工作精度?がイマイチではありますが、このハンドル自体は軽く邪魔にならず、それなりに気に入っています。付けたままにもしておけますが、その場合は、ロゴスのハンドル付き飯盒の様な状態になります。惜しむらくは、日本のハンドル付き飯盒の悪弊である、飯盒の腹の部分にハンドルがある事で、ドイツの飯盒の様に背の部分にハンドルが来ない事です。腹の部分の凹みは、あくまで背嚢に縛着した時に安定感を増すためのもので、ハンドル納めるための凹みでないのを、ハンドル付きの飯盒を作った日本人はあまり理解してなかった、という事でしょう。(もっとも、ハンドル付きの飯盒が作られた頃には、飯盒を背嚢の背に縛着する様な事がなくなっていた可能性も大です)

こんな感じで、とても中途半端な位置で止まります

このまま、蓋に物を入れると、蓋が下向きになって
入れた物が地面に落ちます

逆向きに付けたところ。本来はこの様に留るべきです

しかし、逆向きに付けると、ハンドルが下向きになります

やはり、この角度が使い易いと思います
■他の飯盒との比較
自分がこれまで買ってきた飯盒を大別すると、ロゴスやキャプテンスタッグのエナメル塗装で革通しが薄く湾曲してるタイプと、塗装が艶消しで蓋のリムが薄く革通しが分厚い鉄板のタイプ、この2つに分けられます。今回入手したこの飯盒は、後者のタイプに入ります。
まず、前者のキャプテンスタッグの飯盒との比較ですが、先に述べた違い以外にも、釣り手の基部の耳金の形が違うなどのありますが、一番の違いは、掛子の容量が違う事。これは後者型の谷口金属の飯盒もそうなのですが、後者型は掛子の容量が2合以上あります。これは「掛子すりきり1杯で2合」という量目が崩れる変更で、この辺り、どうしてそんな改悪をしたのか分りません。
谷口金属の飯盒との差は、ハンドルの取り付け基部の有無だけです。この飯盒自体は、どこのメーカーの物なのか不明なのですが、谷口金属、住之江金属と同じ製造元だった可能性が大です。ちなみに、ロゴスとキャプテンスタッグの飯盒は、オオイ金属の飯盒と同じで、おそらくオオイ金属が製造元です。

右がキャプテンスタッグの飯盒
エナメル塗装でツヤツヤしてるせいか、こっちの方が仕上げが良さそうに見えます

下の掛子が、ハンドル付き飯盒のもの
明らかに厚みが違います

左が谷口金属の飯盒
違いは、革通しのメーカーの刻印の有無だけです

形が全く同じなだけに、掛子も蓋も互換出来ます
まぁ、蓋はロゴス/キャプスタの方にも使えますがw

掛子の厚みも同じ
ただ、飯盒の中は、谷口金属の方がリベットが平頭なのに対して
ハンドル付きの方は丸頭でした
いろいろケチめいた事を書きましたが、個人的にはこのハンドルは結構気に入っています。上に書いた様に、ハンドルがちゃんと留る様に少し削れは、ちゃんと仕事するでしょうし、取り外しも出来ますので、あまり邪魔にもならないと思います。
もし、手直しして良いなら、ハンドルの取り付け基部を取り外して、ロゴス/キャプスタの蓋の背の方に付け替えて使いたいものです。そうすれば、腹の方に邪魔な突起がなくなって、背嚢に付ける時も邪魔でなくなるでしょうし。まぁ、これはこれで、手に入りにくいものですから、そんな事しませんが。
この飯盒も、飯盒文化華やかなりし時代の遺物ですね。
2015年12月15日
自分は18歳で上京して以来、飯盒を使って来たのですが、たしか3代目の飯盒が自衛隊の飯盒でした。飯ごう2型が採用されてから、1型と称される様になったこの飯盒ですが、当時はまだこれが制式でした。実はしばらく使っていたのですが、あまり印象に乗ってなくて、知らない間に捨てたかしてなくなっていました。しかし、自衛隊とはいえ、一応は軍用品ですし、もともと仮想軍隊なんてやってた自分が、使わなくなったからといって、捨ててしまうというのも、今から思えば変な話しです。今回、たまたま安く手に入れる事が出来ましたので、当時、どんな想いで使っていたかを振り返ってみたいと思います。
■まず見た目
以前、自分が手に入れた物は、値段も安かった代わり(確か1,000円しなかったと思う)、塗装が極めて雑で、所によっては泡立った跡があったりして、どうみても手作業で、しかも適当にスプレーしたとしか思えない様な出来栄えでした。もしかしたら、再塗装品だったのかもしれませんが、とにかく雑な印象が強かったです。
今回手に入れたものは、それに比べたら大分マシです。また、デッドストックだったのか、使用した形跡があまりなく、飯盒の中もほとんどキズらしいキズが見当たりませんでした。しかし、底がボコってました。おそらく保管時に何かの拍子に凹んだのか、あるいは払い下げで廃棄物化する為にそうしたのか(米軍の放出軍装品にはよくある)、せっかくキレイな状態なのに、残念な事です。大抵、焦げる時はこうした凹んだ所が焦げて、かつ焦げがなかなか落ちないものです。
飯盒と蓋には、いわゆるQマークが入っていましたが、掛子には入ってませんでした。以前持っていた物は、掛子にもQマークが入ってました。もともと入ってなかったのか、適当に民需品で員数を合わせたのか、分りません。何にしても、自衛隊の1型飯盒は、塗装が薄くてチャチな印象を受けます。民需品の飯盒と比較すると、ドイツのベルリン警察の飯盒と東ドイツ軍の飯盒の差くらいの、出来の悪さを感じます。

今回届いたのは、19961年納入品らしいです
おそらくデッドストックでしょう

中は綺麗なのですが、底がボコってるのが残念です
出品時の写真では、ここが隠れる様な撮り方されてました

掛子にはQマークなし
まぁ、欠品よりはマシですがw
■スライド式釣り手
飯盒1型の特徴であるスライド式の釣り手は、元々は旧日本陸軍の将校用飯盒の新型の釣り手を参考にしたもので、スライドさせる事で釣り手を飯盒に沿わせ、かつ蓋をロックして、背嚢に収納する際に釣り手が邪魔にならない様にする工夫です。
日本の兵用の飯盒のある意味、発展形であると思ういますし、飯盒文化華やかなりし頃には、民需品の飯盒でもこの手のスライド式の釣り手を採用したものがいくつかありました。しかし、飯盒文化の衰退とともに、スライド式釣り手も姿を消して行きました。
ところで、かつて自分がこの飯盒を使っていた時、この釣り手をさほど便利に感じた事がありませんでした。というのも、はじめのウチはスライドしていたのですが、使っては洗いを繰り返して行くうちに、スライド部分が錆びてきてしまい、ゴジゴジになって動かなくなってしまったからです。となると、ただの釣り手な訳で、しかもスライド部分が全部錆びてる訳で、見た目にも汚らしく、だったらスライドしない普通の釣り手でも良いな、と感じていました。結局、最終的には捨ててしまったのですが、最後は釣り手が錆び切ってスライドの部分が折れてしまい、それで捨てた様な記憶があります。
アイデアとしては、とても優れていると思うのですが、塗装が悪いのか材質が悪いのか、とにかく錆びてしまったのではスライドさせようがありません。この釣り手が錆びない材質の金属であったら、また違った評価を下せたかもしれません。

こんな感じでスライドさせ、蓋をロックする
この機構自体は、とても優れていると思います

しかし、動かしているウチに塗装が剥げて
鉄がむき出しになって、錆びてしまうとアウトです
錆びたら釣り手を交換してたのかも?
■兵式飯盒との比較
飯盒1型は、旧陸軍のロ号飯盒を元にして、というか、釣り手以外はほぼコピーして作られています。同じく、ロ号飯盒のコピーである戦後の民需品の兵式飯盒とも、ほぼ同じです。伸ばした時の釣り手の長さも、民需品の兵式飯盒と同じでした。違いがあるとしたら、釣り手の太さで、飯盒1型は太さ約3mmほど、それに対して兵式飯盒は4mmほどです。飯盒1型は、スライド式という事もあって、あまり太く出来ない事情があったのでしょうが、その前に旧軍の飯盒の釣り手も、現代のものより若干細めです。それ故に、結構グニャってるのも多いのですが、その辺りを戦後、改良したのが今の兵式飯盒の様です。
個人的な感想としては、上記の様にスライド釣り手が錆びて動かなくなるくらいであるなら、普通のスライドしない釣り手の方が、見栄えの上でも本来の目的の上でも、使い手があると感じています。恐らく、その辺りが、一応は軍用品でありながら、非常に印象の薄い記憶しかこの飯盒が残さなかった理由だと思います。
■飯盒2型との比較
自衛隊では飯盒はほぼ食器の役割しかない、という事で、より食器色の強い戦闘飯盒2型が採用された訳ですが、自分個人の意見としては、だったら別に空豆型してなくても良かったろう?と思います。「飯を炊く道具」として比較した場合、1型の方がより適しているのは明らかで、例えば、パックご飯や飯缶を温めるとか、インスタントラーメンを煮るとか、そうした炊事には2型は向かないと感じています。自衛隊の方で、各個炊爨はもはやあまり想定していない、という事なのでしょう。
しかし、こうやって1型と2型を並べてみた時、改めて2型の疑問点が浮かび上がる事となりました。そのもっともたる部分が釣り手で、飯盒1型の場合、収納時に釣り手が邪魔にならない様にするのと、蓋をロックする為にスライド式にした、という理由が明確に分ります。ところが飯盒2型の場合、飯盒本体に対して釣り手が無駄に長く、スライドさせても蓋をロックする事も出来なければ、飯盒本体から釣り手が突き出て収納にも難がある。旧陸軍の将校用飯盒の様に、短めの釣り手を付けるのが正解だと思うのですが、この無駄に長い釣り手の納得いく理由を、まだ聞いた事がありません。
ソロ用クッカーとしてか、飯盒2型はやたら人気があって、スウェーデン軍飯盒と同じく高価で売られているのですが、純粋にご飯を炊く道具としては、飯盒1型の方が優れているというのが、自分の判断です。

飯盒2型は、明らかに収納性が悪そう
おそらく、釣り手外して収納してるんじゃないでしょうか
結構、釣り手なくす人多いみたいですし

スライド部分の違い
1型は縮めた時にロックが掛かるのに対して
2型は伸ばした時にロックが掛かる仕組み
そんなこんなで、20年ぶりくらいに再会した飯盒1型ですが、やはり今回も普通の飯盒でいいや、という気分になりました。昔は、この手の飯盒も売っていたのに、結局、スライドしない古いタイプの飯盒しか残らなかったのは、自分と同じ様な感想をもつ人がそれなりにいた、という事なのかもしれません。そして、改良改善を施す前に、飯盒文化が衰退してしまい、辛うじて大戦中のタイプの飯盒が生き残ってる、という事なのかもしれません。
しかし、いくら兵式飯盒が冷蔵庫の中で納まりが良い、といっても、やはり釣り手が余るというのは確かな事なので、是非とも錆びない金属でスライド式釣り手を作って貰いたいものです。