主食系
2020年03月29日
日本飯盒協会は、軍隊の飯盒とそれに類する調理器具を愛でる協会ですが、飯盒、つまり旧日本軍で開発された飯盒は、もっぱらコメを炊く道具としての役割が主であるとの考えから、この項では、ご飯の炊き方、美味しいご飯とはなんであるかについて述べたいと思います。
コメ離れ、などと言われて久しいですが
やっぱり日本人は日本のコメが美味しいと思う民族だと思うのです
■ご飯の炊き方
直火でのご飯の炊き方は、様々なサイトでも紹介されていて、飯盒で炊く方法についても、多くが語られています。そのどれを参考にしても差し支えないのですが、当協会としては、総則として以下の方法で行っております。
上記の炊き方は、常温無風の環境での場合に最適化されたもので、気温が低かったり、風が吹いていたりすると、炊く時間に差が出たり、炊き加減に違いが出たりします。特に焚き火の場合は、火力調整が容易でなく、環境の影響を大きく受けますので、難易度が高いです。
ですので、環境条件の違いを考慮しながら、上の炊き方(炊飯時間)により近づいた炊き方が出来た時、とても美味しいご飯を食べる事が出来ます。
ご飯の炊き方も大事ですが、
コメの研ぎ方も大事です意外と適当な人が多いです
- 米を研ぐ。ただし、軽く一回程度。濯ぎは3回ほど。
- 30分から1時間、水に漬ける。(冬場は1時間推奨)
- 2合炊きの場合:4〜5分で沸騰する強火にかけ、沸騰したら4〜5分弱火にかける。
- 4合炊きの場合:5分前後で沸騰する強火にかけ、沸騰したらそのまま1.5分炊き、その後3.5〜4分弱火にかける。
- 火から下ろして15分ほど蒸らす(飯盒はひっくり返さなくてもよい)
上記の炊き方は、常温無風の環境での場合に最適化されたもので、気温が低かったり、風が吹いていたりすると、炊く時間に差が出たり、炊き加減に違いが出たりします。特に焚き火の場合は、火力調整が容易でなく、環境の影響を大きく受けますので、難易度が高いです。
ですので、環境条件の違いを考慮しながら、上の炊き方(炊飯時間)により近づいた炊き方が出来た時、とても美味しいご飯を食べる事が出来ます。
ご飯の炊き方も大事ですが、
コメの研ぎ方も大事です意外と適当な人が多いです
焚き火による飯盒炊爨の実演
炊く作業自体は10分程度で終わります
■美味しいご飯とは何か
炊きたての飯の香りをいつくしみ、そのまろやかな舌ざわりと、あるかなきかのうま味を一生の友としてきた人びとも、少なくなってきたとはいいながら、その繊細微妙な米飯の風味というものを尊んできたのである。
大塚力『食における日本の近代化』(国際連合大学 1982年)
「美味しい」と「感じる」事は、個々人の味覚や感性によるところが大であって、何をもってして、また数値的に、「美味しい」という事を規定するのは非常に難しい事であるのですが、文学的な表現をすれば、上記の様になろうかと思います。
まず、それほど美味しくないご飯の食感をあげてみると、こんな感じであろうと思います。
- 芯があるご飯
水に浸ける時間が短かった、火力が弱かった、逆に強すぎた、炊飯時間が短かった、こういう場合になります。書いて字のごとく、固かったり粉っぽい芯が残ったご飯で、炊き損じの代表格です。 - べたべたのご飯
水に浸けすぎた、水の量が多かった、火力が弱くて炊きあがりに時間がかかった、こういう場合になります。芯飯に比べればマシですが、ご飯を食べる楽しみが減退します。 - なんかモソっとしたご飯
沸騰までに時間が掛かった割には、弱火で重湯が引く時間が短かった場合に多いです。芯飯になりかけたのが辛うじてならなかった感じです。 - 焦げ飯
火力が強すぎた時は言うに及ばず、弱火でも火にかけている時間が長いと焦げます。底が炭化した時は、飯がまずいだけでなく、飯盒の後始末も大変です。
では、美味しいご飯というのは、どういうものか。様々な表現がありますが、こんな感じであろうと思います。
- ふっくらしている
- 米が立っている(べたべたしていない)
- 米独自の香りがし、噛むほどに味が増す(オカズいらないほど)
昔の人は、一汁一菜といって、オカズはほとんど食べずご飯ばっかり食べていた、という話しがありますが、焚き火で炊いた美味しいご飯を食べてみると、欲しくなるのは沢庵や梅干しといった漬け物や、メザシといった焼き魚、みそ汁、果ては塩や醤油、味噌といった、いわゆる一汁一菜のおかずが欲しくなります。昔の人は、カマドで薪を焚いて、お釜でご飯を炊いていた訳ですが、お釜も下半分に火が当たる構造ですし、焚き火で炊いたご飯は唸るほど美味くて、大したオカズが要らなかったのではないか、と思うのです。
ところが、実際にはこれが結構美味かったりします
■ご飯が美味しくなる理由
お米というのは、主成分は澱粉ですが、これは生のままでは美味しくないどころか、人間の胃腸では消化も出来ません。そこで加熱して消化吸収し易くする訳ですが、この加熱、つまり炊いてご飯にする事よって、美味しく食べれる様になるのです。その炊飯の過程を科学的に表現すると、以下の様になります。
- 当初、米と水が分離していて、釜の底からの熱の伝導で熱せられた湯が、米粒の間隙を対流して米粒の加熱が行われる時期。
- 米の澱粉が溶けてコロイド状となり、ために湯の対流が止まり同時に米粒の中の澱粉の糊化が進む時期。
- いわゆる<蒸らす>ため、米粒間と釜底に残留する水分の蒸散、米粒の中心部への吸収と膨軟が期待される時期。
- 釜底の水分が涸れて加熱し、底一面に狐色に色づいてα化が進み、更に良化して香味がつき、かくて真にうまい飯が完成する時期
■バーナーの大きさと炊飯量の違い
飯盒に当たる火の範囲が広いほど、α化がよりよく進みます。焚き火は飯盒の全周を覆う様に火が当たりますから、焚き火で炊いたご飯は美味しくなるのです。カマドで羽釜を使って炊いたご飯もこれと同じ理屈で、釜の底全体に火が当たるから美味しい訳で、「直火炊き」をうたう炊飯器の釜の構造もそれに準じています。同じ直火でも、バーナーヘッドの小さいコンロではあまり美味しくないのは、火の当たる範囲が狭く熱伝導の範囲が狭く、その他の部分のα化が進まない事が原因です。同様に2合炊きでは美味しかったのに4合ではイマイチだったりするのも、熱が伝導しない部分のα化が進みにくいからです。![]() | 広口バーナーで2合炊きの場合 バーナーヘッドの大きい家庭用コンロやストーブの場合、飯盒の底全体に火が当たり、かつ2合炊きの場合は嵩も低いので熱が上まで伝導し易く、比較的美味しいご飯が炊けます。 |
![]() | 広口バーナーで4合炊きの場合 バーナーヘッドが大きいコンロでも、4合炊きの場合は嵩が高く、上に行くほど熱の伝導が落ちるので、上の方が水っぽい感じになる事が多いです。 |
![]() | 小口バーナーで2合炊きの場合 バーナーヘッドが小さいコンロの場合、火が当たる範囲が狭く、伝導する範囲も狭いので、2合炊きでも美味しく炊けなかったり、火の当たってる範囲が焦げたりします。 |
![]() | 小口バーナーで4合炊きの場合 バーナーヘッドが小さいコンロで4合炊きするのは、まったく難しく、上は水っぽいのに下は焦げている、という事がよく起こります。 |
![]() | 焚き火で2合炊きの場合 焚き火は飯盒全体に火が当たり、全体的に熱を伝導しますので、非常に美味しいご飯を炊く事が出来ます。これが飯盒本来の使い方です。沸騰したら、薪を入れるペースを落として、じっくりと炊きます。 |
![]() | 焚き火で4合炊きの場合 焚き火で4合炊く場合は、2合の場合より若干時間が伸びますが(強火5〜6分、弱火5〜6分)、熱は全体的に当たりますので、美味しく炊けます。12分以内に完了すれば、無駄に焦げずにいい感じに炊けます。 |
■炊爨と炊飯の違い
「飯盒炊飯なのか、飯盒炊爨なのか、どちらですか? 」という質問がよく寄せられません。読み方も「すいはん」と「すいさん」、三文字目の「は」と「さ」の違いでしかないですし、飯盒でご飯炊く事には違いないので、炊飯でも間違いないのでは?と思われがちですが、辞書的には「飯盒炊爨」が正解です。
そもそも、炊爨の「爨」という字の成り立ちですが、「火で木を燃したカマドの上に鍋を置く男女」という構図になっています。字の意味は「炊事をする」という意味で、ご飯だけでなくオカズも料理する事を意味しています。ここで重要なのは、木、すなわち薪を燃やして料理する、という事で、漢字が成立した時代には、料理は薪を使った火力で行われるのが一般でした。
時代は下って、飯盒が日本でも使われる様になった時代、まだまだ料理はカマドで行われる事が一般的でしたし、ましてや軍隊が飯盒で炊事をするのは、戦地や演習、すなわち野外でしたから、薪を使って直火で使うのが前提でした。故に「飯盒炊爨」という熟語になった訳です。
さて、さらに時代は下って、我々の日常的な生活での料理は、ガスを使う事が一般的になりました。アウトドアでも、ガソリンや灯油、アルコールといった燃料を使うポータブルストーブが主流で、薪を使って焚き火で料理するという機会は、滅多にありません。ましてやカマドがある家など、ほぼ皆無です。なので、炊爨という言葉が、死語となってしまいました。
そこで、当協会では、焚き火を使って飯盒でご飯を炊く事を「飯盒炊爨」、焚き火以外の火力を使う場合を「飯盒炊飯」と呼び分ける事にしました。そして、その言葉の間には、格段のスキルの差があると考えます。というのも、ポータブルストーブやコンロを使った場合よりも焚き火の場合の方が相当に難易度が高く、また焚き火を使った場合の方が美味しさが倍増するからです。
そもそも、炊爨の「爨」という字の成り立ちですが、「火で木を燃したカマドの上に鍋を置く男女」という構図になっています。字の意味は「炊事をする」という意味で、ご飯だけでなくオカズも料理する事を意味しています。ここで重要なのは、木、すなわち薪を燃やして料理する、という事で、漢字が成立した時代には、料理は薪を使った火力で行われるのが一般でした。
時代は下って、飯盒が日本でも使われる様になった時代、まだまだ料理はカマドで行われる事が一般的でしたし、ましてや軍隊が飯盒で炊事をするのは、戦地や演習、すなわち野外でしたから、薪を使って直火で使うのが前提でした。故に「飯盒炊爨」という熟語になった訳です。
さて、さらに時代は下って、我々の日常的な生活での料理は、ガスを使う事が一般的になりました。アウトドアでも、ガソリンや灯油、アルコールといった燃料を使うポータブルストーブが主流で、薪を使って焚き火で料理するという機会は、滅多にありません。ましてやカマドがある家など、ほぼ皆無です。なので、炊爨という言葉が、死語となってしまいました。
そこで、当協会では、焚き火を使って飯盒でご飯を炊く事を「飯盒炊爨」、焚き火以外の火力を使う場合を「飯盒炊飯」と呼び分ける事にしました。そして、その言葉の間には、格段のスキルの差があると考えます。というのも、ポータブルストーブやコンロを使った場合よりも焚き火の場合の方が相当に難易度が高く、また焚き火を使った場合の方が美味しさが倍増するからです。
2019年07月01日
「飯盒でご飯を炊く」というと、結構難しい印象がある様です。 電気炊飯器みたいに、スイッチ一つで炊飯から保温までやってくれる訳ではないので、その意味では難しいのは確かです。しかし、実際にやってみて慣れてくると、その難しさというのは、火加減とか火力といった部分で、それさえ感覚的に理解出来ていれば、整った環境ならそれほど難しいものではありません。
ここでは、飯盒を使った基本的なご飯の炊き方と、難しいと思われる状況、環境を解説したいと思います。
家庭用ガスコンロを使った飯盒炊飯
動画は4合炊きの場合
寒い季節なので、沸騰に時間がかかりました
■飯盒の解説
今、市販されている飯盒は、旧日本軍が開発した兵隊用のものを踏襲したもので、基本的な使い方は当時と変わりありません。この飯盒では、最大で4合のご飯を炊く事が出来ますが、2合ないし3合でも炊く事が出来ます。ただし、1合は火加減の関係で上手に炊けない事が多いです。
蓋と掛子(中蓋)は米の計量器の代わりで、各々すりきり一杯で蓋は3合、掛子は2合図る事が出来ます。飯盒本体には上下二箇所に水量線が打刻してあって、下は2合の時の、上は4合の時の、水を入れる位置です。3合の場合はその中間まで入れます。
飯盒はもともとは焚き火に吊り下げて使うのを前提としているので、釣り手が付いています。もっとも、現代家屋やキャンプであっても、飯盒を吊り下げて使う機会というのは滅多になく、コンロに直接置いて使う事が多いです。本稿でもその様な使い方で紹介します。
革通というのは、もともと飯盒は背嚢に縛着して運搬するのを前提として作られており、この革通に背嚢の革のストラップを通して使ったのですが、その名残です。ただ、最近出回っている中国製の飯盒にはこの革通が省略されていて、これの有無が日本製の見分け方の一つになっています。(→どこで(どこの)飯盒を買えば良いか)
■炊く準備
ご飯を炊く準備というのは、米を研ぐ事です。そもそも米を研ぐというのは、昔は精米技術がまだ未熟で、精米した米に糠の粉が残っていたりして、そのままで炊くと糠臭い飯になってしまうので、しっかり研いで炊いたという事に由来します。現在市販されている精米は、そこまで気合入れて研がなくても臭い飯になったりしませんが、精米機などで自家精米する人は、ちゃんと研いだ方が良い場合もあります。逆に、無洗米はその名の通り、洗わなくてもそのまま使える米(糠層が完全に除去されている)なので、研ぎません。
米の研ぎ方は人によって様々ですが、一般的なのは、一旦米に水を入れて、水を切ったあと、米に手を入れて「の」の字を書く様に4〜5回かき回し、水を入れてとぎ汁を捨て、また「の」の字を書いて、というのを2〜3回繰り返した後、水を入れては捨てを水が澄むまで繰り返して、最後に入れた米の分の水量線まで水を入れる、というやり方だと思います。
変わった研ぎ方としては、米と水を飯盒に入れて、掛子をかけて、飯盒を上下にシャッフルする、というやり方。シャッフルした後、飯盒に水を入れて、掛子をして、掛子と飯盒の隙間から水を漉して流し、またシャッフルします。このやり方だと、手を米に入れずに済むので、手が多少汚れていても米を洗う事が出来ます。アウトドアで応用できるやり方です。
米を洗い終わり、水をセットしたら、しばらく米を水に浸けておきます。これは米に水を吸わせる行程で、これをやらないと固い飯になってしまいます。夏場なら30分、冬場なら60分浸けます。
お米の研ぎ方
■ご飯の炊き方(炊き干し法)
ここからが本題です。よくご飯の炊き方で「はじめチョロチョロ中パッパ、ジュウジュウ吹いたら火を引いて、ひと握りのわら燃やし、赤子泣いてもふた取るな」というのがありますが、あれはカマドで羽釜などを使って炊く時の要領です。飯盒で炊く場合、特にガスコンロで炊く場合は、「はじめチョロチョロ」は必要なく、いきなり強火で炊きます。
- 強火に飯盒をかけ、沸騰させる(大体4〜6分)
- 4合の場合は2分、3合の場合は1分、強火のまま炊く
- 上記の時間が過ぎたら弱火にする。2合の場合は沸騰したら弱火にする
- 弱火で3分3秒かけたら、火から下ろす
- 10〜15分蒸らして出来上がり
いきなり強火で炊くと焦げてしまうのでは?と思われるかもしれませんが、水が沸騰して米が対流している間は焦げません。むしろ、強い火力でしっかり沸騰させないと、美味しいご飯になりません。4
4合や3合の時に、強火のまま延長して炊くのは、量が多いのでしっかり対流させて熱を上の方まで伝えるのと、噴きこぼす事で余分な水分を排出する為です。2合では量が少ないので沸騰したら弱火にして水分を米に吸わせます。
ご飯が焦げるのは、むしろ弱火に落とした時で、米が水分を吸って膨らみ、対流が落ちてきた時に底にいつまでも火が当たっているから焦げるのであって、焦げる前に火から降ろせば焦げないか、焦げても少々です。
この炊き方は、「炊き干し法」と言って、飯盒に限らず、土鍋や文化鍋で炊く場合も一般的にこの方法がとられています。電気炊飯器での炊き方もこの方法によるものです。
ファイヤーボックスを使った飯盒炊爨
基本的なやり方は、ガスがガソリンなどのストーブでも同じです
■環境の違いによる難しさ
飯盒に限った事ではありませんが、直火でご飯を炊く際の難しさは、環境が良くない時にあります。具体的には、風がある時と気温が低い時です。
屋内で炊く時はまず風の影響を受けませんが、屋外で炊く時は風がきついと風に火が煽られて消えたり、風で熱が飛ばされて火力が低くなります。風のある時は、風避けを用意して出来るだけ風を防ぐ必要があります。
気温が低すぎる場合も、沸騰までに時間がかかり、上手に炊けないどころか、炊飯自体が無理な場合があります。具体的には、沸騰に時間がかかり、8分超えても沸騰せず、気がついたら低温の湯で米が膨らんでふやけてしまい、それでいて底が焦げている、というパターンです。あるいは、極低温だと米さえ膨らまず、芯の残ったまま半煮え飯になってしまいます。
これら環境が整わない場合には、上記の炊き干し法による炊飯は実質的には無理で、他の方法を取らねばなりません。
風除けをするとしなとでは大違いです
ガソリンストーブでもちゃんと炊けない時があります
■湯立て法
湯立て法とは、沸騰した湯に米を入れて強火で炊き上げる方法で、旧日本陸軍の軍隊調理法にも掲載されている炊き方です。この湯立て法、今でこそマイナーな炊き方になりましたが、江戸時代くらいまではポピュラーな炊き方でした。
具体的には、
- 洗った米をザルにあけておき
- 4合なら860ミリリットル、2合ならその半分の水を飯盒で沸かし
- 沸いた湯に洗った米を入れて蓋をして強火のまま炊いて再び沸騰させ
- 4〜5分経ったら火から下ろして、15分蒸らす
というやり方をします。手順からわかる様に、火力の調整が要らないやり方です。その代わり、洗った米を別に取り分けて、後から入れるという面倒があります。この炊き方は、本来は羽釜や平釜といった、大きめの釜で大量の米を炊くのに適したやり方ですが、飯盒でも応用可能です。
ご飯の出来栄えの比較としては、やはり炊き干し法の方が美味しいと思います。しかし、湯を沸騰させてから米を入れるやり方ですので、気温の低い時や火力の弱い熱源を使う時に行う事が多いです。例えば、アルコールストーブや缶入り固形燃料で炊飯する場合です。
もっとも、いくら湯が沸騰していても、気温が低くて米が冷えている、あるいは火力が弱い時は、米を入れた後の再沸騰までに時間がかかり、美味く炊けない事もあります。
缶入り固形燃料を使った湯立て法による炊飯
■ハイゼックス炊飯法
旧日本陸軍主計少将の川島四郎博士が開発した飯袋(セロファン筒)というのがあって、これは、
- 一、最モ簡易ニ炊事(焦付カズ、半煮ナシ)シ得
二、濁水ヲ以テ炊事シ得
三、乾固又ハ凍結後ノ再温再生可能
四、容易ニ變敗セズ
五、携帯及分配容易ニシテ投擲ニモ耐ユ
六、肉野菜類等ヲモ合炊シ得
という優れた炊飯用品だったのですが、これはハイゼックス炊飯袋という名称で今日も発売されており、もっぱら防災用品として扱われています。
これは袋の中に米1合と規定の水(袋に線が書いてある)を入れ、口を括って、熱湯に入れ30分間湯がいたら出来上がり、という至極簡単なものです。寒くてなかなか沸騰してくれなさそうな時でも、気兼ねなく炊ける利便性があります。これも本来は大釜で大量にやるやり方ですが、飯盒だと2つほど同時に炊く事が出来ます。
湯がくのに使った湯は再利用が可能であるほか、投擲以外は上に書かれた効能そのものですので(もっとも、肉や野菜を一緒に炊いた事ないですが)、いよいよ飯盒炊飯が難しい時は、こういったやり方があるのを知っておき、予め予備として炊飯袋を用意しておくのも智恵の一つだと思います。
これがハイゼックス炊飯袋
沸かした湯に入れ、30分間煮沸します
焚き火で炊いたご飯には及びませんが、普通に食べれるご飯です
2019年03月01日
自分はきんぴらゴボウだけは絶対に食べれなくて、おそらくこの世にきんぴらゴボウしななかったら餓死しちゃうんじゃないかと思うんですが、不思議な事にその他のに入ってるのは大丈夫だったりします。牛肉佃煮なんかもそうです。そこで今回は、ゴボウを使った料理をしました(というか、本当のメインは牛肉ですが。
軍隊調理法、第一の七、肉飯です。
女子力たっぷりにゴボウをささがきする図
こちらがレシピ
■肉飯とはなんぞや?
軍隊調理法の第一に収められているのは、ご飯系のレシピなのですが、肉飯というのは、これまで生きて来た中で、聞いた事のないご飯です。レシピを見て分かったのは、要は牛肉を甘辛く煮て、それをご飯に混ぜるだけという、簡単至極なものです。もっとも、牛肉使うところが高級感があるのですが、となると、外国産のやっすいまずい肉は使わない方が良いかもしれません。ちなみに軍隊調理法には、結構牛肉使ったレシピが多いのですが、昔は牛肉が安かったのか、いや、そんな事はやっぱりなくて、親方日の丸だから良いのを兵隊に食わせたというところでしょう。
レシピを見て思ったのは、牛肉佃煮との違いは、あちらは肉を先にから炒りするのですが、こちらは水を煮立てて牛肉とゴボウを煮る事。こちらは混ぜご飯の具なので、汁が要るからなのでしょう。問題は煮立てる水の量までは書いてなくて、目分量でやるしかありませんでした。ここら辺、感覚的なところなのでしょうが、どうせなら水の量と、その水がどの程度減るまで煮詰めるかも書いててくれれば親切だったのに、と思いました。というのは、汁の量が味の薄い濃いに影響するからです。
肉は75グラムとの事ですが
少々余ったので多めに入れてます
水を煮立てて牛肉とゴボウを煮ます
レシピによると、牛肉の大和煮缶でもOKとの事
すぐ吹いて溢れるので、火力に注意
灰汁が浮いたら除去します
牛肉とゴボウが柔らかくなったら
ネギと調味料をいれます
が、どの程度、牛肉とゴボウを煮ていいかタイム的にわかりません
自分は10分ほど煮ました
■どんだけ煮詰めればよいか?
煮詰める系の料理は、どれだけ煮詰めたら良いか、というのが慣れてないと分かりません。鱈時雨の時もそうでしたが、レシピにはどうしろとは書いてません。非常に感覚と経験がものをいう作業であると感じました。 今回は、飯盒の下の水量線まで水を入れたのですが、弱火でじっくり煮込んだせいもあって、30分経経ってもまだ汁が残っている様な感じでした。もっとも、混ぜご飯にする関係で、佃煮みたいにまったく汁がないのでは困るでしょうから、これでよしと思って混ぜる事にしました。
ところが実際にはやや汁が多かった様で、ご飯の底に沈殿するほどでした。具を入れて混ぜましたが、ちょっとべちゃべちゃする感じ。食べて見た感想は、しっかり肉の味がして、かつ安い米国産の固い肉(これでもすき焼き肉)も時間かけて煮込んだお陰で柔らかくなっており、それなりに美味しいのですが、ちょっと味が薄い感じ。
もう少し煮詰めた方が良かったのか、それともレシピ的に薄味なのか、はたまた飯の量がちょっと多かったのか(しかも米麦飯)、原因は様々でしょうが、もうちょっとパンチが欲しいところでした。
こんなもんかなー、と思ったのですが
飯盒の上からでは汁の残り具合が分かり難かったです
ご飯の上にドバッとかけてます
匂いはいいです
水分が多く、ちょっとベチャベチャした感じになりました
前回作った牛肉佃煮は相当美味しかったのですが、今回のちょっとパンチが足りない。なんなら前の牛肉佃煮をご飯に混ぜた方が美味しかったかも。こちらも同じ様な具材と調味料を使ってるのですが、わざわざレシピを分けてるからには、やっぱり肉飯の方は薄味が正解なのかも?
2019年02月13日
以前、米と麦の割合が7:3という事で、米2合の重さから按分した量目で麦飯を炊いた事がありますが、実は軍隊調理法にしっかり米麦飯のレシピが載っていました。なので今回、改めて軍隊調理法に基づく炊き方をしてみようと思います。第一の一、米麦飯です。
今回は二人分という事で、麦の量は倍の124グラムです
こちらがレシピ
■湯立て法
現在、一般的に行われている炊飯法は「炊き干し法」といって、予め米と水を鍋に入れて火にかけ、水が沸騰するにしたがって米が膨張し、余分な水分は蒸気ないし吹きこぼれとなって排出され、最終的に飯が炊き上がるという方法です。
ところが、軍隊調理法に書かれている炊き方は、「湯立て法」といって、沸騰した水に米を入れて炊き上げるやり方で、かつ蒸らしの過程も書かれているので「湯炊き法」とも言えます。この炊き方は江戸時代くらいまでよくやっていたそうです。
ところが、軍隊調理法に書かれている炊き方は、「湯立て法」といって、沸騰した水に米を入れて炊き上げるやり方で、かつ蒸らしの過程も書かれているので「湯炊き法」とも言えます。この炊き方は江戸時代くらいまでよくやっていたそうです。
この炊き方は、大きなお釜や、昔の軍隊で使われていた陣中平釜などに適した炊き方であろうと思うのですが、日本飯盒協会は飯盒の協会ですので、あえて飯盒でやりました
米の量は二人分で400グラム
米と麦を洗ってザルにあけておきます
自家精米なので、しっかり研がないと糠くさい飯になります
■火加減なし
湯立て法では、水を沸騰させて、米麦を入れて蓋をし、直火なら4〜5分煮て、15分蒸らすというやり方です。これまでにも、火力の弱いアルコールストーブや気温が低くてなかなか沸騰しない時にやっていましたが、炊き干し法に比べて火力調整がシビアでないのが特徴です。
まずは水を沸騰させます
沸騰したら、米麦を入れます
飯盒からこぼさない様に注意していれますが
湯気が結構熱いです
米麦を入れたら蓋をして、そのまま強火にかけ続けます
吹きこぼれ様が無視です
5分煮たら、火を止めて15分蒸らします
■仕上がり
炊き干し法は、弱火段階でしっかり水分を米に吸収させるので、上手に炊けばベタベタした感じになりません。湯立て法は若干水分が残る感じがしました。ただし、出来栄えとしてはちゃんと食える飯ですので、むしろシビアな火力調整がない分、炊き干し法よりやりやすい炊き方とも言えます。
一旦研いだ米をザルにあけて置いておかねばならないのは確かに面倒で、特に野外では手間に感じると思います。飯盒での炊飯法が炊き干し法であるのは、そうした事情もあるかもしれません。しかし、大釜とか平釜といった口の大きな釜であれば、ざっくり米を入れるのも楽ですし、なにより火力調整の必要があまりないのは便利だと思います。どちらかというと、大きな釜で大量に炊くのに向いているのかもしれません。
しかし、ガソリンストーブの中には、火力調整が出来ないものもあり、湯立て法ならそうしたストーブでも簡単に炊飯ができると思います。
出来上がったばかりは、ちょっと水分が残る感じ
後始末が楽でいいですw
2019年01月30日
去年、ジャガイモに続いてトマト、きゅうりと活躍した庭の家庭菜園、冬場は休耕という事で放置してあったのですが、台風シーズンを乗り切った大根が地面からニョッキリと顔を出してました。一体どうするのかと思っていたのですが、ようやく嫁さんが食う気になったので、今回は久々に軍隊調理法をやる事にしました。
軍隊調理法、第一の五「大根飯」です。
今まさに引っこ抜かれた大根
素人農法にしては、立派に出来ました
■用意するもの
大根飯は、その名の通り、大根がメインのおかずです。軍隊調理法によると、野外調理兼用と書かれているのですが、つまり兵営の炊事だけじゃなくて、演習や野戦といった状況でも作れる、言って見れば簡単な料理という事です。実際にめっさ簡単です。
レシピによりますと、大根200g、牛缶50g、醤油30mlとあります。一般的な和風の煮物だと、醤油以外に砂糖も使うのですが、軍隊調理法では砂糖は使わない様です。また、牛缶は「部隊用の牛水煮缶をさす」と書かれているのですが、牛肉の水煮缶なんて売ってるのを見た事がありません。その場合は、普通に牛肉を使えば良いのでしょうが、賞味期限が迫っていて誕生日に開けるつもりで取っておいた牛肉の大和煮缶を代用する事にしました。
レシピによりますと、大根200g、牛缶50g、醤油30mlとあります。一般的な和風の煮物だと、醤油以外に砂糖も使うのですが、軍隊調理法では砂糖は使わない様です。また、牛缶は「部隊用の牛水煮缶をさす」と書かれているのですが、牛肉の水煮缶なんて売ってるのを見た事がありません。その場合は、普通に牛肉を使えば良いのでしょうが、賞味期限が迫っていて誕生日に開けるつもりで取っておいた牛肉の大和煮缶を代用する事にしました。
醤油は一応、大根200gに対して30mlという事になっているのですが、まぁ、この辺りは好みで増やしても良いかと思います。味を見て薄いなと思ったら、ちょっとずつ足す感じです。
このまま、汁が底に残る程度まで煮詰めて行くのですが、具材に味が染み込んで行くのは、実は火を止めて冷めて行く過程で染みますので、時間に余裕があるのなら、煮立てたあと一旦火を止めて、冷ましてから再び火に掛けると、いい感じに味が染みます。
■喫食
いい感じに出来上がったら、ご飯に混ぜて食べます。砂糖は使っていないものの、大根から甘みが出るせいでしょうか、いい感じに和風の煮物っぽくなっております。
今回は牛肉の大和煮缶を使ったのですが、煮込んだ後は、なんかカスカスした感じになっており、そのまま食べたときよりもそれほど美味しくはなくなってました。牛肉の大和煮缶、結構良い値段しますしね、それなら普通に牛肉使った方が良いな、と思いました。