飯盒考察

2019年07月01日

 「飯盒でご飯を炊く」というと、結構難しい印象がある様です。 電気炊飯器みたいに、スイッチ一つで炊飯から保温までやってくれる訳ではないので、その意味では難しいのは確かです。しかし、実際にやってみて慣れてくると、その難しさというのは、火加減とか火力といった部分で、それさえ感覚的に理解出来ていれば、整った環境ならそれほど難しいものではありません。
 ここでは、飯盒を使った基本的なご飯の炊き方と、難しいと思われる状況、環境を解説したいと思います。



 
家庭用ガスコンロを使った飯盒炊飯
動画は4合炊きの場合
寒い季節なので、沸騰に時間がかかりました





■飯盒の解説

 今、市販されている飯盒は、旧日本軍が開発した兵隊用のものを踏襲したもので、基本的な使い方は当時と変わりありません。この飯盒では、最大で4合のご飯を炊く事が出来ますが、2合ないし3合でも炊く事が出来ます。ただし、1合は火加減の関係で上手に炊けない事が多いです。
 蓋と掛子(中蓋)は米の計量器の代わりで、各々すりきり一杯で蓋は3合、掛子は2合図る事が出来ます。飯盒本体には上下二箇所に水量線が打刻してあって、下は2合の時の、上は4合の時の、水を入れる位置です。3合の場合はその中間まで入れます。
 飯盒はもともとは焚き火に吊り下げて使うのを前提としているので、釣り手が付いています。もっとも、現代家屋やキャンプであっても、飯盒を吊り下げて使う機会というのは滅多になく、コンロに直接置いて使う事が多いです。本稿でもその様な使い方で紹介します。
 革通というのは、もともと飯盒は背嚢に縛着して運搬するのを前提として作られており、この革通に背嚢の革のストラップを通して使ったのですが、その名残です。ただ、最近出回っている中国製の飯盒にはこの革通が省略されていて、これの有無が日本製の見分け方の一つになっています。(→どこで(どこの)飯盒を買えば良いか

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■炊く準備

 ご飯を炊く準備というのは、米を研ぐ事です。そもそも米を研ぐというのは、昔は精米技術がまだ未熟で、精米した米に糠の粉が残っていたりして、そのままで炊くと糠臭い飯になってしまうので、しっかり研いで炊いたという事に由来します。現在市販されている精米は、そこまで気合入れて研がなくても臭い飯になったりしませんが、精米機などで自家精米する人は、ちゃんと研いだ方が良い場合もあります。逆に、無洗米はその名の通り、洗わなくてもそのまま使える米(糠層が完全に除去されている)なので、研ぎません。
 米の研ぎ方は人によって様々ですが、一般的なのは、一旦米に水を入れて、水を切ったあと、米に手を入れて「の」の字を書く様に4〜5回かき回し、水を入れてとぎ汁を捨て、また「の」の字を書いて、というのを2〜3回繰り返した後、水を入れては捨てを水が澄むまで繰り返して、最後に入れた米の分の水量線まで水を入れる、というやり方だと思います。
 変わった研ぎ方としては、米と水を飯盒に入れて、掛子をかけて、飯盒を上下にシャッフルする、というやり方。シャッフルした後、飯盒に水を入れて、掛子をして、掛子と飯盒の隙間から水を漉して流し、またシャッフルします。このやり方だと、手を米に入れずに済むので、手が多少汚れていても米を洗う事が出来ます。アウトドアで応用できるやり方です。
 米を洗い終わり、水をセットしたら、しばらく米を水に浸けておきます。これは米に水を吸わせる行程で、これをやらないと固い飯になってしまいます。夏場なら30分、冬場なら60分浸けます。

 
お米の研ぎ方

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米はよく濯がないと、糠くさいご飯になったりします


■ご飯の炊き方(炊き干し法)

 ここからが本題です。よくご飯の炊き方で「はじめチョロチョロ中パッパ、ジュウジュウ吹いたら火を引いて、ひと握りのわら燃やし、赤子泣いてもふた取るな」というのがありますが、あれはカマドで羽釜などを使って炊く時の要領です。飯盒で炊く場合、特にガスコンロで炊く場合は、「はじめチョロチョロ」は必要なく、いきなり強火で炊きます。
  1. 強火に飯盒をかけ、沸騰させる(大体4〜6分)
  2. 4合の場合は2分、3合の場合は1分、強火のまま炊く
  3. 上記の時間が過ぎたら弱火にする。2合の場合は沸騰したら弱火にする
  4. 弱火で3分3秒かけたら、火から下ろす
  5. 10〜15分蒸らして出来上がり
 いきなり強火で炊くと焦げてしまうのでは?と思われるかもしれませんが、水が沸騰して米が対流している間は焦げません。むしろ、強い火力でしっかり沸騰させないと、美味しいご飯になりません。4
4合や3合の時に、強火のまま延長して炊くのは、量が多いのでしっかり対流させて熱を上の方まで伝えるのと、噴きこぼす事で余分な水分を排出する為です。2合では量が少ないので沸騰したら弱火にして水分を米に吸わせます。
 ご飯が焦げるのは、むしろ弱火に落とした時で、米が水分を吸って膨らみ、対流が落ちてきた時に底にいつまでも火が当たっているから焦げるのであって、焦げる前に火から降ろせば焦げないか、焦げても少々です。
 この炊き方は、「炊き干し法」と言って、飯盒に限らず、土鍋や文化鍋で炊く場合も一般的にこの方法がとられています。電気炊飯器での炊き方もこの方法によるものです。


ファイヤーボックスを使った飯盒炊爨
基本的なやり方は、ガスがガソリンなどのストーブでも同じです



■環境の違いによる難しさ

 飯盒に限った事ではありませんが、直火でご飯を炊く際の難しさは、環境が良くない時にあります。具体的には、風がある時と気温が低い時です。
 屋内で炊く時はまず風の影響を受けませんが、屋外で炊く時は風がきついと風に火が煽られて消えたり、風で熱が飛ばされて火力が低くなります。風のある時は、風避けを用意して出来るだけ風を防ぐ必要があります。
 気温が低すぎる場合も、沸騰までに時間がかかり、上手に炊けないどころか、炊飯自体が無理な場合があります。具体的には、沸騰に時間がかかり、8分超えても沸騰せず、気がついたら低温の湯で米が膨らんでふやけてしまい、それでいて底が焦げている、というパターンです。あるいは、極低温だと米さえ膨らまず、芯の残ったまま半煮え飯になってしまいます。
 これら環境が整わない場合には、上記の炊き干し法による炊飯は実質的には無理で、他の方法を取らねばなりません。

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屋外では風の影響はモロに受けます
風除けをするとしなとでは大違いです

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あまりに寒いと、ガスストーブは言うに及ばず
ガソリンストーブでもちゃんと炊けない時があります

■湯立て法

 湯立て法とは、沸騰した湯に米を入れて強火で炊き上げる方法で、旧日本陸軍の軍隊調理法にも掲載されている炊き方です。この湯立て法、今でこそマイナーな炊き方になりましたが、江戸時代くらいまではポピュラーな炊き方でした。
 具体的には、
  1. 洗った米をザルにあけておき
  2. 4合なら860ミリリットル、2合ならその半分の水を飯盒で沸かし
  3. 沸いた湯に洗った米を入れて蓋をして強火のまま炊いて再び沸騰させ
  4. 4〜5分経ったら火から下ろして、15分蒸らす
 というやり方をします。手順からわかる様に、火力の調整が要らないやり方です。その代わり、洗った米を別に取り分けて、後から入れるという面倒があります。この炊き方は、本来は羽釜や平釜といった、大きめの釜で大量の米を炊くのに適したやり方ですが、飯盒でも応用可能です。
 ご飯の出来栄えの比較としては、やはり炊き干し法の方が美味しいと思います。しかし、湯を沸騰させてから米を入れるやり方ですので、気温の低い時や火力の弱い熱源を使う時に行う事が多いです。例えば、アルコールストーブや缶入り固形燃料で炊飯する場合です。
 もっとも、いくら湯が沸騰していても、気温が低くて米が冷えている、あるいは火力が弱い時は、米を入れた後の再沸騰までに時間がかかり、美味く炊けない事もあります。

 
缶入り固形燃料を使った湯立て法による炊飯


■ハイゼックス炊飯法

 旧日本陸軍主計少将の川島四郎博士が開発した飯袋(セロファン筒)というのがあって、これは、
    一、最モ簡易ニ炊事(焦付カズ、半煮ナシ)シ得
    二、濁水ヲ以テ炊事シ得
    三、乾固又ハ凍結後ノ再温再生可能
    四、容易ニ變敗セズ
    五、携帯及分配容易ニシテ投擲ニモ耐ユ
    六、肉野菜類等ヲモ合炊シ得
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川島四郎著『炊飯の科学』より


 という優れた炊飯用品だったのですが、これはハイゼックス炊飯袋という名称で今日も発売されており、もっぱら防災用品として扱われています。
 これは袋の中に米1合と規定の水(袋に線が書いてある)を入れ、口を括って、熱湯に入れ30分間湯がいたら出来上がり、という至極簡単なものです。寒くてなかなか沸騰してくれなさそうな時でも、気兼ねなく炊ける利便性があります。これも本来は大釜で大量にやるやり方ですが、飯盒だと2つほど同時に炊く事が出来ます。
 湯がくのに使った湯は再利用が可能であるほか、投擲以外は上に書かれた効能そのものですので(もっとも、肉や野菜を一緒に炊いた事ないですが)、いよいよ飯盒炊飯が難しい時は、こういったやり方があるのを知っておき、予め予備として炊飯袋を用意しておくのも智恵の一つだと思います。

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これがハイゼックス炊飯袋

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規定の量の米と水を入れて、輪ゴムで袋の口を括ります

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沸かした湯に入れ、30分間煮沸します

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これが出来上がり
焚き火で炊いたご飯には及びませんが、普通に食べれるご飯です









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tanisi_corp at 22:00コメント(0)

2019年01月15日

 自衛隊の飯ごう2型は結構人気があるようです。ようです、というのは、当協会の中の人自身はあまり高い評価を与えてないので、あまり気に留めてなかったからです。逆に、ニュートップの3合飯盒には高い評価を与えているのですが、今回は大きさの似たこの二つの飯盒の比較をし、かつ、こうして欲しかったといった点を論じてみようと思います。

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大きさはほぼ同じ
故に、ソロクッカーとして人気のある飯盒です


相当人気があるようで、市場在庫は払底
再販のめどもない感じらしいです


■容量の比較
 各々の飯盒のインプレは個別の記事を参照してもらうとして、今回は各種見地からの比較を行います。
 まず、容量。飯ごう2型も3合飯盒も、4合炊きのフルサイズの兵式飯盒と比較すると、パッキングサイズは2/3ほどです。しかし、飯盒本体となると違いがあって、飯ごう2型は2合炊きなのに対して、3合飯盒はその名の通り3合炊きですので、3合飯盒の方が高さがあります。
 ソロクッカーとして考えた時、一度にご飯を2合も3合も炊く人はあまりいないと思うので、1〜1.5合くらいで炊くと思うのですが、ご飯を炊くとなると、1合であれ2合であれ、底の深い方が炊き易いので(特に吹きこぼれの点など)、その意味では3合飯盒の方が使い勝手が良い、という風に自分は見ておりました。ついでに言うと、インスタントラーメンも飯ごう型より3合飯盒の方が煮易いのですが、これも飯盒本体の高さに由来する使い勝手の差です。

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本体の違い
飯ごう2型の方は、もはや食器といった方が良さそう
3合飯盒の方は、煮炊きと食器のギリギリの線を狙った感じ



■蓋と掛子
 飯ごう2型の大きな特徴は、ドイツ軍の飯盒に範を取ったと思われる蓋のハンドル。ちゃんと掛子を引っ掛けて使う事が出来ます。個人的には、ただのワイヤーでなく、もちっとしっかりしたのを付けて欲しかったところで、実際に持ってみると、なんかスカっと落としそうな気がしてならない。文句言うより慣れた方が良いのかもしれませんが、飯を炊く時に蓋のハンドルが邪魔でしょうがなく感じる自分としては、別に無くても良かったかなという風に感じています。この辺り、食器として使うか調理器具として使うか、考え方の分かれるところだと思います。
 対する3合飯盒の方は、脱着式のハンドルです。脱着式のハンドルの飯盒は他にもありますが、3合飯盒の物は実にしっかりしてて使い勝手が良い。飯盒の蓋だけでなく、中鍋にも使えるのですが、察するに、飯盒で飯炊いたあと、中鍋でラーメンでも煮て食う時に、使い易くするために付けたのでしょう。飯盒をソロキャンプで使う人が、その使い易さを追求しまくったのが、ニュートップの3合飯盒だと感じています。
 このハンドル、初代の3合飯盒を捨てたあとも、中鍋と一緒に長い間使っていたのですが、何度目かの引っ越しのドサクサにまぎれてどこかに行ってしまいました。部品点数が多い、脱着部分が多いというのは、紛失の原因にもなりますし、その意味で飯ごう2型が脱着式のハンドルを採用しなかったのは、十分理由のある事であると思います。

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蓋の違い
3合飯盒は普通の兵式飯盒の厚み
飯ごう2型の方は、少々厚みがあります

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飯ごう2型の方は蓋のハンドルで掛子が連結できます
3合飯盒は中鍋にもハンドルが使えます

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ドイツ軍では配食の際にこうして飯盒持ってましたが
飯ごう2型のワイヤーハンドルだと
なんか落としそうで不安があります


■釣り手の問題
 自分が飯ごう2型で一番問題にしているのは、あの無駄に長い釣り手。前回のレポートでも、吊り下げた時に、レギュラーの兵式飯盒と底の位置が同じくらいの高さになる様にするためか?と推測したのですが、本当のそうらしいです。しかし、ほぼほぼ食器としての機能を追求したのであれば、この点は思い切りが足りなかったと言わざるを得ません。
 そもそも、飯盒自体の大きさに対して、釣り手が長い訳ですから、収納時にはかなり邪魔なんじゃなかろうか、と思います。この点、実際に使ってる人の感想を聞いてみたいところです。もし、自分が飯ごう2型を常用するとしたら、釣り手は外して使うと思います。よく無くしてしまうアイテム、なんて書かれているところをみると、現役の兵隊さんも外して使ってるんじゃないでしょうか。
 自分個人としては、釣り手は3合飯盒や旧軍の将校飯盒みたいに、蓋をロックする機能を持ったやつにして欲しかったと思います。これはこれで焚き火に掛けれんという訳でもないですし、飯盒本体の高さと釣り手の長さが同じですから収納にも困りません。そして蓋がロック出来るとなれば、良いとこづくめじゃなかろうかと思う訳です。

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そのうち、飯盒1型は完全に姿を消す訳で
そうしたら、レギュラーサイズの飯盒に合わせて
釣り手を長くする必要もなかったと思うのですが…

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だったら、釣り手が蓋をロック出来る構造の方が良かったと思う
もっとも、3合飯盒の方も、凡ミスなのか
ロックの位置が残念な所に出来てますが



■食器か鍋釜か、飯盒の将来
 飯盒それ自体は、そもそもは煮炊きの為の鍋釜として開発されたのは疑い様も無いのですが、軍隊の野戦での給与のあり方が変化していって、次第に食器としての需要が高まって行ったのは、飯ごう2型の姿形から、十分に推測する事が出来ます。飯盒は、鍋釜なのか食器なのか、それは運用する側の事情によって異なってくると思います。
 自分は、飯盒はあくまで飯を炊くのが主目的であって、食器としての活用は、片手鍋でラーメン煮てそのまま食べるのと同様の位置づけでありますので、より食器よりに作られた飯ごう2型は、飯盒としては役不足に感じています。その一方で、ソロクッカーとして見た時、4合炊きの兵式飯盒は確かに容量オーバーであるのも認められるところです。
 ソロ用の煮炊きの鍋釜として、かつ食器としても使え、飯だけなく副食も作る事を想定して、すべてをオールンワンにしたニュートップの3合飯盒は、日本の飯盒がたどり着いた最高傑作であったと自分が評価するのは、上記の要求を全て満たしているからです。
 もっとも、その3合飯盒は、メーカーが消失して既に数十年、もはや市場在庫もほぼなく入手は不可能です。飯ごう2型が人気があるのは、やはりコンパクトなソロ用の飯盒であるからでしょうし、かつ現用装備である事から、品薄であっても入手は不可能でないからでしょう。炊飯の機能も、トランギアのメスティンに比べれば遥かに使い易い訳で、その意味で人気があるのはもっともな事だと思います。

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確かに、食器として考えるなら
このくらいのサイズの方が食べ易いのは事実です

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掛子に仕切りまで作ってある3合飯盒は、確かに凄いですが
無くし易い欠点もあります

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好み、使い方、コスプレの時代設定、などなど
必要とされる要素は、人それぞれ
好きな様に使って、入手困難な物はある時買いしましょう










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tanisi_corp at 11:00コメント(2)

2018年12月27日

 今、日本飯盒協会本部がある四街道市と佐倉市の境目の街は、周りが畑だらけのせいか、この時期になるととても寒くなります。以前本部があった新小岩に比べると、体感温度で1〜2度は低いのではないでしょうか。ポータブルストーブを使った飯盒炊爨にせよ、焚き火による飯盒炊爨にせよ、実は寒い季節にこそテクニックが求められ、故に面白さがあります。

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いい案配に炊けた時は、しっかりカニ穴も出来てるのですが
重湯が多く残った時は、その溜まり跡が出来ています


■条件の違い
 暖かい季節と寒い季節の条件の違いは、ズバリ、気温です。言うまでもなく、暖かい季節の方が炊き易いのです。当協会では、飯盒を使った美味いご飯を炊くタイムスケジールを
  1. 2合炊きの場合:4〜5分で沸騰する強火にかけ、沸騰したら4〜5分弱火にかける。
  2. 4合炊きの場合:5分前後で沸騰する強火にかけ、沸騰したらそのまま2分炊き、その後3.5〜4分弱火にかける。
 この様に算出していますが、寒い季節だと、飯盒がなかなか温まらず、全力の強火でも5分で沸騰しない事があります。また、沸騰すると、4合の場合だと吹きこぼれが顕著なのですが、この吹きこぼれによって直下の焚き火が一部消され、火力が低下します。その為、本来なら強火のまま2分炊き続けるところが、実際には中火くらいになって飯盒の温度が低下し、その後、弱火段階になってようやく火力が復活し出して、それにともなって吹きこぼれも起こり、結局、中火のままで弱火タイム終了まで引っ張る格好になります。その為、吹きこぼれが不十分でなく、飯盒内の水分が多いままで蒸らす格好になるのですが、外気が寒い為に飯盒が冷える速度も早く十分蒸れないとか、汁気が多いから火にかける時間を伸ばしたら底が焦げたとか、そういった次第で、暖かい季節より上手に炊けないのです。
 こうして炊いた飯はどの様になっているかというと、まず、タイムアップになっても重湯が多く残っている(蒸らし終わった後に蓋を取ると、重湯が溜まった跡が残っている)。従って蒸らし直後には水気の多い飯になっている。そしてポータブルストーブで炊いた様な、火の通りが足りなくて米の味が十分出てない味になっています。

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とにかくクソ寒いので、早く火を起こしたいのですが
ボケッとしてると消えたりするので
団扇で扇ぎまくって火勢を強くします

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このくらい火が立ち上るまで火起こしします
生半可だと、飯盒乗せた途端に、火が弱くなったりします

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沸騰するまでガンガン燃やします
焚き火で炊くと美味いのは
この様に、底だけでなく側面にも火が当たるからです

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沸騰すると吹きこぼれてきますが
ここからが勝負です
吹きこぼれで火が消されて、火力が落ちるからです



■対策
 気温が低い状況では、火起こしには十分な配慮が必要です。まず、飯盒を火に掛ける前に、十分火を炊いておく事。盛大に火を起こして、十分薪を入れて、最大火力になってから飯盒を火に掛けるべきです。また、飯盒を火に掛けてからも、薪を絶やさぬ様にして出来る限り沸騰の時間が遅れない様にする事が肝要です。
 そこで気をつけたいのは、盛大に燃やすために薪をポンポンとファイヤーボックスに入れると、薪が密集し過ぎて、空気と炎の通り道が塞がれて、かえって燃えが悪くなってしまい、火力が低下して沸騰まで時間が掛かってしまいます。冬場においても、5分程度で沸騰するのが好ましいです。
 さて、沸騰すると、4合炊きであれば間違いなく吹きこぼれますが、この吹きこぼれが下の火を消してしまい、そのままでは火力の著しい低下を招きます。そこで、適宜、団扇でファイヤーボックスを扇いで空気を送り込み、強制的に火を強くしなければなりません。ただし、扇ぐと火勢は強くなりますが、熱は風で逃がされてしまうので、扇ぎっぱなしにしていたのでは結局飯盒の方に熱が行きません。ちょっと扇いでは止め、また扇いで火を強くして、というのを2分間続けるのです。
 強火の延長パートが2分過ぎたら、あとは弱火ですので火が消えない程度に薪を少しずつ投入して、弱火をキープします。しかし、この頃になって、先ほど弱火で消された薪が乾燥して火が燃え移り、強火になったりします。当然、残った重湯が吹いたりもします。3分半経っても重湯が垂れる場合もままあります。そこで弱火タイムを伸ばすと、飯盒の底を焦がす事が多いです。もっとも、3分半で切り上げても焦げている場合もあります。
 飯盒を下ろしたら、そのまま外で蒸らすのでなく、室内に持ち込んで蒸らした方が良いです。寒い外気にさらされて、飯盒が冷やされてしまうからです。

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放っておくと火がどんどん消えるので
団扇で扇いで火勢を維持します
ただし、ずっと扇いでると熱が逃げるので
火が強くなったら扇ぐのを止め、弱くなったら扇ぎを繰り返します

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弱火パート後半になると
吹きこぼれで消されてた薪が再び燃えて
火力が強くなってしまう事もしばしば
3分半以上、火にかけると、底が間違いなく焦げます

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炊き終わったら、残り火を眺めて遊んでないで
直ちに室内に戻り、そこで蒸らします

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細心の注意をしてても、焦がしてしまう事が多いです
まぁ、ベタ飯にならない様にするのが
寒い季節で出来る精一杯というところです











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tanisi_corp at 22:45コメント(0)

2018年10月10日

   よく知られている様に、日本の兵式飯盒は最大で4合の米が炊ける様に設計されています。これは旧日本陸軍が二人一組で炊爨するのを前提に兵式飯盒を設計している関係で、飯盒1個で二人分の米飯(つまり一人2合)を炊ける様にするためです。ちなみに、もう1個の飯盒は汁物など副食を作る事になっています。
   さて、その4合炊きですが、日常的に使うにしても、一人暮らしなどでは4合など食べきれませんし、2合でも多いくらいですから、4合を炊く機会というのはあまりありません。ところが、キャンプや車中泊などでは人数が多い場合もあり、4合炊きにチャレンジするのですが、これが非常に難しい。そこで、当協会は試行錯誤を繰り返し、4合炊きがおおよそ成功する炊き方を見出しました。

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いい感じに底がキツネ色になった4合飯
焚き火でもこの出来映え



■失敗の経験
   これまで、一番経験を積んできたのは2合炊きで、これは、
  • 4〜5分で沸騰する程度の強火にかける
  • 沸騰したら5〜6分ほどで重湯が引く程度の弱火にする

   といった炊き方で、まずまず失敗する事がありませんでした。これはガスやガソリンといったポータブルストーブの場合でも、シエラストーブやファイヤーボックスでの焚き火の場合でも、共通していました。焦げる場合は火が強すぎた時ですし、芯飯やベタ飯は火力が弱い場合でした。

 

  ところが、この炊き方で4合炊きをやると、大抵はいつまでも重湯が引かず、ひつこく火にかけ続けざるを得ず、結果として上はベタ飯、下は焦げ飯といった出来映えの飯に仕上がります。そこで、強火の時間を長くする、あるいは弱火を長くするなどの工夫をしてみたのですが、毎度出来映えに差があり、かつ失敗する事が多く、これで定型といえるタイムが出ずにいました。(→焚き火による4合炊きの難しさ


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火にかける時間が長すぎると
飯の出来映えに関わり無く焦げます


■考察
   そこで基本に立ち返り、米の飯がどの様にして炊きあがって行くか、その行程を思い出してみました。

  1. 当初、米と水が分離していて、釜の底からの熱の伝導で熱せられた湯が。米粒の間隙を対流して米粒の加熱が行われる時期。
  2. 米の澱粉が溶けてコロイド状となり、ために湯の対流が止まり同時に米粒の中の澱粉の糊化が進む時期。
  3. いわゆる<蒸らす>ため、米粒間と釜底に残留する水分の蒸散、米粒の中心部への吸収と膨軟が期待される時期。
  4. 釜底の水分が涸れて加熱し、底一面に狐色に色づいてα化が進み、更に良化して香味がつき、かくて真にうまい飯が完成する時期
 この1から2にかけてが、飯盒を強火にかけて沸騰させる行程になるのですが、2合炊きの場合は嵩が少なく熱の通りも良いため、2から3への移行が早く、沸騰後ただちに弱火に切り替えないと、焦げ飯になってしまう可能性が大です。ところが、4合の場合は嵩が多く、沸騰して噴き出した時点ではまだまだ2の段階で、3に移行するには時間が掛かるのでないか。つまり、沸騰しても、しばらくそのままの火力で沸かし続け、頃合いを見計らって弱火にする、というのを試してみる事にしました。

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吹きこぼれは目安として結構重要です



■ケーススタディ
   実験の要目としては、沸騰してから弱火に移行するまでの、強火を継続する時間などのくらいが適正なのか、という事です。長過ぎては当然焦げるでしょうし、短すぎてはベタ飯になるのは目に見えているからでした。
   実験では、まず室内でプリムスIP-2243を使っておおよその適正タイムの見当をつけ、その後、屋外でファイヤーボックスを使って近似値が出るか試してみました。その結果が以下の通りでした。

15:16→1:30→4:10やや焦げIP-2243
25:11→2:01→4:06焦げIP-2243
35:27→3:00→4:00やや焦げ(焦げが堅い)IP-2243
44:29→3:21→3:30かなり焦げ(焦げが堅い)IP-2243
55:00→2:07→3:52やや焦げ(焦げが堅い)IP-2243
65:03→2:01→4:04焦げ無しIP-2243
75:40→2:03→5:22やや焦げIP-2243
84:20→2:00→3:35やや焦げIP-2243
95:44→2:02→4:06やや焦げFirebox
105:33→2:01→4:01かなり焦げFirebox
115:26→2:00→3:39キツネ色Firebox
125:15→2:00→4:00キツネ色IP-2243

   継続時間(沸騰から強火のまま加熱し続ける時間)を、1〜2では1分半から2分で行いました。これでは重湯が結構残る感じでしたので、3〜4では3分から4分で行いました。しかし、底がカチコチになるまで焦げる感じでしたので、それ以降は2分で行いました。その時の気温や火力調整の度合いによって、多少のばらつきはあるものの、おおよそ酷い焦げ方をせず、上手く炊ける様になってきました。
   ポイントなのは、4合炊きの場合、沸騰に至るまでの時間は、おおむね5分から5分半掛かる事。そして弱火は4分以上続けると焦げてしまう、という事でした。2合の場合に比べると、重湯はそれなりに残る格好になるのですが、重湯が消えるまで火にかけ続ける、つまり弱火を4分以上続けると、底がキツネ色を通り越して焦げますし、むしろそのくらいの重湯が残った方が、蒸らしの段階でいい感じの飯にしてくれる様です。
   ただし、火力の具合は、その時の気温等の条件によって変化し、仮に沸騰に5分以上掛かる場合でも、弱火に4分かけていると底が焦げるという事もありました。なので、弱火で3分を越えた時点で湯気の出方が落ち着いたとか、焦げた匂いがするといった時は、4分を待たず3分半程度で火から下ろす様にしました。
   ガスやガソリンといったポータブルストーブの場合、火力調整は自在に出来るので強火から弱火に一気に変える事が出来ますが、ファイヤーボックスの場合はそうは行きません。なので、沸騰してから1分までは薪を強火の時と同じくくべて火力を維持し、それが過ぎたあとは徐々に薪が燃え尽きて弱火になる程度の焼べ方にして、強火を2分継続するのと同じ燃やし方にしました。
   上記の結果、4合での炊き方は、以下のものであろうと思います。
  • 5分前後で沸騰する程度の強火にかける
  • 沸騰したらそのまま2分、強火で加熱する
  • その後、弱火で3.5分〜4分温める
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左がIP-2243でのタイム
右がファイヤーボックスでのタイム


■焦げる理由
   飯盒メシを焦がしてしまう一番の理由は、水と米が熱せられて対流しつつ糊化が進み、その対流が止まっているにも関わらず火にかけ続ける事です。つまり、対流が続いている限りは、いくら火力が強くても焦げ付く事はなく、その事に気づいた事が、4合炊きにおいて沸騰後も継続して強火にかけ続ける技法を試すきっかけとなりました。
   強火を継続する理由は、十分に加熱して対流させ、米の糊化膨張を促進し、かつ吹きこぼれによって余計な水分を放出するためです。ただし、この強火の継続時間が長すぎると、やはり底を焦がしてしまいます。底を焦がさず、かつ飯の仕上がりがよくなる時間が、約2分間だったのです。
   弱火は、上記の飯が炊ける行程の3番4番のパートに相当しますが、ここでも過度に長い時間弱火にかけていると底が焦げました。そして3分半から4分で切り上げるのが、丁度よくキツネ色に底が焦げ、美味く仕上がる事が分かりました。
 気候や環境によって、必要とする火力の度合いに違いはあると思いますが、おおよそ、このタイムで美味くいくと思います。なお、今回の実験でも、ポータブルストーブで炊いた時より、ファイヤーボックスで炊いた方が断然美味しいご飯が炊けました。

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やはりご飯は焚き火で炊くのが美味いようです






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tanisi_corp at 12:00コメント(0)

2018年09月06日

   缶入りの固形アルコール燃料は、旧日本陸軍で開発され、その後、自衛隊でも採用され、かつ現在においてもキャンプ用や防災用として、ホームセンターに売られています。一般に火力が弱いとされるアルコールの固形燃料(携帯燃料)が、未だに命脈を持ち続けているのは、まずもって壊れない構造である事、マッチ1本で着火が可能な簡便さが認められての事だと思います。

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今回は、ホームセンターで良く見かける
ニチネンのトップ缶250gを使用
他のメーカーのでも、中身自体は大体同じで
ゴトクの形状が違うくらいの差しかありません

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使い方は至って簡単
蓋を開けて、マッチで点火して、ゴトクを置くだけ
蓋さえしっかり閉まっていれば
中が揮発する事もありません

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ゴトクも意外と頑丈で
4合炊きの飯盒はおろか、4リットルのヤカンでも載ります

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使い終わったら、蓋をする前にゴトクをどかさねばなりません
ペンチなどを用意しておく必要があります

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消火は、蓋を逆さに被せます
缶が暑いうちに蓋をはめると、気化したアルコールで
蓋が吹っ飛んでびっくりします



■缶入り携帯燃料の火力の実際
   固形燃料は火力が弱い、と言われるのですが、では具体的にどの程度弱いのかを検証しました。4合炊きの飯盒で、何分でご飯を炊く事が出来るかで試しました。条件は無風の室内で気温27度としました。屋外では明らかに不利な熱源ですので、屋内専用とみなしての事です。
   点火した携帯燃料に、おもむろに飯盒を乗せます。携帯燃料は火力調整のしようがないので、あとは炊きあがるまで放っておきます。問題はいつ炊きあがるかで、まずグツグツ言い出すまでに13分を要しました。しかも、この段階ではまだ沸騰していなくて、まったく湯気も出ません。さらに待つ事、5分半、ようやく湯気を吹き出し始めました。そこから重湯が引くまで待つ訳ですが、これがいつまで経ってもなかなか引かない。結局、11分少し、トータルで30分そこらで切り上げましたが、その時点でもまだ重湯は残っていました。
   結果、出来上がったご飯は、辛うじて米粒が確認できるけど、あと少しでお粥になるんではないか、というほどのベタ飯で、まったく話しにならない出来映えとなりました。つまり、この手の缶入り携帯燃料では、4合炊きの飯盒炊飯をするには、明らかに火力不足である事が分かります。


飯盒を乗せてから、18分してようやく吹き出しました
これではベタ飯確定です

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実測値
ラップ3は重湯が引くまでの時間ですが
これでもまだ重湯が残ってました

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ご飯の真ん中が凹んでいるのは
残った重湯が溜まった跡です

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べったべたのご飯です
一応、「食べれる」ご飯ですが、「美味い」ご飯にはほど遠いです



■湯立て法で対策
   固形燃料で飯盒を使うのは、正味の話し、あまりお勧め出来ないのですが、それでも缶入り携帯燃料しかなかった場合に備えて、どうにかまともなご飯が炊ける工夫をしました。湯立て法というのは、沸騰した湯に洗った米を入れて炊く方法で、これなら水が沸騰する間、米はなんら影響を受けませんから、上記の様なベタ飯になる可能性が低い炊き方です。

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水は700ccを飯盒に入れます
米は4合、予め洗ってザルに入れておきます

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蓋をして沸騰させるのですが
タダの水からボコボコ言わせるまでに時間が掛かります

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水が沸騰したら、研いだ米を入れて蓋をして放置します


   とは言え、缶入り固形燃料だと、たった700ccの水を沸騰させるのに、約12分もかかりました。水と米を同時に入れる炊き干し法だと、この間に米がふやけてしまう様なもんですが、湯立て法はこの間は米は何の影響もありません。
   沸騰してから米を入れて蓋をして待つ事、約8分。やっと湯気が吹き出しました。湯気が吹くまでの時間は、炊き干し法の時と大して差がありません。ところが違いはここから重湯が引くまでの時間で、湯立て法では約4分で重湯が引き、トータルタイムで5分短縮という結果になりました。
   出来上がったご飯も、炊き干し法で炊いた時のベタ飯でなく、それなりにしっかりしたご飯になりました。しかし、その味は、米の味というより水の味で、火力が弱すぎてα化があまり進まなかった時のご飯の風味です。炊飯器の下くらいの出来映えです。むろん食べれはしますが、美味い飯とはほど遠い出来映えでした。

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湯立て法だと、5分ほど時間が短縮しました
その分、燃料も節約できる訳です

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ぱっと見、炊きあがりはそれなりにしっかりしてます

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食える飯としては炊けました
ただ、お味は今ひとつ


■缶入り携帯燃料の使い道
   湯立て法で辛うじてまともなご飯を炊けたのですが、それでも缶入り携帯燃料の火力では、荷が勝ちる事が分かりました。以前、2合炊きでチャレンジした事がありましたが、結果は多少マシなだけで、さほどの差はありませんでした。
   大きな飯盒で4合ものご飯を炊くのは大変でも、小さいクッカーで1合や2合炊くのであれば、また勝手は違ってきます。要するに、それなりに小さいクッカーであれば、缶入り携帯燃料でも活躍の余地はあります。また、時間は掛かるとはいえ、水を沸騰させる事は出来ますので、レトルト食品や缶詰、ハイゼックス炊飯袋などを温める用途には使えると思います。

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飯盒の底への火の当たり具合は
広くて良いのですが、如何せん、やっぱり火力が弱いです






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tanisi_corp at 11:00コメント(0)
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