この度、2023年モデルBeta X-Trainer 250 “シグルドリーヴァ号”に上等なサスペンションを実装する事にしました。総額だいたい20万円くらい。金額だけ見れば結構良い値段ですが、前のクロトレでエンジン内部にDLC/WPC/モリショットのフル加工をしたのを思えば、必要性でいうなら、圧倒的に今回のTRICの方が重要です。(詳しい記事は、こちらを参照してください→X-Trainerを生まれ変わらせる「ボトムでしっとり動く」上質なサスペンション


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フロントフォークにテクニクスのプロテクトデカール
まぁ、フォークカバーで覆っちゃうんですが




■クロトレのサスペンションの特徴

 なかなか優秀なクロトレではあるのですが、サスペンションに関しては、RRに比べると、価格を抑える為か、それほど上等なものが付いていません。といっても、初心者さんとかなら十分な性能をもっていますので、当面は純正のサスペンションのままでも大丈夫でしょう。
 クロストレーナーのサスペンションは、まずフロントですが、左側がリバウンドダンパー、つまり伸側のダンパーで、右側がスプリングプリロード、初期荷重(縮み具合)となっています。モトクロッサーだと、フォークの上に圧側のアジャスターが付いていて、下側に伸側のアジャスターが付いていたりしますが、クロトレでは左右それぞれに圧と伸の役割を振っている格好です。リアの方は、上のリザーバータンクに付いているダイヤルが圧側、リンクに潜り込んでいるボトム側のネジが伸側と、こちらはモトクロッサーとあまり変わりません。
 調整の仕方は、フロントは時計回りに回すと作用が強くなり、反時計回りだと弱くなります。リアは反時計周りで強くなり、時計回りで弱くなります。ちなみに、試しにフロントフォークのリバウンドダンパーを強めに調整しようとしたところ、どう考えてもこれ以上は時計回りに回らない感じでした。また、リアサスの圧側のダイヤルを回そうとしたら、コジコジで回らず、バイク屋さんに聞いたら、細い砂が入りやすく、分解するとラッチのボールがどっか飛んでってしまう、との事でしたので、Fフォークのオイル交換の時に掃除をお願いしました。

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フロントフォークの調整

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リアサスの圧側のダイヤル
砂を噛んで動きませんでした


■実装に至る経緯

 さて、Fフォークのオイル交換をしてもらったのですが、その時聞いたのは、サスペンションの調整は既に最強になっていて、これ以上は調整できない、という事でした。出荷時に既に最強になっていて、使い方によって弱めるスタイルだったみたいです。となると、もう純正のサスではどうもこうもできません。
 そもそも、クロトレのサスが意外と弱いのではないか、と感じだしたのは、ベストテクスクールやモチュールカップに復帰しだした頃からで、2022年の年末にはモトクロス的に使うには不足を感じていました。その頃から、TRICに替える案が浮上していたのですが、2019年モデルから2023年モデルに乗り換える事になり、その案は一旦先送りになりました。
 その2023年モデルは去年の6月から実戦配備され、もっぱらBTC市貝と河川敷で使ってきたのですが、今年の初めに加重講習を受けて、一気に走りが開花してからは、完全にサスが足りないと感じる様になりました。ジャンプの着時の底付き感とか、コーナーの進入でフロントがよれる感じとか。それでも純正のサスを調節して使い続けるつもりをしていたのですが、これ以上、純正でどうにか出来ないとなれば、いよいよモデファイする理由ができたというもんです。
 そこで意を決してTRICを実装する事にしました。TRICはテクニクスの説明では、フロントフォークだけでなく、リアショックの方もやらる前提で作られてるそうで、合わせてやると結構な値段になります。バイク屋さんも当初はリアは別の方法を考えてくれてましたが、どーせやるなら、前後ともテクニクスお勧めでやるのがおソロで格好いいではないですか。
 ざっと見積もりを出してもらい、だいたい20万円くらいという事で、その場で即決、直ちに注文してもらう事にしました。シグルドリーヴァ号は当分乗り続けるつもりですし、仮にあと2年乗るとしたら、月割りしたら月1万円くらいの支出です。もはやサスに限界を感じてるなら、早めにやった方が今後先々の幸せ度が違ってくる。というか、最強でセットされていて、これ以上調整できないと分かってたら、もっと早い段階で実装していたに違いありません。

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オーナーズマニュアルに記載されている
サスペンションの調整方法
(日本語版を作りました→データはこちら)


■作業内容

 作業に関しては、全部お店でやって貰いました。まぁ、自分でやれって言われても出来ませんしね。お店で組めない場合は、テクニクスにサスを送って作業してもらう事も出来る様です。自分の場合は、お店が「テクニクス得意よ」という事で、丸投げとなったわけです。
 作業としては、フロントは中身をごっそりTRICに交換という訳で、先日、フォークのオイル交換の時に付け替えてもらったSKFのオイルシールもそのまま流用となっていました。リアショックの方も、コンプレッション・アジャスターを純正からTGRに交換。スプリングも変える話しがあったのですが、とりあえずは純正のままで行ってみようか、という事で、その分、お値段が安くなって有り難かったです。
 作業時間は、持ち込みから引取りまで中2日しかありませんでしたので、特急でやって貰いました。

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これが届いたブツ

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これが明細
工賃いれて、12.4万円ちょいでした

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付属品の説明書(下のカード状のもの)と
おそらくノベルティグッズのペン



■TRIC FUN KIT

 引き取りの際に、ざっくり使い方を聞いてきました。といっても、サスペンションの事は色んなサイトで読みますが、イマイチよく分からない。なので、最低限の知識だけです。
 まず、フロントフォークの左側がリバウンドダンパー、右側がプリロードスプリングである事は、純正と変わりません。ただ、大きな違いは、左側のダンパーは20段階調整で、現状では10段階、つまりど真ん中に合わせてあるとの事でした。とりあえずは乗ってみて、強くしたければ締めれば良いし、しんどかったら緩めれば良い訳です。
 右側のプリロードの方はとりあえず最弱で合わせたとの事。ただし、スペーサーも入っているので、既にプリロードがかかった状態だそうです。
 TRICでは、アジャスターの上にエア抜きのネジが追加されました。まぁ、モトクロッサーなどにはよく付いているのですが、これは毎回、乗る前とトランポにしまう前に回してサスの中のエアを抜くのですが、六角レンチで回さねばならないのが、ちょっと面倒に感じました。せめてマイナスドライバーだったら良かったのに。フォークトップブリーダーが使えないか調べてみたいところです。

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内圧抜きのネジは六角
ネジ自体が結構細いので、合うブリーダーがあるかどうか


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アジャスターはうまい具合にドライバーが入りました

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左のフォークのボトムには
伸側のアジャスターが追加されています

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プリロードは当面は弄らない事にします


■TGR DUAL COMPRESSION ADJUSTAR

 TRICというのは、フロントフォークのキットの事で、リアは別物です。とはいえ、前だけやるという考えはテクニクス的にはない様で、前もやったら後ろもという事で、後ろもやって貰う事にしました。まぁ、当たり前ですわね。
 見た目の大きな違いは、純正では、低速側のコンプレッションしか調整できないそうですが、TGRでは高速側もできるとの事。内側のマイナスねじが低速で外側の赤い六角が高速です。ところが、何をして高速低速と言っているのかが分からなかったので聞いたところ、ジャンプの着地とかが高速、デコボコ路面を通過するのが低速、と教えて貰いました。なるほど、それを聞いただけで、やって良かったと思いました。
 ちなみに、現時点の調整位置は、「バイク屋さんのフィーリングで合わせといた」との事。まぁ、何をもって標準とするかなんかは、乗ってみない事には分からないし、不具合感じる様になれば、その時改めて調整の仕方習えば良いかな、と。あれこれ前もって聞いても、よう分からん頭では理解できんもんです。

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リアサスのスプリングは純正のまま
下の伸び側のアジャスターも純正のままです

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圧側のTGRアジャスター
低速(内側のネジ)と高速(外側の六角)で
微細な調整が可能になって、レーサーっぽくなりました


■乗り味

 TRICをオーダーしたのが2月下旬で、入荷、換装されたのが1ヶ月後という事で、なんとモチュールカップの開幕戦にいきなり実戦投入という運びになりました。まぁ、物が良いものである事には違いないのでしょうが、どんな新兵器でも問題点の洗い出しと慣熟訓練がなされないうちは、真価を発揮し得ないものです。
 ともあれ、前日の試走で使ってみました。乗ってみて最初に感じたのは、フワッフワっとした感じでした。路面の凸凹を拾わないというか、純正の時の様なダイレクトに路面の凸凹が伝わってこない感じです。そして、段差やコブ、轍の横断など、フロントサスがそれなり動く路面では、奥の方でしっかり踏ん張ってくれる感じがしました。ジャンプの着地も、どっちかというとモトクロッサーっぽい、スっと地面に降りてくれる感じがしました。
 しかし、ちょっと反発している感じもしましたので、コンプレッションを1クリックだけマイナスしてみました。すると、確かに反発する感じはなくなるのですが、高速から減速に入る際のフロントのヨレ具合が純正の時の様になって、非常に安定しません。これではTRICに変えた意味がないので、ただちに元に戻しました。
 モチュールカップ本番では、昨日の試走の時から左肩の調子が悪く、左腕にほとんど力が入らなくていました。しかし、TRICのお陰で、腕や肩にくる負担は相当に軽減されていたようで、休み休みではありましたが、最後まで走る事が出来ました。これが純正のサスだったら、左肩がひどい事になっていたかもしれません。

IMGP2009
こういうセクション、純正だと結構体に負担かかります

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少々お金はかかりますが
他にかけるお金があるなら、まずはTRICをお勧めします