さて、いよいよル・ブテオンによる炊飯です。本来、米を炊く道具ではありませんの(まぁ、フランス製ですしねぇ)、それなりに考察や工夫が必要でした。しかし、そこはやっぱり飯盒。デカくても飯盒です。ちゃんとしっかりした米の飯が炊けました。


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改めて兵式飯盒と並べてみました
ル・ブテオン、でかいっすねー





■容量の問題

 前回の紹介記事で、ル・ブテオンの容量は兵式飯盒の約3倍と見当をつけたのですが、では具体的にどうやってそれを計るのか。ル・ブテオンには、兵式飯盒の様に水量線は付いていないので、何らかの形で米や水の量を計る必要があります。
 そこでふと思ったのが、普段使っている飯盒の、具体的な量。掛子すりきり1杯が2合、蓋すりきり1杯が3合、というのは知ってますが、4合の米と上の水量線まで水を入れた場合は、水は何ミリリットル入ってるのか?などは、これまで調べた事がありませんでした。そこで調べたところ、以下の事が分かりました。(オオイ金属製兵式飯盒で調査)
  • 掛子1杯で、米2合(300g)、水300ml
  • 4合炊きの場合、米4合(600g)+水800ml
  • ちなみに、上の水量線まで水を入れた場合、水は1300ml
 ル・ブテオンでは、8合から12合の大量の米を炊く事になるのですが、上の式から8合、10合、12合にそれぞれ必要な水の量を計算しました。
  • 8合は1600ml
  • 10合は2000ml
  • 12合は2400ml
 これが分かれば、あとはル・ブテオンに入るくらいの計量カップを持っていけば、簡単に水の量を計って入れる事ができます。まぁ、こんだけ量が多いと、多少の誤差は許容範囲ですので、それこそ2リットルのペットボトルをドバドバ注いでも良さそうな感じです。

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掛子すりきり1杯で2合300gです

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4合の米に上の水量線まで水を入れて

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水だけ計ったら、800mlでした


■使う米の種類

 今日、市販されているお米は、大別すると精白米と無洗米です。精白米は炊く前に米を軽く研ぎますが、無洗米はそのまま水にぶちこんで使えます。5合くらいの米なら、研ぐのもそれほど手間ではありませんが、これが8合だの12合だのとなると、結構手間というかパワーも要りますし、当然水も必要です。 ましてや、レースの前夜祭で飯を炊くとなると、洗うのはなお大変なわけで、これまでにも精白米は自宅で研いで、干して無洗米にしてから現地に持って行っていました。という訳で、ル・ブテオンでの大量炊飯では、なおのこと無洗米の使用が必須となります。ちなみに、無洗米は日本陸軍が「不洗米」として試したらしいのですが、これは出先の戦場で贅沢に水が使えない事情があったからだと予想できます。 上では、掛子を使った米の計量を案出してますが、実際には自宅で無洗米を4合ずつビニール袋に入れて持って行き、必要な分だけ開けて使うという格好になると思います。

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12合もの米を研ぐのは結構大変です

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研いだ米をザルにあけて、無洗米にします



■飯の炊き方

 今日、一般的に行われているコメの炊き方は、炊き干し法といって、予めコメを水に浸して炊き上げる方法で、電気炊飯器も飯盒もこの方法による炊き方をしています。この炊き方は、5合くらいまでの小さい釜でやる分には、家庭用ガスコンロやアウトドアのポータブルストーブでも十分美味しく炊けるのですが、それ以上の容量となると、火力が乏しく沸騰までに時間がかかって、美味く炊けなくなる事があります。(参考記事→厳冬期における缶入り携帯燃料での炊飯缶入り携帯燃料による飯盒炊飯
 そこで、このブテオンで炊飯する場合は、湯立て法で炊く事としました。これは沸騰した湯にコメを投じて炊く方法で、沸騰した状態からスタートするので、沸騰までに時間がかかる状況、鍋に対してストーブが小さいとか、気温が低いとか、そういった場合に有用なやり方です。ちなみに、旧陸軍の「軍隊調理法」に記載されている米麦飯の炊き方も、この方法です。
  1. 使う米の分量の水をブテオンに入れて、強火で沸騰させる。
  2. 湯が沸騰したら、米を入れて、杓文字で底からかき混ぜて蓋をする。
  3. 再度沸騰したら、強火のまま5分炊く。
  4. 火を止め、15分蒸らす。
 この様に、炊き干し法で炊く時の様に、予め米を水に浸けておく手間がない事、火力調整の必要がない事、といった具合で、手順としては楽に炊く事が出来ます。精白米を使う場合は、一旦研いでザルに開けておく必要があり、ザルを別個に持っていかねばなりませんが、無洗米を使えば、研ぐ手間とザルを装備する必要もないので、なお結構な事です。


湯立て法は強火オンリーなので、楽な炊き方です


■湯立て法の実際

 以前、兵式飯盒で湯立て法にチャレンジした事はあるのですが、12合もの飯を炊くのは、いかなる方法をもってしても今回が初めてです。なので学ぶところも結構ありました。また、12合もの飯を炊いたら、それを食い切るのは大変な事なのですが(しかも目下ダイエット中)、ぶっつけ本番でやって失敗したら目も当てられないので、やはり予行演習の必要はありました。
 まず、使用するストーブは、先日調達したコールマンのパワーハウス LP ツーバーナーストーブとしました。これは12合炊きのル・ブテオンの重さが5kg近くにもなる為で、兵式飯盒用のプリムスIP-2243では支えられないからです。なお、パワーハウス・ツーバーナーの火力は3,500kcalですが、兵式飯盒の3倍の大きさのル・ブテオンでは相対的に火力が弱い事になります。
 最初の湯が沸騰するまでに掛かった時間は、約15分でした。そこから米を投じて、再度沸騰するまで7分掛かっています。ここで気が付いたのは、沸騰させる際は蓋はしておいた方が良い事。今回は中身を見るため開けて作業したのですが、その分、沸騰に時間がかかった様に思います。また、気化温度の低いイソブタンがメインのスーパーガスを使ったとしても、燃焼時間が経つにつれガスカートリッジはどんどん冷えて行くので、米を投じてからの再沸騰は、隣のバーナーでやった方が良かったと後になって気がつきました(使ってないから、気化熱でガスカートリッジが冷えてない)
 今回、再沸騰に時間が掛かりすぎたのか、底の方では米が膨らんで対流が落ちて来てるのに、上の方ではまだ水が残って対流すると行った具合で、再沸騰後、きっちり5分炊いた時、すでに微かに焦げた匂いがしていて、案の定、底を少し焦がしてしまいました。炊き方、感知の仕方などをさらに研究して、焦げのない炊き方を精進したいと思います。

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再沸騰は左のバーナーでやるべきでした

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延々使い続けているので、結露するほど冷えています

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強火だから焦げるのではなく
火力が低くても焦げる時は焦げます


■感想

 やってみての感想は、意外とやれるもんだな、と言うもんでした。底の方の焦げた部分は少々固かったですが、それ以外はふっくら炊けて、いい感じでした。作業時間は、今の季節で炊くのに約30分、蒸らしを入れたら45分くらい掛かった訳ですが、炊き干し法でも水に漬ける時間を入れれば、そのくらいの時間はかかるので、いい勝負といったところでしょう。
 個人的には、湯立て法より炊き干し法で炊いた方が美味しく感じます。この辺り、江戸時代くらいまでは湯立て法が主流だったのが、現在では炊き干し法にシフトした理由の一つかもしれません。その一方で、12合もの大量炊飯を、鍋釜のサイズに比して弱い火力で炊こうとしたら、やはり湯立て法でないと上手くは炊けないと感じました。ちなみに、江戸時代ころは湯立て法が主流だったのは、朝ないし昼にその日食べる飯を一度に炊いており、必然的に大量炊飯になる事から、湯立て法しか選択肢がなかったからではないか、と推測しています。
 今回、ラージサイズの飯盒という事で期待して取り寄せたル・ブテオンですが、その期待に十分応えてくれました。それどころか、実用する分とは別にもう一つ買っておきたくなるほど気に入ってしまいました。これも昨今、どんどん品薄になっているみたいなので、安くで買えるうちに、買っておこうと思います。そうすれば、飯だけでなくカレーとかも作れるかもしれません。

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当然、一気には食い切れないので
ラップで包んで冷凍して、少しずつ食べていきます