以前、リンゴとレーズンから天然酵母液を作るのに失敗したのですが、失敗したままでは締まりがないので、今回はきっちりと見本通りに酵母液をおこす事に成功しました。結論から先にいうと、温度管理が肝です。これさえちゃんとしておけば、冬場でも成功します。夏場なら、それこそ放っておいても成功すると思います。


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完成したレーズン酵母液
レーズン50g、砂糖10g、水200gで作りました




■レーズンと水の量の関係

 レーズンから酵母液をおこしている作例は沢山あるのですが、今回やってみて一番問題に感じたのは、レーズンと水の関係でした。というのも、レーズン1に対して、水の量が2とか3とか、そういう風に書いているのが多かったからです。
 実際にそれらの量でやってみると、レーズンがどんどん水を吸って膨らんでいき、最終的にはレーズンが浮いてるかどうかも分からないくらいに、喫水線から瓶の底までびっしりレーズンが詰まっている様な感じになりました。これでもまぁ、酵母液が出来ない訳ではないのですが、うまくいっているかどうかは、素人目には全然分かりません。
 そこで、レーズン1に対して、水は4の量でやってみました。この場合でも、レーズンは水吸ってパンパンに膨らむのですが、まだ水の量に余裕があるので、発酵が進むにつれてレーズンが浮いてくるのが分かります。また、酵母液が出来上がる直前には、澱も瓶の底に溜まってくるのが観察できます。
 具体的なレーズンと水の量ですが、夏場なら暖かいのでデカい瓶を使って大量に作るのも可だと思うのですが、冬場だと大きな発酵機でもない限り、せいぜいヨーグルティアでやるのが関の山ですから、デカい瓶は使えません。ヨーグルティアに入るサイズとなると、レーズン50gと砂糖10gに水200gくらいが精いっぱいです。しかし、それでもしっかり酵母液を作る事が出来ます。
 まぁ、作った酵母液は冷蔵庫で1週間くらいなら保存できますが、あまり沢山作っても仕方ないので、レーズン50gくらいが丁度良いかと思います。

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使う瓶は、必ず煮沸消毒し、自然乾燥させます
酵母おこしで失敗する原因その2は、雑菌が入る事です

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使用するレーズンは、オイルコーティングされてないもの
この枝付きレーズンは200gで800円もしましたw

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これは明らかに水の量が少ないです
レーズン1に対して、水は4くらいが適当の様です


■温度管理

 前回失敗したのは、まったくもって室温が低く、酵母が不活発だったからでした。酵母が元気になるのは、26〜28度くらいだといわれています。それ以下だと不活発で、40度を超えると死滅すると言われています。なので、28度の環境を安定的に作り出すのが大事です。
 その点で、ヨーグルティアを導入したのは大正解で、ヨーグルティアを28度に設定して、その中に放り込んで、一日1回、瓶を振って蓋開けて空気の入れ替えをしてやれば、3日目には見本通り、レーズンが浮き始め、蓋を開けたら「プシュッ」とサイダーみたいに泡が出ます。
 ところが、それでも最初の内は、なかなか「プシュッ」と言ってくれず、出来てるのか出来てないのか、よく分からない状態でした。しかし、「プシュッ」とは言わなくても、案外酵母は出来ているもので、目安としては、蓋を開けた時にツンと鼻を衝くアルコールっぽい匂いがしたら、酵母液は出来ています。
 実のところ、「プシュッ」とならなかったのは、水の量が少なかった時で、レーズンの量が多く浮いてるかどうか分からん状態では、「プッシュッ」とはならないみたいです。

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おこし始めの状態
レーズンは膨らんでおらず、沈んでいます

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28度設定のヨーグルティアに入れます

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2日目くらいの感じ
まだレーズンは浮いて来ません

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3日目くらいになると、瓶を振ると泡が出る様になります

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蓋を開けた時、「プシュッ」といって
サイダーみたいに泡が出て来たらいい感じ

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「プシュっ」といって泡が出る様になって
1〜2日目後が完成です
瓶の底にも澱が溜まっています




■サワー種に使う

 完成した酵母液は、もちろんサワー種に使います。サワー種は本来はライ麦粉や小麦の全粒粉に水足しておこすのですが、まぁ、これは大変です。そこで、水の代わりに酵母液を粉に入れます。すると、面白い様に発酵します。1週間もかけて、捨て種出して粉からサワー種を作るより、こっちの方が極めて簡単です。
 この場合でも、気温が低い時は、ヨーグルティアを使って28度で発酵させます。大体、8〜9時間くらいで嵩が1.5倍から2倍くらいになります。そうなったら、サワー種としては完成ですので、サワードウに使うことが出来ます。
 さらに発酵を続けると、蓋を開けた時に、ツンと鼻にくるアルコール臭がしてきます。これは中の酵母が粉の栄養素を食べ尽くし、いわゆる空腹になった状態です。こうなっても酵母が死んだ訳ではないので、種継ぎすることで継続して使用する事が出来ます。
 完成したサワー種は、おおむね1週間くらいは冷蔵庫で保存可能です。また、粉と水を足す事で、継続して使い続ける事が出来ます。具体的には、パンを焼く時にサワー種45gに湯冷ましした水とライ麦粉(もしくは小麦の全粒粉)を各々60g混ぜ、一晩発酵させてから、再び冷蔵庫に戻します。海外では、こうしたサワー種にわざわざ名前をつけて、何年も飼い続けているケースが多いらしいです。
 酵母液も、1週間くらいは冷蔵庫で保存する事が出来ます。もし、多めに作った時は、サワー種の種継ぎの際に、水の代わりに使ったりもします。酵母をおこすのに使ったレーズンは、ヨーグルトやアイスクリームに混ぜて食べたりすると美味しいです。

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レーズン酵母液にライ麦粉と水を混ぜた状態

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ヨーグルティアで28度で温めた9時間後の状態

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本来、サワー種は水に浮いたら完成と言われてますが
浮かなくてもしっかり生地を膨らます事が出来ます


■天然酵母の威力

 こうして出来た天然の酵母液ですが、意外にも発酵力が強い、という印象です。その威力は、もしかしたらドライイーストよりも強力かもしれません。
 具体的には、サワー種20gを水とライ麦粉160gずつに混ぜると、サワー種を起こした時の様に、大体8〜9時間で粉は全て発酵し、サワードウになります。それにメインの生地になる水と粉を混ぜて、5時間も発酵させると、飯盒から溢れ出るほどに発酵して嵩が増します。
 コミスブロートやミッシュブロートを焼く時は、サワードウにメイン生地の材料を混ぜてから、一次発酵に60分、二次発酵に40〜50分かけますが、いずれも元気よく発酵して膨らみます。逆にそれ以上発酵させると、膨らみすぎてスカスカのパンになってしまうくらいです。なので、酵母液から作ったサワー種を使う時は、むしろ発酵時間に気を使います。

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元気良すぎて溢れ出したの図

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二次発酵にかける前の状態

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50分くらいでこんな感じになります