本ちゃんのコミスブロートを作るための試み。その手始めとして、サワー種おこしリンゴとレーズンの酵母おこしにチャレンジし、それぞれ失敗したのですが、それでもめげずに三度酵母おこしに挑戦し、どうにかドライイーストなしでライ麦粉100%のパンを焼き上げました。本格的とはではまだいきませんが、完成の道のりへの第1回目の報告です。


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とにもかくにも、初めてのイーストを使わないライ麦パン





■枝付きレーズン酵母

 前回、リンゴとレーズンの酵母おこしに失敗した際に気がついたのが、瓶の蓋の形状が密閉できるものでないという事で、今回は完全に密閉できるスクリュータイプの瓶を買ってきました。そして、その瓶を売っていたカインズで、なんと酒のつまみとして枝付きのレーズンが売っているのを発見。結構いいい値段しましたが、枝付きの方が表面に酵母がいっぱい付いてそうな気がしたので、奮発して買ってきました。
 早速、酵母おこしに再挑戦。レーズンは枝付きで100g。煮沸して湯冷ましした水200gに、酵母の栄養となる砂糖20gを溶かして、レーズンを入れて蓋をしました。
  • 2日目:特に変化なし。
  • 3日目:レーズンが膨らんできて水の量が少なそうなので、水を50g増やす。すると瓶の中の空気の量がかなり少なくなったので、蓋を開けて呼吸させる回数を12時間おきにする。
  • 4日目:やはり常温では寒そうなので、28度に設定したヨーグルティアに入れる。
  • 5日目:特に変化なし。レーズンが膨らんで水面から一部顔を出す。
  • 6日目:蓋を開けた時、ちょっとだけ「シュ」という。匂いはレーズンの匂い。
  • 7日目:ヨーグルティアの温度を32度に上げる。蓋を開けた時、「シュ」といい、瓶の口に耳を近づけるとシュワシュワいう音が聞こえる。
  • 8日目:昨日と同じ。瓶が結構熱を持った感じになる。匂いはかなり濃いい甘い匂い。
  • 9日目:昨日と同じ。
  • 10日目:昨日と同じ。カビも生えず、腐った臭いもせず、これ以上待っても「シュワ〜」と泡が出る様子がなさそうなので、液を酵母液として使う決心をする。
 見本では、発酵が始まったら、蓋を開けた時に炭酸水みたいにシュワ〜っと泡が出る様になるのですが、とうとう最後までそんな劇的な反応は見られませんでした。
 あとで考えてみると、
  1. まずレーズンに対して水の量が少ない事(最低でもレーズン1に対して水は3はないとダメだと思う)
  2. 瓶の中の空気が少ない事
  3. 蓋を開ける回数はやはり一日1回が良いと思う事
  4. 設定温度は28度を上回ってないけない事(酵母よりも乳酸菌などが勝ってしまう)
 などの問題点があった様に思います。また、しゅわ〜と泡が出てないからといって、酵母が出来てない訳でもないらしくて、カビが生えたり腐った臭いがしない限りは、希望を捨てなくても良さそうです。また、気温が低い時は、どうにも酵母が起きてこないのですが、ヨーグルティアで温度を管理してやると、上手い事いくんだな、というのが体験的に分かりました。

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今回初めて“見た”枝付きレーズン
もちろんオイルコーティングなしです

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明らかに水の量が少ない感じです

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10日後。結局、シュワシュワとは来ませんでした


■増殖する元種

 こんな具合で、見切り発車の格好で元種を起こす事となりました。手始めは、酵母液60gとライ麦粉60gをヨーグルティアのガラスポットに入れて混ぜ、28度で温めてみる事にしました。ちなみに、ヨーグルティアのポットの中蓋はスプーンを入れれる様に切り欠きがあるのですが、そこから水分が蒸発しない様に、ラップを張って密閉性を高める事にしました。
 さて、6時間後の朝、ポットの中を見てみると、茶色く乾涸びかかっていました。まぁ、ポットのサイズに対して、元種の量が少なく吃水が低かったので、熱で干上がってしまったのでしょう。半分諦めつつ、残っていた酵母液(約50gくらい)を混ぜて様子を見る事にしました。ただ、28度では暑すぎると考えて、26度に落としました。
 さて、翌日の朝、ポットを開けてみると、元種の表面にポツポツ気泡があり、アルコールの強い臭いがしてきました。アルコール臭がするというのは、発酵が進み餌が切れている証拠です。つまり、酵母はまだ生きています。そこで、ライ麦粉と水を100gずつ入れてよく混ぜ、8時間ヨーグルティアで温めたところ、元気に発酵してました。
 6時間ほど常温で休ませたあと、さらにライ麦粉と水を100g入れて5時間温めたところ、さらに発酵しポットのメモリの500mlから750mlのところまで膨らみました。そこで一旦温めるのをやめ、常温で休ませました。
 この一連の種つぎで、元種は約580gまで増えました。

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60gのレーズン酵母液?を抽出

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60gのライ麦粉と混ぜました

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翌朝、干からびてたので、残りのレーズン酵母液を投入

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2日目の翌朝、結構きつめのアルコール臭を出してました

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種継ぎした2日目の夕方の様子

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3日目の深夜にさらに種継ぎ

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この状態から↓

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こうなりました


■イーストなしで膨張

 さて、いよいよコミスブロートを焼いてみる事にしました。これに先立って、海外(主にドイツ)のサイトでコミスブロートのレシピを調べていたのですが、一口にコミスブロートといっても、レシピは千差万別で、一つとして同じものがありませんでした。そもそもコミスブロート(Kommissbrot)の「コミス」は直訳すると「陸軍用品」という意味で、言ってみればコミスブロートは「軍用パン」という意味です。で、その軍用パンは日本陸軍の「軍隊調理法」の様な画一的なレシピで作られてた訳ではくて、時代や部隊によって様々あった、という事の様です。
 そこで、そうした様々なレシピを調べて、一番シンプルな材料を独自に割り出しました。
《たにし式コミスブロートの材料》
  • サワードウ:
     ライ麦粉 180g
     水 180g
     サワー種 20g
  • メイン生地:
     ライ麦粉 220g
     水 170g
     はちみつ 40g
     塩 10g
 本来なら、サワードウは上記の材料を混ぜて、常温で12時間近く発酵させて作るのですが、今回は上記の通り、レーズン酵母から元種を起こして増やしたものを使います。
 ちなみに、サワー種がちゃんと完成しておれば、サワー種は水に浮くのですが、現時点ではまだ十分完成しておらず水に沈みました。故に今回は、仮サワードウがまだ持っている発酵力を活用して、生地を膨張させる事を期待しています。

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材料一覧
実はキャラウェイシードも使うと書いてあったのですが
歯磨き粉の臭いになるので入れませんでした

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水に沈むうちは、サワー種としてはまだ未完です



■初の本ちゃん

 まず、湯冷ましした水が温かい内にはちみつを溶き(固まっていたので)、水が冷めたら、仮サワードウ380gを溶いて、メイン生地の材料を全て入れ、粉気がなくなるまでかき回しました。時間にして大体10分くらいです。今回は捏ねも叩きつけもせず、そのままボウルにラップして、オーブンの発酵機能で30度で1時間発酵させてみました。
 結果は、全然変化なし。まぁ、ドライイーストも入ってませんし、元種だって1時間そこらでは目立った変化は出てきません。そこで、パン型にラードを塗って、生地を入れて平らに成形し、今度は40度に設定して3時間発酵させる事にしました。
 用事が済んで帰ってきたのは、発酵開始から5時間後でしたが、見てみると型から少しはみ出る程度に、いい感じに膨らんでました。表面にもいい感じのひび割れが入っています。そこで、220度に余熱したオーブンで30分焼きました。結果は、型から出っ張った部分の角がやや焦げましたが、いい感じに焼き上がりました。
 粗熱をとってから切ってみると、中は結構もっちりしてる感じです。時間が経つにつれ、表面はどんどん硬くなっていきましたが、中は模造コミスブロートよりも水分を蓄えている感じでした。あまり乾燥が進んでも困るので、食べきるまでビニール袋に入れて保管する事にしました。

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材料を全て混ぜた状態

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一次発酵後。ほぼ変化なし

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今回からパウンドケーキ型を使用

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40度で5時間放置したあとの様子

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焼き上がり。ちょっと焦げました

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重さは大体、昔のドイツ兵の一日分


■発見点・改良点

 こんな具合で、初めてイーストを使わない、本ちゃんのレシピに近い形でコミスブロートを焼く事が出来ました。予想以上にうまく行きました。
 今回は、ヨーグルティアを使う事で一定した温度管理ができる様になり、サワー種を生長させる上で大いに向上がありました。また、そのサワー種が見本の様に水に浮く完成品でなくても、酵母が増殖して発酵力があれば、ライ麦粉の記事を膨らます事も分かりました。一方で、サワー種が十分に完成してないせいか、今回できたパンは、酸味の少ないパンになりました。
 今回、海外のサイトを参考に、焼く温度をこれまでの180度から220度に上げたのですが、これは表面を少々焦げ臭くさせただけで、あまり意味がない様に感じました。もっとも、オーブンもそれぞれ個性があって、同じ設定にしても焼き加減が違ったりしますので、自分の家の電子レンジが180度くらいが丁度いい、という話しかもしれません。
 今回使った仮サワードウは一部残し、サワー種おこしと同様の種継ぎを行って、ちゃんとしたサワー種に出来る様にします。

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焼き温度はやっぱり180度が良さそうです

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かなりもっちりした食感でした

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クリームチーズと激合いです!

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マーガリンとも合います

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ブルーベリージャムとも合いますが
マーマレードの方がもっと合うと思います