自分がチェーンの交換を自分でやろうと試みたのは意外と早くて、2008年11月にはチェーンツールを買っていました。タイヤ交換同様、チェーンも自分で交換できる様になろうとする、進取の気鋭に満ち満ちていたのだと思います。もっとも、タイヤ交換に比べると、チェーン交換は大して難しいものではありません。なので、これまで取り立てて記事にしようとも思わなかったのですが、専用の工具も使う事ですし、初心者さんに向けて紹介します。
何事も慣れです
■チェーンの交換時期
チェーンというのは使っている内に伸びてくるもので、伸びて来たら、スイングアーム後端のスネイルカムなりアジャスターナットなりで、適正なたわみになるまで調整するのですが、それでもいずれは限界が来ます。この辺りの具体的な数値は、サービスマニュアルの方に書いてあります。
ただ、どのくらいの期間、時期で交換になるかは、使用頻度、乗り方使い方、チェーンの品質、メーカーによって様々です。使い始めて3回目にはビロンビロンに伸びてる場合もあれば、半年、下手したら一年くらいしてもまだまだ大丈夫、というのもあります。一般に、新車時についてるチェーンは、時計などに付属してるオマケの電池みたいなもんで、イチコロでダメになるものが多い様です。なので、納車時にしっかりしたメーカーのチェーンに替えてもらったりする事もあります。また、急加速急減速ができる上手でハードな使い方する人も、チェーンの消耗が激しい様です。
まぁ、何にしても、伸びて来たら交換せねばならん訳です。その交換時期は、サービスマニュアルにも書いてるのですが、自分の場合、1〜2回調整して、なお見た目でタルンタルンになってきたなー、と感じたら、迷わず交換しています。この辺りは、非常に感覚的ですが、計ってみるとたるみが50mmくらいあったりするので、この辺りは経験的なものです。初心者の人は、ちゃんと物差しで計って、感覚を磨いてください。
スプロケのとこで浮く様なら交換
■チェーンのコマ数の数え方
実は恥ずかしながら、このチェーンのコマ数の数え方は、つい最近まで正しく知りませんでした。知らないまま年数が経ってしまい、今さら恥ずかしくて聞けなかったという感じです。その為、時々チェーンのコマ数を間違えてカットしてしまい、継ぎ手が付けられなかった、なんて事もあったくらいでした。
例えば、110Lだとすると、クリップの分を入れて110コマなのか、クリップの分を抜いて109コマ繋がっているのか、分からなかったりします。答えは、109L+1Lで110L、つまり、クリップの分を入れて110Lです。で、指定されているコマ数が108Lの場合は、2コマだけカットします。
ここで重要なのは、チェーンのコマ数は、必ず偶数になるという事です。105Lとか117Lというのはありません。というのは、チェーンは外リンクと内リンクを交互に結合して作られているのですが、仮に奇数でカットしてしまうと、内リンクと外リンクが残ってしまう事になって、ジョイント(外リンク)を付ける事が出来ません。
ところが、上段のリンクのコマ数の数え方がはっきり理解してないと、何コマ切っていいのかよく分からなくて、うっかり奇数の数を切れば良いと勘違いして、あとでアジャパー!というハメになります(実体験)
不要になったチェーンでカットの練習中
■チェーンの交換に必要な工具
チェーンの交換をするには、チェーンツールが必要です。これはそいじょそこらのホームセンターには売ってなくて、バイクショップかネットで買うしかありません。色んなメーカーのがありますが、自分は柄が付いている方が作業し易そうに思って、お値段もそこそこのDRCのプロチェーンツールを買いました。
といっても、今から12年も前の話しで、今は同じ名前ので柄にパーツが収納できる新型に置き換わっている様です。ちなみに、チェーンツールにはカット専用のもあって、そっちはそれなりに安いですが、カシメジョイントのカシメには使えないので、まぁ、少々高くても圧入・カシメも出来る奴を買っていた方が良いと思います。
チェーンツールを使う為のレンチも必要になります。大抵は17mm以上の大きなサイズのレンチで、車載工具レベルしか持ってない人だと、買い足す必要が出てきます。
クリップジョイントを使う場合は、クリップを止める為のチェーンプライヤーがあった方が、ストレスなくクリップの脱着が出来ます。ラジオペンチでも代用できますが、なかなか上手く付かなくてイライラします。チェーンプライヤーは、クリップ留める以外に使い道のない工具なので、それだけの為にお金出すのも馬鹿臭いですが、まぁ、あった方が楽です。
■チェーン交換の仕方
さて、チェーンの交換ですが、まずは今ついてるチェーンを外さねばなりません。国産車の新車の場合、エンドレスチェーンが付いている事が多いですが、まさにこうしたチェーンを外すためにチェーンツールが必要です(バイク屋さんによっては、サンダーでピンの頭を削り落とす所もある)。といっても、別に難しい事はありません。チェーンツールの説明書きに従って、チェーンツールとレンチを使って、ピンを抜くだけです。実際には、ピンを押し出すといった感じです。抜くのは、ただ単に抜くだけですので、力加減もあまり気にする事なく、堂々とやりましょう(というのは、一番最初は結構ビビって無駄に慎重にやってしまうから)。
次に新しいチェーンの装着ですが、その前にコマ数を合わせましょう。市販のチェーンは、大抵は100Lだの130Lだののキリのいい数字で売られています。なので指定コマ数が122Lだったら、130Lのチェーンを買って、8コマ減らす必要があります。この兼は上記を参考にしてください。これもピンを抜くだけの作業ですから、そんなに難しい事はありません。
チェーンをスプロケにハメたら、ジョイントをつけます。ノンシールのチェーンならそのまま付ければ良いだけですが、シールチェーンの場合はゴムのOリングの厚みがありますので、圧入という作業があります。チェーンツールに圧入用のガイドをつけて、いい感じにクククっとプレートを圧します。あまり力任せにグイグイやると、チェーンのリンクを潰しますので、あくまでもいい感じに。最近は、Oリングがかなり薄いものもあり、そういうのは圧入が必要なかったりもします。
カシメジョイントの場合は、ガイドプレートをつけてピンの頭を潰してカシメます。実は結構気を使うのはカシメジョイントで、ガイドプレートと圧入プレートを間違えてピンを抜いてしまったり(実体験)、力加減がわからずピンの頭を割ってしまったり(実体験)と、結構失敗します。なので、予備のカシメジョイントは持っておいた方が良いでしょう。
先にリアのアスクルナットを緩めて
シャフトが前後自在に動く様しておきます
というのは、現状ではチェーンが伸びた状態で調整されいので
新品チェーンに合わせて調整し直すからです
チェーンプライヤーを使ってクリップを外し、チェーンを抜きます
エンドレスやカシメの場合は
チェーンツールでピンを抜きます
TT-R125は指定コマ数が122Lですので
130Lのチェーンを買って、8コマ外します
チェーンツールを使って、8コマ目のところのピンを抜きます
慣れない内は力加減が分からず不安ですが
ピンを抜くだけなら、さほど難しい事はありません
チェーンのカットができました
余ったチェーンはキーホルダーにでもしましょうw
新しいチェーンをつけます
なかなか通らなかったりで、ちょっとイライラします
チェーンが届かない時は、アジャスターを緩めて
アスクルシャフトを一番前まで押し込みます
そうすれば、ちゃんと届く様になります
付属のクリップジョイント
シールのOリングは最近はとても薄く出来ています
ちゃんとOリングを通してからプレートをつけます
シールが薄いせいか、最近のシールチェーンは
圧入なしでも付けられます
チェーンプライヤーでクリップをつけます
このあと、チェーン調整して、アスクルナットを規定トルクで締めます
■クリップかカシメか
上にも書いた様に、国産車の新車では、エンドレスチェーンが付いている事が多いのですが、市販されているチェーンでエンドレスというのはありません(まぁ、そんなん来ても付けるの大変ですが)。大抵の場合は、つけ外し可能なクリップジョイントが付属しています。
その一方で、エンドレスチェーンと同様に、一旦つけたらチェーンツールでカットしないと外せないカシメジョイントというのもあります。これは別に取り寄せという事が多いですが、大抵のチェーンメーカーはクリップもカシメも別売されています。
クリップジョイントは、その名の通り、クリップをピンに留める事でプレートを押さえるタイプのジョイントで、取り外しが自在に出来るのがメリットです。かつてモトクロス時代、ノンシールのチェーンを使っていた時は、しょっちゅう外して洗っていましたので、クリップジョイントしか使った事がありませんでした。
ではカシメジョイントはどういう人が使うのかというと、エンデューロの世界では、ハードエンデューロの人たちが使う様です。というのも、岩とかでチェーンをヒットする確率も高く、打ち所が悪くてジョイントのところだったりすると、クリップが外れてしまう事もあるとか。そうすると、チェーンが外れて良くて走行不能、下手すると外れたチェーンがエンジンをヒットして、ウン十万円の損害になってしまうとか。それ以前に、帰って来れなくなるそうで、そういう人はカシメを使う様です。
もっとも、そうじゃない普通のクロスカントリーでは、そうした事故はあまり起こりません。まぁ、クリップが外側向いてるよりは、内側(つまりハブ側)向いてる方が安全度は高いので、あえて内側にクリップをつけたりする程度で、クリップジョイントでも問題ないと思っています。
エンデューロやモトクロスでは
クリップジョイントが一般的だと思います
■チェーンの洗い方
ノンシールは言うに及ばず、シールチェーンでも、チェーンの潤滑な動きを維持するために、つどつど注油する必要があります。そして、注油すると、必然的に砂埃を吸付けますし、マディの時は土や泥がチェーンに食いつきますし、油だの泥だので汚れるのがチェーンの宿命です。それをそのままにしておくと、チェーンの消耗が早まりますので、手入れする必要があります。
まず、マディを走った場合。この時は、チェーンだけでなくバイク自体が泥だらけになっていると思うので、洗車機を使ってでバリバリ洗車する事になると思います。この時、一緒にチェーンに着いた泥も水を噴射して弾き飛ばしてしまいます。出来ればバイクリフトでバイクを揚げて、リアホイールを回してチェーン全体を洗える様にしましょう。また、フロントスプロケやチェーンガイドもきっちり噴射して、残っている泥を吹き飛ばします。大事なのはこの後で、車体を拭くだけでなく、チェーンもキッチンペーパーやウエスでキレイに水気を拭いて、チェーンオイルを塗っておきましょう。でないとチェーンが錆びます。
洗車機で洗っても、油と砂埃がコネコネになったのはなかなか取れないものです。ノンシールの場合は、チェーンを外して灯油にどぶ漬して、真鍮ブラシで掃除するというやり方をしてましたが、シールチェーンの場合は、こんなやり方したらシールを傷めてしまうのでオススメ出来ません。なので、ウエスにパーツクリーナーを吹いてチェーンを吹く、チェーンブラシにパークリ吹いてチェーンを擦る、といった感じで掃除します。
油と砂埃で結構汚れています
チェーンブラシにたっぷりパーツクリーナーをつけて
チェーンを表裏しっかり擦ります
キレイに汚れを拭き取っていきます
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