自分がサバイバルフーズの存在を知ったのは、確か高校生の頃、サバイバルマガジンか何かで見たのが初めてだったと記憶するのですが、缶詰がせいぜい3年くらいしか賞味期限がないのに、25年も保つというので、それはそれは夢の様な保存食の様に感じた事を覚えています。もちろん値段も結構してて、バイト禁止の高校生の身分では手が届かない。その意味でも夢の非常食でした。
ところがこの度、職場の防災担当(今年自分から交代した)が、「3年とか5年で入れ替えるのメンドクセー」という事で、このサバイバルフーズを提案しました。そして、実に知ってから33年目にして、サバイバルフーズにお目見えする事が出来ました。
とりあえず試食用に
クラッカー、チキンシチュー、野菜スープの小缶セットを調達
■概況
昨今多発する自然災害に対して、防災用品を備えようという考えは、自分が高校生の時よりも強くなっているのですが、問題なのは、腐ったり変質したりしないものはともかく、食料品は足が速いので入れ替えが大変だという事です。これは家庭においても事業所や自治体においても変わりません。金額もさる事ながら、入れ替えの作業(放出、調達)の手間が大変なのです。その意味で、サバイバルフーズの様な、人生的なスパンの保存期間を持った非常食というのは、単価だけ見れば高く見えても、超長期的見れば、結果として手間とコストが相当省ける事は明らかです。そして、これは多くの人数を抱えている団体であれば、なお顕著であろうと思います。
ところで、このサバイバルフーズ、自分の記憶が正しければ、アメリカのオレゴンフリーズドライ社の製品だと思っていたのですが、今は日本製、あの永谷園が作っている様です。一体どんな経緯があってこうなったのか分かりませんが、値段も高く、海の彼方から取り寄せなければならない、手の届かないイメージだったのが、急に身近なものになった気がします。もっとも、お値段はいざ買うとなると今でも結構いい値段です。職場が買ってくれるというのでなければ、試食用でもなかなか買う気になれなかったでしょう。
各缶とも、樹脂のキャップ付き
その下にやや大きめの折り畳みの缶切り(栓抜き付き)が入っています
缶底には賞味期限がプリントされています
2044〜2045年まで
チキンシチューの内容説明
野菜スープの内容説明
クラッカーの内容説明
■開缶
今回取り寄せたのは試食用で、これで美味ければ本採用という運びです。これまでにネットに上げられているレビューで酷評されているものはほとんど見かけないのですが、自分はともかく、他の職員はサバイバルフーズのサの字も知らない人達ですから、まずはその人らの口を納得させなければなりません。
このサバイバルフーズ、ご丁寧に各缶に缶切りが付属していて、しかも切り口で指を切るななどの注意書きも書いてあるのですが、職場のボスから「パッカンじゃないのか」とのご意見。最近の缶詰で缶切り使うタイプってのはホント少なくなっていますし、そのせいか、若い子では缶切りの使い方も知らない子が居たりします。しかし、自衛隊の缶飯などもそうですが、放り投げたり長期に保存したりといった缶詰は、今でも缶切りを使うスパルタン仕様です。サバイバルフーズもその路線なのでしょう。付属の缶切りで開けてみると、結構手応えがある。やっぱり頑丈に作ってある様です。
色々丁寧な説明が書いてありますが
缶切りの使い方のイラストも
その内、載せる必要が出てくるかも知れません
折り畳みの缶切りとしては大きめですが
それもそのはず
それなりにハードシェルな缶詰でした
中身はご覧の通り
クラッカー以外は見事にフリーズドライです
■試食
チキンシチューと野菜スープはフリーズドライですので、お湯を注げば食べれますし、何ならそのまま口に入れても構わない様なものですが、缶の横の作り方の説明書きには、随分仰々しい事が書いてありました。まぁ、この通りに鍋に入れて煮込めばもっと美味いのかも知れませんが、非常時にそんな悠長な事は出来っこない、という想定で、テキトーな食べ方をしてみました。
まず、そのまま食べてみる。実はこれが食えん事もない。フリーズドライのミックスベジタブル(これはチキンシチューも野菜スープも同じものが入っている)は、簡単に噛めますし、唾液でシュッと柔らかくなる。欠点としては、直ぐに口の中が辛くなってしまう事と、チキンシチューと野菜スープの違いが分からんという事。そもそもチキンシチューにチキンの姿が無いんですよね。
次に、ポットのお湯を注いでみました。こちらも些かの問題もなく、かつ美味しく食べれました。ただ、湯の量が少ないと野菜スープもシチューっぽくなりますし、逆に多いとチキンシチューもスープっぽくなります。まぁ、一応は定量が決まっているのでしょうが、この辺りはお好みでも良いのかな、と思います。
さて、湯が沸かせない状態だと水を使う事になりそうですが、こちらも全く問題ないどころか、お湯の時と同じ速度で戻りました。寒い季節には冷たい物を食べるのは苦痛かも知れませんが、戻さず食べるのとどっちが良いか。そんな事よりも、水で戻したからと言って、風味が悪くなるという事が無いのが驚きでした。
作り方の説明
別にこの通りでなくても大丈夫
何なら、脱酸素材を抜いて、缶にお湯注いでもOKかと
まずはオーソドックスにお湯を入れてみました
味の方は結構イケます
チキンシチューなのにチキンが入ってないのがちょっと残念
今度は水でチャレンジ
水の量が少なくて、野菜スープがシチューっぽく
でも全然美味しかったです
クラッカーは内容量が書いてあるだけで、何枚入っているか分からなかったのですが、直径65mm、厚み7mmの物が17枚入っていました。これで2.5食分という事なのですが、1食6.8枚という微妙な数字なので、分配には注意です。
それはともかく、このクラッカーはこれまで食べたこの手合いの物の中で、頂好の甲の部類でかなり美味しい。甘味はあまり無いものの、如何にも小麦粉っぽい味でもなく、プレーンクラッカーをビスケットにした様な味わい。そして特筆すべきは、結構腹に溜まる事で、2枚も食べれば、結構腹が膨れます。
このクラッカーがなかなか美味しい
25年持たなくて良いから、市販して欲しいです
■総評
心配していた味に関しては、数ある非常食の中でトップクラスの美味さと言えます。値段を考えたら普段使いには使えませんが、それでも月に2〜3回なら食べても良いくらいに美味い。非常食というと、「食えるだけ有り難いと思え」的なところがありますが、やっぱり美味いというのは重要だと思います。
保存期間、美味さ、そうした優秀性を踏まえた上で、問題となりそうな点を考察しました。
- 分配方法
サバイバルフーズは、小缶で2.5食分、大缶で10食分となっているのですが、上に書いた様にクラッカーは各々17枚、68枚入りで、1食6.8枚という微妙な数字です。この点は割り切れる数字にしてくれれば良かったのにと思うのですが、それ以上に問題なのは、シチューやスープの方で、流石にきっちり計れるお玉までは付属していません。ついでに言えば、分配する為の皿やスプーンと言ったものも付属していません。家族であれ事業所であれ、分けて食べる事を考えたら、お玉や皿の用意はしておく必要があると思います。 - メニューの少なさ
サバイバルフーズ自体は美味しいのですが、メニューが、クラッカー、チキンシチュー、野菜スープ、とり雑炊、えび雑炊の5種類しかありません。最低3日分揃えるにしても、3日目にはかなり飽きてるんじゃ無いかと思います。米軍のMREレーションでも24種類はある訳で、もし可能ならメニューを増やして欲しいと思います。 - 甘味、酸っぱ味がない
サバイバルフーズは、主食系を指向していると思うのですが、被災時によく聞く声は、「甘い物とか時たま酸っぱい物が食べたい」というものです。例えば、米軍のMREレーションには、必ずチョコレートだのケーキだのと言った甘味が付属していて、中にはフリーズドライのフルーツが入っていたりします。ナマ物を25年も持たせるのは無理でしょうから、フリーズドライ化した甘味や酸い物を検討して欲しいものです
個人的にも欲しいところですが、あと25年経ったら何歳になっているか考えたら、ちょっと気が遠くなった気分になりましたw 洋風ばかりでなく、高菜の油炒めとか、沢庵とか、そう言った年寄り向けのラインナップもあれば良いのにな、なんて考えてしまいましたw
開缶後もキャップをしておけば
しばらく持たせる事が出来るでしょう
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