今年のWEXイーストは、バイクや身体、その他に支障がなく、第一戦から今回の第五戦まで、連続して参加する事が出来ました。今回の爺ヶ岳戦は、本年度前半戦の締めくくりのレースとなります。また、第一戦には間に合わなかったものの、第二戦以降、CRF450RX“ゲイレルル号”が安定的に連続して投入されてきた事もあり、マシン的な意味でも中間報告的なレースになるはずでした。


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今回は3名で参加
朝一番に乗り込んで、準備を進めます






■事前の準備

 前回の神立で感じた事は、「2速で走るには遅く、3速に上げるにはトルクが足りない」という、「ちょっと何か足らん感」でした。そこでスプロケのセットを見直す事にし、リアが51丁だったのを52丁に変更する事にしました。もっとも、7月上旬に注文したところ、「入荷までに3週間ほどかかる見込み」との返事があり、運が良ければ爺ヶ岳に間に合うという感じだったのですが、今回は運が良くて直前に物が届きました。
 そもそもCRF250R(X)“モルゲンシュテルン号”では前13丁、後52丁にしてたのを、どうして51丁にしたのか、今となっては思い出せないのですが、なんとなく「モトクロッサーの2丁増やし」みたいなイメージを持っていて、CRF450Rは49丁なので2丁増やしの51丁にしたのかもしれません。ちょびっと足らん感じは、この1丁分だったのだと思います。幸い、増えたのが1丁分でしたので、チェーンは116コマのママで足り、アジャスターだけ調整し直しました。
 さて、現地に持ち込んで、パドックで少しだけ動かしてみましたが、発進が実にスムーズ。450らしいガックン来る感じは全くなく、す〜っと動き出す。恐らく、450乗った事ない人でも安心して動かせそうです。これなら大丈夫、という事で、安心して前夜祭に突入しました。

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手前が51丁、奥が52丁
このちょっとの差が、ちょっと足りんとこを埋めます


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1丁増えても、チェーン116Lのままで
タイヤとスイングアームの隙間に問題なし

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1台だけサメの口描いてないのは
仲間外れしてるからではありませんw


■出だしから失敗

 昨夜は結構な大雨で、夜中9時にはタープテントの地面が浸水するほどだったのですが、雨は夜半過ぎには上がり、翌朝は雲間から青空が見えていました。しかし、こんな雨降った時の爺ヶ岳は、大概エライ事になるもので、過去にも何度もDNFした事があります。ガレ場は滑るし、ゲレンデはコネコネになるしで、とにかくタイヤとパワーが頼りのレースです。その点では、450にミシュランエンデューロですから、問題はないはずでした。ちなみにタイヤの空気圧は、前回の神立戦で前6後5でちょっと食いつきが足りない感じでしたので、今回は前5後4にしました。
 いつもの様にクエン酸水とアミノボンバーを摂取してから、早々にスタート地点に集合。するとどうでしょう、今回は90Cの最前列、しかもインベタ。目の前20メートルほどに第一コーナーが見えます。「これはもしかして、人生初ホールショット?!?!」と俄然やる気が出てきました。もう、ホールショット取れたら、あとはどうでも良いくらい、今回はホールショット狙いでいく決心をしました。
 前のクラスが発進したあと、スタートラインまで前進し、ギアを2速に入れてクラッチロックレバーを入れ、ヘルメットタッチして、日章旗が振り下ろされると同時に、クラッチレバー握って(ロックレバーが外れる)、アクセルオン!
 「うぉぉ〜〜ん!!」
 バイクが前に進まんやないかーい!自分の身体だけ前のめりになってしまいました。2速に入れてたつもりが、ニュートラルに入ってたみたいです。泡食って2速に上げて発進したものの、エンジンが唸るばっかで前に進む感が乏しい。今から思えば、この時点でクラッチ滑ってた様ですが、この時は取れるはずのホールショットが取れなくて、もうドッチラケの気分でした。

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夜2100時頃には、地面が水浸しになるほどの雨でした
早々にトランポに引っ込んで就寝


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去年の10月に走った時より、熟成が進んだゲイレルル号
どんな走りになるか、楽しみでした(この時点では)

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今回から投入した、アリエテのライディング・クロウズ
曇らないと定番のゴーグルですが
良し悪しを体感する間も無くDNF


■ギア入れたらエンストでDNF

 がっかりした気分を切り替えて、大渋滞の1コーナーを抜け、転けてる人らに巻き込まれない様に、取り敢えず巡航。5コーナーを抜けて、やはり渋滞してる6コーナーをどうにかパスして抜けようとしたら、6コーナーと7コーナーの間が雨でズルズルになってて突破に難儀し、ここで初めて「クラッチやばいかも〜」という気分になりました。
 そのあとはひたすら登りなのですが、雨で表土が流れたのか石がゴロゴロむき出して、転けたら痛そうな坂を、どうにも車速が乗らないバイクのアクセルを開けてトロトロ登り、雨のせいでカットになったファンウッズの入り口を横目にさらに直登。ところが、ファンウッズ出口を過ぎた辺りから傾斜がきつくなったのか車速が落ち始めて、ついに15コーナー付近で失速転倒。こんなところで止まると、降りてやり直すのも大変だし、そこから再スタートするのも大変だし、嫌な感じでした。結局、そこから再発進したのですが、この時点でクラッチは相当滑ってて、スタートに何度か失敗してようやく再発進したもの、1速で相当開けててもなかなか前に進まず、こりゃラジエターがヤバそうという事で、17コーナー手前の傾斜が緩くなった所で一旦止まって、バイクを冷やす事にしました。
 この時、水温計は108度くらい。リザーバータンクはブックブクに沸騰していて、取り敢えずファンが止まる85度以下になるまで休む事にしました。休憩中、坂の途中で転ける人を見物したり、17コーナーが渋滞するのは何でかと観察したり、それなりに目を楽しませる事が出来ました。
 さて、水温も下がったので、そろそろ行くかー、とクラッチレバーを握ってセルスイッチを入れてみると、エンスト。あれれ?おかしいと再度やってみると、やっぱりエンスト。クラッチ切ってるのにいきなりギアが繋がってしまいます。そこでニュートラルに入れてエンジン掛けてから、クラッチレバーを握ってギアを入れてみると、やっぱりエンスト。これまで、クラッチが滑ってクラッチ繋いでもエンジンが回ってるというのは何度も経験しましたが、その逆パターンは初めてです。
 どうにか動かそうとしましたが、どうにも動かないので、こりゃ今日はダメだな、という事でその場でDNF決定。爺ヶ岳という所は、走れる時は走れるけど、走れない時は走れないなぁ、とか思いながら、レース中の人らをボケっと見物してました。

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今回のコース図
結論から言うと、雨の影響はあまり無かった様に感じました
(走った範囲だけの感想ですが)

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8周走った他の二人とは
明らかに汚れ方が軽いゲイレルル号

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知らん間にブヨに噛まれたみたいですが
痒くなったのは、ウチに帰ってからでした





■DNFの後の体験

 しばらくその場でボケっとしてたのですが、そこは生憎日陰がないところで、マーシャルさん(珍しく女性だった)から17コーナー降りた先に日陰があるので、そこで休んで下さいと言われました。と言っても、バイクは動かんし、その17コーナーはみんな滑ったり転けたりで、どうもちょっと難しいっぽい。つまり、エンジン掛からん状態で突破できる自信がありませんでした。
 ところが、途中で声かけてくれた人(この人もCRF450RXだった)から、「セルが生きてるならセルスイッチ押しながら前に進めますよ」と言われ、その人に後ろを押して貰いながらチャレンジしてみました。キュルキュルと情けなさそうな音を立てながらも、バイクはちょっとちょっと前に進み、掘れて進みにくくなった17コーナーの左のラインもどうにか突破。そこの急な下りコーナーから先は、18コーナーの木陰まで、石ころが転がった下り坂です。ギアをニュートラルに入れ、車速ついたらブレーキ当てて速度を抑えつつ下っていったのですが、リアブレーキ使う足が結構疲れました。
 さて、木陰で涼しい顔してレースを見物したあと、レース終了後の撤収。自分はエンジン掛からないので、コースなりに帰る事が出来ないため、マーシャルさんに先導して貰って、ショートカットして帰る事になりました。基本的に下りなのですが、120ミニッツの2コーナー、90ミニッツの25、45コーナーの辺りが上りになっていて、そこを登りきるためにブレーキは一切かけずに一気に下って登り切ってください、との事でした。
 途中で止まっても困るので言われた通りにしたのですが、ここは120ミニッツで使うくらいですから、結構ガレています。そこをノーブレーキで降り、しかも結構な車速だったのですが、ビビリはしたものの、案外スムーズに下れました。実は前日、セクションスクールに出た友人から、「ファンガレはクラッチ切ってエンブレかけずに降りた方がスムーズに下れるって、コーチの人が言ってたよ」と聞いていて、それを聞いた時は、「そんなもん、車速ついてぶっ飛んだらどうするねん?」と思っていたのですが、奇しくもそれと同じ様な事をやったのでした。どうも、それは正解の様です。
 これまで、あんな車速でガレを下った事はありませんし、またブレーキかけてゆっくり降りてくるから、いつもフラフラしてたのですが、むしろある程度車速あった方が安定して走れるのかもな、と体感できる機会になりました。

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大した汚れではないですが
手洗いするよりケルヒャー使った方が全然楽です

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ご覧の通り、綺麗になりました
次戦に期待です


■後々の課題

 今回のバイクの不調については、若干の心当たりがあります。というのは、CRF450RXのクラッチレバーがあまりに重く、左手の操作が30分持たない事から、クラッチスプリングを半分に減らして対処しているのですが、必然的にクラッチを引っ張る力は半分になるため、クラッチの消耗が早いという事です。
 第二戦のGAIAで100分、第三戦の戸狩で40分(セクションスクールのみ)、第四戦の神立で100分と、爺ヶ岳に来るまでにエンジン稼働時間は約240分だったのですが、クラッチおよびスプリングの耐久時間を超えていた様です。爺ヶ岳戦の後にクラッチを交換する事にしていたのですが、前倒ししていれば、もっと走れていたかも知れません。
 CRF450RXのクラッチに関しては、別項で改めて考察しようと思うのですが、個人的には、「操作性を優先する為に機械的な犠牲が生じるのであれば、限界に達する前に部品を交換して性能を維持する」というやり方には異論も違和感もありません。これは軍用機などでもしばしば行われてる対策ですので、元ミリオタの自分としては、むしろ親近感のある対策です。
 もっとも、マメな交換という事になれば、それだけお金もかかる訳ですし、出来れば耐用時間が伸びるに越した事はありません。もし、他の方法で対策できるならそれも試してみたいと思います。自分が乗っているゲイレルル号は、こうした事情があるのだという事を知って頂ければ幸いです。