三宅島エンデューロでいきなり不動になったCRF450RX“ゲイレルル号”、半年の長きに渡って店に留め置きになってましたが、ようやく直って帰ってきました。今回の呼称、おそらく国内でもあまりお目にかかれない故障で、「こんなん出先じゃ、どうも出来ませんわ」という内容でした。
ここに辿り着くまでに、様々な試行錯誤がありました
■症状・背景
三宅島エンデューロの最終周(5周目)、後半のガレた坂を登る途中でいきなりエンストして停止。セルを回すも「ウィ」というだけで再始動せず。マーシャルが押しがけを試みるもやはり不動であった。現場での感覚的な症状としては、セルの使い過ぎによるバッテリー上がりの症状に近く、マーシャルさんからも「キックは無いんですか」と言われるほどに、キック始動ならエンジンが回ると考えていた。 三宅島エンデューロでは、途中で小休止する事が他のレースより多く、その度にセルモーターを回していたので、後半ではバッテリーの元気が無くなりつつあったのは確かでした。また、ウッズのワダチに足回りを取られて、エンジンが相当に熱を持ってラジエターを蒸してたにも関わらず、ラジエター液の補給をせず(そもそも持って行ってなかった)、結果、エンジンを焼き付かせた事も考えました。
エンジン停止した瞬間
この時点ではバッテリーが上がったと思っていた
三宅島から帰還して、そのまま搬入
まさかこの後、半年間留め置きになると思いませんでしたw
■すぐに直せた所
まずクラッチの点検。オイルを出してみると、灰色が入った様な真っ黒なオイルが出てきました。明らかにクラッチが焼けてる色です。そしてクラッチのカバーを開けてみると、中にには真っ黒に焼けたクラッチが。しかも一番奥のフリクションプレートがバラバラに割れていました。さらには、クラッチスプリングが純正に比べると相当縮んでいました。
クラッチレバーを軽くするために、負担の掛かる部分は傷みやすいのですが、これはもう「そうなるの前提」でレバーを軽くしてるので、「焼ける時は焼けるし、その時はクラッチを替える」と割り切っています。その為、予備のクラッチを常時備えてるほどです。
まぁ、もうちょっと乗り方を工夫するなり上手になるなりしたら、大分違ってくるとは思うのですが、それは今後の課題として、今回の不動の原因は乗り方には無いとのことです。
クラッチが焼けた臭いがプンプンの廃オイル
三宅島奮闘のあとです
またも破断してたフリクションプレート
しかし、450には良くあるとか
クラッチスプリングがかなり縮んでました
クラッチだけでなく、スプリングもマメな点検が必要ですね
■原因の究明
さて、不動の原因ですが、エンジンが焼きついたり、どっか壊れたりという事でもありませんでした(手動でクランク回して確かめた)。バッテリー上がりも想定して、別から電源を取ってテストするも症状変わらず。セルモーターに何らかの異常が発生しているのかと、分解し個別に接続してテストするも、セルモーター自体は元気でした。ちなみに、セルモーターのワンウェイクラッチが噛み込んでるのでは?とアドバイスくれた人が居ましたが、それもありませんでした。
特徴的なのは、セルスイッチを入れても「ウィ」としか言わない事。そこでメインリレーが何らかの原因で壊れた事が疑われたのでメインリレーを取り寄せて試してみたところ、やっぱり「カチ」としか言わない。次にECUの破損(といっても、早々破損するもんでもないのですが)が疑われたので、同年式のCRF450Rに乗ってる人からECUを借りてきて付けて試しましたが、やはり症状変わらず。こうなると、見た目ではどこが壊れてるのかわかりません。
2018年式のCRF450R/RXはキックアームはオプションなのですが、三宅島エンデューロの後半はバッテリーが弱りつつあった事もあり、これを機会に付ける事にしました。しかし、キックをしてもプラグから火花が飛ばない。いよいよ困り果てた状態になりました。
他から電源を取って調査中
セルモーター、エンジン、その他、
見た目で分かる部分での異常はなし
この間、お店とホンダサービスとのやり取りは相当激しいものがあったそうです。このお店はCRF450の経験と知識の蓄積が相当あるお店ですが、それでも分からんとなったら、製造元に聞くしかない。ところがホンダサービスから言われた事は全て検証済みで、それ以上は分からんとの事。分からんのなら自社で引き取って原因を究明すべきでしょうが、市販車じゃなく競技車はそういうの出来んとの事。造り手として、それは無責任は話しやないけ、と思いましたが、応対してるホンダサービスの人も、出先のコールセンターみたいなもんで、詳しいことが分からん様です。
結局、お店の人脈と伝手で原因分かりそうな人を当たって貰い、遂に原因が突き止められました。
お店の人脈で手に入ったキックアーム
カッコイイですw
■普通は溶けない場所
いきなり不動になった原因は、ジェネレーターにくっ付いているパルスジェネレーターが溶解した為でした。このパルスジェネレーターというのは、ジェネレーターのパルスを拾う部品だそうで、リチウムイオン電池で保護する機能を持っているとか(もっと詳しく聞いたのですが、半分以上失念しましたw)。これが溶けてしまった為、パルスを拾えず始動を止めてた様です。
問題なのは、この部品が溶けるなんてのは、聞いた事がないとの事。この事はホンダサービスの方で初めて聞いたとの事で、普通は溶ける様なものではないそうです。ちなみに、自分の乗り方が悪くて、エンジンが過度に発熱して溶けたのでは?と思ったのですが、それで溶けるなら、他のとこが先に溶けるとの事。まぁ、今まで乗ってきたバイクでも、そこが逝ってしまうなんてのはありませんでした。
本来溶けるはずの無いものが溶けた、となると、これはもう部品の不具合でしか無いのですが、相当強烈にホンダサービスの方にねじ込み、社内でも検討したそうですが、結局は競技車両という事で補償対象外との事だったそうです。
矢印の部分がパルスジェネレーター
上に溶けたカスが残っています
溶解したパルスジェネレーター
こんなとこ溶けたの、見た事ないとの事です
溶ける前の状態
結局、ジェネレーターをアッシーで交換しました
■メーカーの対応
蓋を開けてみれば部品交換で終わる話しだったのですが、ここまで長引いたのは、サービスマニュアルにも書いてない裏制御の事が、出先のホンダサービスの方にまで届いてなかった事。また、溶けるはずの無い部品が溶けてた事、これに尽きると思います。結局、お店の方で人伝てで原因究明したのですが、これは本来、メーカー側の仕事では無いのかな、という気がします。
今回のこの呼称、関係者が口を揃えて「見た事ない」という珍しい呼称で、おそらく国内では初めての例だと思うのですが、世界的に見たら、やっぱりどっかでパルスジェネレーターが溶けた、って話しがあるんじゃないのかなぁ、という気がしないでも無いです。また、一度でも溶けたとなると、次も溶け無い保証は無い訳で、しかも乗り方によって壊れる所でない(と言われた)以上、ライダーとして対策のしようもなく、やっぱり欠陥ではないのかな、と思います。
ホンダサービスは「競技車両だから」の一点張りだったそうですが、これが市販車だったらちゃんと面倒見るのか。出先のサービスが原因が分からんもんを、最後まで面倒見てくれるのか、ちょっと疑問です。よしんば競技車両だとしても、100万円近いものを売っておいて、今回の諸々の対応は、ちょっと無責任では無いかと感じました。
半年ぶりに帰ってきたゲイレルル号
やっと本格的に今シーズンを始めれます
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