昨年、3月下旬にも関わらず、まさかの降雪で伝説の一ページとなったWEXイースト開幕戦。その伝説の開幕戦において、期せずして神話的ギャグをかっ飛ばしてしまったワタクシ。この一年、その雪辱を晴らさんと、永々脈々と努力を重ねてきました(もっぱら車両方面で)。前振りに多くを語る必要はありますまい。激闘の一年が始まりました。
■90Dか90Cか
今年からWEXでは90ミニッツにDクラスが新設されるとか。昔あった様な気がするので、復活したというところでしょう。その訳は、Cクラスがあまりにもエントリー数が多すぎて、玉石混淆の有り様で、本当にズブズブの素人さんでは、二進も三進も太刀打ち出来ないからであろうと思われました。ちなみに、Dクラスへの参加資格は、「まだマシンの乗りこなしに不安がある入門者・車種 排気量オープン」という事になっています。そこで暫し黙考。自分はCRF450RXに乗り換えてまだ一年経ってない「乗りこなしに不安がある」状態にある、と見なせば、Dクラスにエントリー出来るのではないか。しかして、ズブズブの素人、という訳でもないので、上手いことしたら、相当上位に上がれるのではないか(Dクラスだけど)。この趣味始めて10年。まともに表彰台にあがった事のない自分にとって、これは絶好のチャンスなのではないか。
しかしその一方で、450に乗ってるクセしてDクラスって、どんな素人だよ、という非難も出てきそう。立場逆なら自分だったら絶対批判する。450に乗ろかっちゅう奴は、間違いなく入門者ではない。いくらヘッポコとは言えども、やって良い事と悪い事がある。ここは結果の如何に関わらず、Cクラスで出るべきではないか。
という訳で、クラス優勝のチャンスを捨てて、今年もCクラスで参戦する事にしました。ちなみに、Cクラスの参加資格は、「XCの経験が浅いルーキー」でして、10年もやってる自分は、本来ならCクラスでもダメなんでしょうが、まぁ、長い事やってたらエラいって訳でもないので、Cクラスです。
■去年のとの変更点
開催2日前になって、ようやく開幕戦のコース図が発表になりました。それを見て驚愕。2コーナーから先のクロスパーク勝沼名物の大坂が、相当複雑なコースになっており、さらには8コーナーから去年のクロスカップで走ったウッズを若干走る様になっています。16コーナーから先のウッズがカットされてるなど、楽になった部分もありますが、全般的にクロスカップチックなコース割りになっていました。となれば、下見は非常に重要です。いつもの様に前日朝一番に会場入りし、パドックを確保したあと、三々五々集まった隊員を引き連れて下見に出向きました。路面のコンディションはこれ以上ないくらいのドライコンディション。普通に走る分には危ない事は全然無さそうです。ただ、3コーナーから7コーナーまではコーナーが続く登りのセクションで、如何に車速を落とさず攻めて行けるか。8コーナーからのウッズもそれなりに坂が急で登るのがしんどうそう。それを越えたあと、10コーナーにいたる急な下り坂、11コーナーのガレの上り坂、12コーナーの下りのカーブ、そして、120ミニッツの32コーナーから始まる延々下りのウッズと、勝沼でこれまで怖くてたまらなかったセクションが続きます。
ともかく、去年の様に雪が降れば話しは別ですが、こんだけドライなら、早いか遅いかはともかく、走る事は出来そうです。
■IRC VE33の威力
ところで、今回の勝沼戦に備えて、CRF450RX“ゲイレルル号”は半年にわたってテストと改装を進めてきたのですが、その一方でタイヤについても情報を収集しました。IRCのVEは以前から勝沼向きと言われて来たのですが、ダンロップのAT81に絶対の信頼を持っていたので、これまで試した事がありませんでした。しかし、AT81に「何をしてもできるが、何をしても大したことがない」という印象を持つ様になり、今回はIRCのVE35とVE33でのぞむ事にしました。これまで使って来たタイヤとの違いは、パドックからスタート地点に移動する間に早くも体感する事が出来ました。というのも、パドックから上に上がる砂利まじりの上り坂を登る時、いつもならリアが滑る様な感触があるのですが、今回はしっとりとしたグリップ感があり、全然滑る感じがしません。なるほど、プロからアマチュアまで、みんなVEを勧める理由はこういう事かと納得しました。
そのままスタート地点に集合。自分ら400番台の後半は、スタートも後半です。いつもなら2列ずつスタートのはずですが、今回は5列ほど一斉にスタートの様で、日章旗が振り下ろされると同時に、もみくちゃになりながら発進しました。今回は遠慮せず、とにかく前に出れる時は前に出るつもりでグイグイ進んで行きました。
■腕上がりが収まる3周目まで
今回のレース、去年の6月のクロスカップ以来の久々で、ちょっとレースの感覚が鈍っているところがあったのですが、マシンの調子がこれまでにないくらい調子良いので、細かいこと考えずにどんどん先を進みました。路面は完全にドライですので、滑ったりする所もなく、苦手な下り坂も全然怖い思いする事なく、自分のペースで走り続けました。後半の下りのウッズは相変わらず苦手でしたが、滑る感じは全くないので、ともかく転けない事を前提に慎重に下って行きました。そしてサイティングラップ代わりの1周目が終わって帰って来た時の、チェックポイントの時計は約12分経過。途中渋滞とかあったので、まだ今日の自分のペースは分かりません。次第に腕上がりが始まり、痛いなしんどいなと思いつつ突入した2周目。1周目に団子状態だったバイクは良い感じにバラけて、自分のペースで走れる様になってました。ともあれ、エンジン回転が落ちて車速が落ちた時は、早め早めにアクセル開けて車速に乗せる様にして、体とクラッチが疲れない様に心がけながら走りました。2周目のタイムは約8分半。どうやら今日は、8〜9分が周回タイムの様です。
3周目には腕上がりも治まって来て、いよいよ元気に走れる様になりました。この間、仲間内では抜きつ抜かれつの隊内首位を賭けた攻防がありましたが、自分は気取られること無く自分のペースを守り、ノーミスで対抗する事で首位を奪取しました。
■ノーミスで8周まで
その後もノーミスで走り続け、他の人が原因で止まる以外は一切止まらず、延々走り続けた訳ですが、3周目辺りから喉が乾き始め、軽く疲れてきました。というのも、全然転けないので休憩も給水もしてるヒマがなかったからです。4月とはいえ、日差しがキツく走ってると結構暑い。なので早めに小休止と給水をして体力の消耗を防ぐことにしました。5周目からは2周おきにチェックポイントを過ぎたあと、あえて停止してクエン酸水を飲む様にしました。周回数のカウントは、6周目くらいまでは正確に行っていたのですが、その後は疲れが溜まって、もうそれどころではなく、特に後半の下りのウッズは、もうしんどいだけの苦行区間で、走破するのに時間食ってしまいました。それでもほんの30秒も休むとまた走りに行く元気が出るから、自分でもエラいもんだと感じました。
今回は、チェックポイントのデジタル時計を見る余裕もあったのですが、経過時間を見ると、1時間12分を示していました。今日の周回タイムは8〜9分ですので、頑張ればあと2周は走れるはずです。いつになく気力も体力も余力のある今、少しでも多く走っておこうと決心しました。
■9周目でようやくミス、そしてチェッカー
ともかく、残り時間はあまりない訳ですから、先を急いだ方が吉です。しかし、やっぱり疲れが溜まって注意力が落ちていたのでしょう。4コーナーのタイトな右コーナーで曲がりきれず、本日初めての転倒。なるべく早く起こすべく、渾身の力を込めて起こしたものの、これでさらに疲れてしまい、6コーナーでもワダチに引っかかってエンスト。ラジエターが沸騰して辺り一面、湯気をまき散らし撒いた(水温系は116度を示してました)。こりゃ、一旦止まって休まん事にはもっと酷い事になるわー、という事で、邪魔にならないところで、エンジンを止めて、キャメルバッグからクエン酸水を吸って、1分ほど小休止を取りました。以前の自分なら、この辺りでギブアップなのですが、休んであちこちの筋肉疲労が治まると、俄然やる気が出て再発進です。先頭集団は最終ラップに入ったのか、他に走ってる人も大分まばらになって来てました。そのお陰で、他の人を気にする必要もなく、自分のペースで走り続けることが出来ました。
そして最終ラップ。ここでミスると、チェッカー受けれなくなる事もあるので、きっちり給水してから再発進しました。その時、先頭集団はチェッカーを受けている最中でしたので、残り時間は15分。何も無ければ余裕で帰って来れる筈です。これで最後となると、疲れてたのも気にならなくなり、とにかくミスなく走り通す事だけ考えて、ついに走り抜き、チェッカーを受けました。
■掛子にイン
■まとめ今回のレース、天候に恵まれた事と、マシンの準備に余念が無かったお陰で、あれほど苦手としていたクロスパーク勝沼のレースで10周走る事が出来ました。これだけでも自分個人としては画期的な事ですが、それに加えてJNCC/WEXでもっとも多い周回数となったのも、個人的には非常に満足できる結果でした。なので、リザルトを見るまでは、結構いいとこ行ってるんじゃないか、と思っていたのですが、公式リザルトは90総合で79/113位、90Cで54/74位と、これまで同様、下から1/4辺りで結構ガッカリしました。12周11周走った人たちの平均ラップタイムが6〜7分で、8〜9分かかっていた自分ではお話しにならなかった、という訳です。
実際、レース中にも感じていた事ですが、全体的に自分程度の速度域で走っている人はほとんどおらず、大抵は自分より早かった事。また、セクションの間をつなぐリエゾン区間で車速を上げられなかった事(お休みタイムになっていた)。後半の苦手な下りウッズは惰性でつく程度の車速で徐行しないと自信もって走れず、かつ非常に疲労した事。などなど、原因が挙げられると思います。
その一方で、最初から無理な走りをせず、自分のペースを堅持する事で極端急速に疲労しない様にし、破綻した走りにならない様に心がけていたのも事実です。今回のレースでも感じた事ですが、昔の様に息も絶え絶えに息が上がって走れなくなるという事はなく、極度な筋肉疲労になっても短時間休むだけで復活するなど、疲れ方に特徴があるな、と感じました。この辺りと上手に付き合う事が出来たら、タレた走りにならなくなるんじゃないか、と考えています。
CRF450RX“ゲイレルル号”に関しては、最高の仕上がりになっていると感じました。かつてXR230“パンツァーファウスト号”に感じた様に、アクセル開けている限りどこでも登って行き、旋回半径が小さく、足付きがよくて安心感があり、それでいて決してパワー負けしない、強力なマシンであると思います。気にしていたクラッチは、7周目辺りから結構良い音立てる様になっていましたが、それでも滑る事なく、最後の最後まで持ちました。ただ、低速から坂を登るために一気にアクセル開ける様な使い方が多かったので、この点は改めて消耗を出来るだけ押さえる工夫をする必要を感じました。
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