なんぼ飯盒好きとは言え、飯盒ばっか買っても仕方ないと思うので、よほどの物でない限り買わない事に決めた矢先、よほどの物が出ましたよ。
   フッ素加工、つまり、テフロンだのスミフロンだの、語尾に「ロン」が付く、こびりつかないフライパンと同様の加工のされたこの飯盒、今を去る事20数年前、世の中がバブル景気に沸き立ち、アウトドア業界も活況を示してた時代、戦後飯盒文化の掉尾を飾る製品として、SRCはじめ、あちこちのキャンプ用品店に売られていました。その当時は、キャンプツーリングに飯盒みたいなデカいのを持っていくなど非常識と思ってましたので、ロクに注意も払わなかったのですが、焦げ飯に辟易しつつも、やっぱりキャンプは飯盒だろうという世のキャンパーの要求に答えた製品だった訳です。


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Amazonで購入したのですが
物が届くまで、オオイ金属製かわかりませんでした

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右はオオイ金属OEMのキャプテンスタッグの飯盒
左のフッ素加工飯盒の方は色がほぼ黒です

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驚いたのは革通しのメーカーの刻印
今はなきモリタの刻印が入ってました
なんか意味があるのかな




■フッ素加工飯盒の必要性

 飯盒というのは、アルマイト加工されたアルミの鍋釜な訳ですが、一番よく耳目するのは、「焦がした」というもの。中には炭化するまで焦がしてしまって、洗おうが擦ろうが底の焦げ跡が落ちない、というのもあり、目も当てられない酷い事になっているのもあります。フッ素加工の最大の目的は、鍋釜を焦げ付かさない事にある訳で、飯盒にフッ素加工を施してほしくなる気持ちは十分わかります。
   しかし、その一方で、飯が焦げ付く理由は、「火力が強すぎる」か「いつまでも火にかけている」かのいずれであって、いわば火加減の問題です。火が強すぎるのは言うに及ばない訳ですが、弱火であったって、いつまでも火にかけていれば焦げてしまう訳です。また、炊き込みご飯など味付きの飯を炊く場合でも、焦げ付かせてしまう事があります。
   当協会では、白飯の場合、「4〜5分で沸騰する強火、5〜6分で重湯が消える弱火」で炊くのを基本として指導していますが、これとても使うストーブ、環境、気温などなどによって変化するもので、それら条件下で上手な飯を炊くには、経験に基づくセンスが物を言います。いかに焦げ付かさずに炊くかも同様です。
   してみると、少なくとも米を炊くという事に関する限り(そしてそれが飯盒の主目的でもあるのですが)、この技術に精通できれば、別にフッ素加工されておらずとも焦げる事はあまりなく、自分個人では焦がす事は滅多にないので、別に買わんでも良いかなー、とか思っていました。全く同じ形の飯盒がすでに3つもあるので、4つも買ってどないするのか、と。

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主目的が飯を焦がさない事である事を考えれば
本体にしかフッ素加工されてないのは頷けますが
出来れば、蓋の裏にも加工を施してほしかった
そしたら、卵やハム焼くのに大助かりだったのに


■フッ素加工飯盒の意義

 ところが昨今、飯盒は飯以外にも、ケーキプリンパンと、色々活用する場面が増えました。特にパンは毎朝食べている準主食の地位にあり、無視は出来ません。そして、ケーキの場合はクッキングペーパーを使わねば逆さに降ってもケーキが出てこず、パンはラードを塗らなければボロボロに崩さないと出てきません。ここにフッ素加工されている飯盒が活用される場面を見いだした訳です。

*まずは飯炊き
   まずは普通に飯を炊いてみました。仮によしんば飯が焦げても、飯盒の底に焦げ付かないはずです。言い換えると、フッ素加工のおかげで飯盒の底に焦げ付かなくても、飯自体は焦げる事もあるので、飯炊きには細心の注意が必要です。
   余談ですが、飯を炊いている最中に火の元から離れて飯盒から目を離す人がいますが、飯盒の状態(噴き方や匂い)を見てない訳で、それでは上手に炊ける訳がなく、もちろん焦げ付かせ易い。飯炊きは「日本民族が過去3千年にわたる生活の知恵で考え出した日本独自の炊飯方式」(栄養学者・川島四郎)なのですから、そのくらい、気合い入れて飯炊きに打ち込んで頂きたいものです。

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いい感じに炊けました
フッ素加工は、スプーンなど尖ったもので傷をいれると
そこから剥がれてきますので要注意です


*炒め物
   フライパン同様のスミフロン加工ですから、当然炒め物は得意なはずです。試しに大切りにしたスパムを炒めてみました。もちろん、焦げ付かず炒める事が出来るのですが、深みがあるのでひっくり返すのが大変でした。卵焼きとかも苦手だと思います。蓋の裏にフッ素加工してくれたら良かったのになー、と思いました。しかし、焦げ付き気にせず炒めれるのは、カレーとか作る上で大きな前進です。

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ドバッと入れるのでなく
ひっくり返せる程度に入れるのが良かったかもw

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若干焦げが残りましたが、こびり付いてません
火の当たった部分が若干フニャリ出してます



■パンとケーキ

 パンを作る際は、型抜きしやすい用に飯盒の内側にラードを塗るのですが、この脂が日にちが経つと臭う事もあり、使わずにこした事ないのにな、と思っていました。また、ケーキの場合は、クッキングペーパーを形にあわせてセットするのですが、これがめんどい事この上なくて、これもないにこした事ないと思ってました。
   当初、上手い事出てくるか心配でしたが、なかなかどうして、パンもケーキも何もせずにスッポリ出てきて感動しました。オーブンの中に小一時間ほど入れているので、フッ素加工が傷まないか気になってたのですが、温度はせいぜい170〜200度くらいなので、大丈夫な様です。

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飯盒を逆さにしたら、すっぽり出てきましたw
ラード塗らないので、脂臭さもなしです

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ケーキもいい感じに型抜き
これだけでも、この飯盒を買う値打ちはあります


*プリンの類い
   プリンは普通の飯盒でもちゃんと型抜きできますが、だとすればフッ素加工飯盒はもっと簡単に型抜き出来るはずです。もしかしたら、ゼリーもきれいに抜けるかも知れません。今回は初めて杏仁豆腐にチャレンジしましたが、途中までは抜けたものの、柔らかすぎて途中で崩壊してしまいましたw

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初挑戦の杏仁豆腐
本当は杏仁豆腐は薄いバットで作ります

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いい感じに抜けるかー、と思ってたら
柔らかすぎて、トロピカルフルーツの自重で崩壊しましたw
まぁ、固めに作れば大丈夫でしょう


■まとめ

 この様な次第で、このフッ素加工飯盒、結構使いでがあります。しかも値段は1980円(送料別)と、フッ素加工でない飯盒と値段に大差がなく、やれる事の内容を考えたら、かなりお買い得です。
   注意点があるとしたら、フッ素加工は傷に弱く、傷が入ったらそこから剥がれてきてしまうので、尖ったものや金属製の道具を使う際は注意が必要です。また、どんなに大事に使っていても、数年すると傷が入ってしまうものなので、この先、この飯盒が市場から姿を消すのを見越して、予備を買っておくのも良いかもしれません。
   上記の通り、飯炊きは火加減を注意する事で焦げ付きを防止する事が可能ですので、飯炊きにはノーマルの飯盒を使用し、炒め物やパンなどに限定して使うと良いかも知れません。
   いずれにしても、この飯盒は買いです。

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うちでは、もっぱらパン用ですw