トレール車でエンデューロレースに出てる人も多いと思うのですが、レースではライトやウインカー、テールランプといった保安部品は不要であるのと、破損防止の為に取り外す人も多いと思います。ライトに関しては、ライトレンズを外してライトカウルだけ付ける、という風にすると思うのですが、この際、問題になるのが、ライトレンズの穴をそのままにしておくと、そこから土だの泥だのが入り込んで、ライトカウルの裏側がエライ事になってしまう、という事です。つまり、ライトレンズの穴は出来れば塞いだ方が良いかと思うのです。


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無いものは作る、という事で
今回はバイクネタとしては珍しい、造形系の話しです




■Z-CARBONは大外れ

   レースを始めた頃は、ライトカウルの保護の為に白や透明のカッティングシートをライトカウルに貼っていて、ライトレンズの穴もカッティングシートで塞いでました。しかし、前走者の激烈な跳ね上げに、ペラッペラのカッティングシートなど一溜まりもなく穴が開く、という始末でした。
   そこで、ZETAのZ-CARBONシリーズのCRF250X用のヘッドライトエリミネーターを買ってみたのですが、これが驚いた事に、CRF250XとXR250やXR230のライトカウルは、微妙に形が違う様で、ポン付けする事が出来ませんでした。6,000円強もしたのに付かないとは、かなりショックが大きかったのですが、さりとて他に代替品がある訳でもなく、クライゼルの社長さんに良い感じに取り付けステーと穴埋めのゴム板をあしらって貰いました。
   まぁ、これはこれで良かったのですが、時間が経つにつれ、目張りのテープが劣化して破れてきたり、やっぱり取って付けた感は免れません。そこで、今回、思い切って一から自作する事になりました。

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Z-CARBONのヘッドライトエリミネーター
CRF250XよりXR250の方がライトが大きい様です

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こんな感じで隙間だらけです

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アルミ板でステーを作ってもらい
隙間はゴム板で塞いでもらいました

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新品の時は、これはこれで格好良いかな
と思ってましたw


■昔取った杵柄、ABS板積層

   さて、レンズの穴を塞ぐカバーをどう作るか。単純に板を切って固定する、という風には行かない曲面構成をしていますので、これは削り出しで作るより他無さそうです。といっても、木などのブロックを一から削ったのでは作業が大変ですし、また重くもなってしまうでしょうから、これはABS板を積層して箱形を作り、それを削り出すのが良いと判断しました。実はこの手の作業、昔、サバゲーをやってた頃、軽機関銃の部品作ったりするので散々やっていて、手慣れた作業なのです。
   まずやってみたのは、厚紙をライトレンズの穴にあてがって、蓋の筒型を作ってみる事でした。これによって、切り出すABS板のおおよその長さを見当つけます。次にABS板を切り出し、ライトレンズの穴に宛てがってABS接着剤で貼り合わせ、速乾性の瞬間接着剤で仮止めします。その上で、この筒型にABS板を内側から貼って厚みを出して行き、瞬間接着剤で固めたあと、ライトカウルの曲線に合わせて筒型を削ります。そして筒型に蓋となるABS板を貼り、その上にABS板を積層していきます。そして瞬間接着剤で隙間を全て埋めて、ABS接着剤が乾燥するまで放置します。

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ぶっつけ本番で現物合わせでやってもいいのですが
どの程度の筒にしたら良いかなど
モデルを作ってからの方がイメージがし易いです

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モデルが出来たら、ABS板を切り出して行きます
昔は楽チンな作業だったのですが
老眼のお陰で、結構心眼を使う作業になりました

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ABS接着剤で貼り合わせるのですが
作業を迅速化するために、瞬間接着剤をスポット熔接的に使っています

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上の筒型の内側にABS板を貼り合わせ厚みを出します
曲線部分は、短冊上に切ったABS板を貼っています

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筒型に蓋をして、削り出す曲面部分にABS板を積層します
隙間を埋めるために、瞬間接着剤をパテ代わりにしています

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裏側は、ビス止めのステーの位置以上にカバーが飛び出さない様に
筒型の側面に段差を設けています



■匠の技、ABS削り出し

   さて、良い感じにABS接着剤が乾燥したら、今度はカバーの削り出しです。ライトカウルの形に、良い感じに削って行きます。道具は荒めの丸ヤスリ一本です。平ヤスリでも良いのですが、今回は曲面ですので、丸ヤスリの方が二次曲線を出し易いです。
   削るテクニックは、これはもう、慣れというしか言い様がなくて、やってるウチに出来る様になりました。丸ヤスリで滑らかな曲面を削るには、ヤスリを真っすぐに引くのでなく、ヤスリを斜めにして刃を研ぐ様に動かす、微妙な曲面は手首を滑らかに動かして削り出す、このくらいしか口で言える事はありません。
   ところで、この手の曲面の削り出しでは、積層が足りない、という場合が結構あります。また、瞬間接着剤だけでは埋められない穴とか、裏側から裏打ちをしなければならない場合もあります。そんな時、ABSの削り粉に瞬間接着剤を垂らして、パテ代わりにしています。使用する瞬間接着剤は、いわゆるスピードタイプの粘度の低いサラサラのもので、削り粉にさっと浸透して極めて短時間に硬化するタイプです。
   ただし、注意すべきは、瞬間接着剤が硬化した部分はABSの部分より硬く削るのが大変という事です。なので、いきなり分厚く盛ってしまうのでなく、手数は増えても、薄く少しずつ盛っては削り、をした方が楽でキレイな仕上がりになります。

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丸ヤスリを使って削り出します
最初は結構大変ですが
削り出しが進むと、バリバリ連続して削れる様になります

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凹んだ部分に、瞬間接着剤を垂らして、削り粉をふりかけ埋めます
直ちに硬化しますので、直ぐに削り出す事が出来ます

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良い感じに削り出す事が出来ました


■仕上げ

   曲面の削り出しが済んだら、角のエッジの部分を少し丸め、曲面部分は150番と240番の耐水ペーパーで磨いてヤスリの跡を消します。
   ライトカウルへの取り付けステーも、ABS板の積層で作りました。ただし、基部にも積層を行い、瞬間接着剤を垂らしてガッチリ固めました。気になる強度ですが、完全に硬化すると相当な固さになるので、ちょっとやそっとの事では壊れないと思います。しかし、正面から丸太がぶつかるとか、そういう過度な衝撃が加わった時は、取り付けステーがもげたりする事もあろうかと思いますが、これまでレースやってて、ライトカウルが割れる様な目には遭った事がないので、大丈夫だと思います。
   最後は、スプレーを吹いて仕上げましたが、カーボンルックのデカール貼ったら、猛烈に格好良くなりました。もし、希望する人がいたら、受注生産を請け負っても良いのですが、果たしてどうでしょうか?

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取り付けステーもABS製、ビス止めで取り付けます

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カーボンルックのデカールを貼ったら
なんか売り物っぽくなってきましたw

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ただの塗装より、こっちの方が格好良いですね
XR250やXR230でレース出てる人、いかがですか?