以前紹介したベルリン警察飯盒が、御徒町の中田商店でゴロゴロ売られていた頃、崩壊して間無しの東ドイツの軍装が大量に入って来ていて、はやりゴロゴロ売られていたのが、この東ドイツ軍の飯盒です。ベルリン警察飯盒と同じく、旧ドイツ軍の飯盒の系譜にありながら、あまりのチープな作りに、ベルリン警察飯盒より少し安い値段で売ってた様に記憶しています。


20160629_110657
あちこち塗装が剥げていますが
中身はキレイでしたので、デッドストック品の様です




■見た目と造り

   上にも書いた様に、東ドイツ軍飯盒も旧ドイツ軍のKochgeschirr31の後継に当たる飯盒です。詳しい歴史は分らないのですが、海外のサイトによると、当初、内務省の部隊で使われていたのは、ほぼ旧軍の飯盒だった様です。次にハンドルのストラップを通す穴の上の穴が廃止されて、次に下も廃止されて、この形になった様です。そして、掛子についてるハンドルも、初期型はアルミ板だったのですが、あとでワイヤータイプになったそうです。かつて中田商店で買ったのも、今回改めて調達した物も、ハンドルに革通しがなく掛子のハンドルはワイヤーのタイプですので、後期型という事でしょう。
   さて、物は御覧の通りなのですが、正直、出来が良くありません。東ドイツは当時の東側諸国の中では優秀で「東欧の日本」なんて言われてたそうですが、アルミの材質も悪そうだし、それ以上にハンドルの立て付けが悪くガタガタだったり、蓋がガタガタと、とりあえず形だけ飯盒にしました的な出来栄えです。この飯盒がいつ頃の製造なのか分りませんが、恐らく東ドイツ崩壊の少し前のデッドストックでしょうから、その頃には国だけでなく工業力も左前だった、という事なんでしょうか。
   しかし、物の出来栄えとしては、おそらくこの辺りがヨーロッパ標準なのかも知れません。それが事項以降で検証したいと思います。

20160629_110731
塗装が剥げているのは仕方ないとして
蓋のハンドルの塗装がいい加減になってるのは
なんだかなぁ〜〜と感じました

20160629_110755
東ドイツ軍飯盒は、蓋と掛子を連結する事が出来ません
別個に食器もしくは調理器具として使うのを想定しています

20160629_110819
飯盒本体には、500mlおきの目盛りがあります
釣り手のセンターは軽く凹みがある程度で
飯盒を棒に吊るしたら、簡単に左右にずれそうです


■ベルリン警察飯盒との比較

   似た様な形してる飯盒、という事でベルリン警察飯盒と比較してみます。といっても、東ドイツ軍の飯盒は、東ドイツが崩壊するまで生産されていたのに対して、ベルリン警察のはせいぜい1960年代くらいまでの製品です。どんな物でもそうですが、始めの頃は造りが良かったり材質が良かったりするもので、後になれば経費節減とかで悪くなって行く傾向にあります。それを踏まえた上で、厳しく比較していこうと思います。
   まず、材質ですが、これはどっちもどっちかな、という印象を持ちました。アルミニウムにも色々ランクがあるようですが、基本的には火に掛ける物ですし、穴が開かん程度の材質って事でしょう。仕上げも同じ様な感じで、蓋でスパムとか焼いたら、漏れなく焦げ付くだろうなー、という仕上げでした。
   問題は造りの方で、ベルリン警察飯盒の方は、蓋も掛子もあまりガタツキがなく、蓋のハンドルもカッチリしてるのですが、東ドイツ軍飯盒の方はもうガタガタです。まぁ、ドイツ人は飯盒でメシ炊いたりしないでしょうが、東ドイツ軍の飯盒だと、蓋の隙間から蒸気漏れまくりで、とんでもないメシが炊けそうです。とはいえ、ベルリン警察の飯盒は、そこそこピッタリしてる訳ですから、物作りに対する姿勢が、西と東では全然違ってたという事でしょう。同じドイツ人にして、主義思想の差がここまで影響するのか、という感じです。
   飯盒本体はそれでも大きな差はないのですが、顕著に違うのは掛子です。ベルリン警察の飯盒の掛子はハンドルに連結して使う様になっていますが、東ドイツ軍のは掛子にもハンドルが付いています。そしてそのハンドルの付け根に、蓋のハンドルの爪を入れれる様になっています。配食を受ける時は、蓋と掛子のハンドルを指で掴んで、バラけない様にします。どちらが使い勝手良いかは意見の分かれる所だと思います。掛子としての容量はベルリン警察の方が深いので多いです。
   上にも書いた様に、ハンドルの形状も異なります。ベルリン警察飯盒の方は、背嚢に縛着する為の革通しがあるのですが、東ドイツ軍飯盒では、革通しが省略されています。そこで、東ドイツ軍の野戦の軍装を色々調べてみたのですが、どうやら何回かの変遷を経て、第二次大戦当時とは野戦装具が大分変化してて、飯盒を背嚢などに縛着しなくなっていった様です。つまり、縛着しないから革通しは要らん、という事になったのでしょう。

20160629_111106
左が東ドイツ軍飯盒、右がベルリン警察飯盒
外見的な違いは、ハンドルの革通しの有無と釣り手の凹みの有無
大きさはどちらもほぼ同じです

20160629_111230
蓋についてるハンドルは、ベルリン警察の方がしっかりしています
東ドイツのは、うっかりすると取れそうですw

20160629_230237
蓋と掛子は連結出来ますが
各々のハンドルを手で押さえないといけません


20160630_124623
掛子は、ベルリン警察の方が深さがあります

20160629_111317
釣り手の耳金の違い
東ドイツ軍のは、旧軍のに近い形をしています



■日本製飯盒との比較

 これまた比較としてはハンデのある比較ですが、日本製のキャプテンスタッグ(ロゴスと同様、オオイ金属製)の飯盒と比較しました。材質、仕上げともに、比較にならないほど、日本製の方が上です。実はこれは今に始まった事ではなくて、シベリア抑留の時には、ロシア兵からだけでなくドイツ兵からも日本の飯盒は盗まれるほど、出来栄えが良かったそうです。
   もちろん、日本の飯盒には蓋にハンドルが付いてませんので、ガタガタする部分が少ないというのもあるのですが、やっぱり飯盒の肝は飯盒本体であると思います。それゆえに、材質が悪そうだったり、仕上げが良くないというのは、持ちの悪い感じがしても仕方ない事です。
   もっとも、それではベルリン警察飯盒は出来が良いのか、というと、東ドイツ軍のよりガタツキが大幅に少ない、というだけで、上にも書いた様に材質や仕上げにはそれほどの差がありません。ついでに言うと、イギリス軍のメスティンや、チェコ軍のメスキットも似たり寄ったです。つまり、日本の飯盒の出来栄えがダントツに良いだけの話しで、欧米の軍用のメスティンは、総じてそんなもんなのかもしれません。とはいえ、東独のは出来が酷いですが。

20160629_114151
出来栄えの違いは、見た目で歴然
日本製のは薄くて頑丈で、キレイです

20160629_114255
こういってはなんですが、東ドイツのは直ぐ凹みそうなんですよね
とはいえ、これはこれで、今や貴重品ですから
使わずにコレクションしますw