白米220gに押麦70gのいわゆる麦飯は、軍隊で兵食として用いられていた特異さから、かなり昔からつどつど食べていたのですが、その一方で玄米はこれまで口にする事がありませんでした。その理由は、実家でも出た事がない事と、いざ買おうと思ったら意外と割高である事。そして、炊きにくいだの美味くないだのといった評判の為でした。しかし、昨今の健康食ブームで玄米も見直されているとの事で、今回、玄米を炊いてみる事にしました。


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LIFEで売っていた、あきたこまちの玄米
2kgで853円は比較的安いです




■弱火→強火

   なにせ初めて玄米を炊くので、まずはネットで炊き方を調べてみました。そして分った事は、まず水に浸けねばならない事(夏場なら4時間、冬場なら8時間)、そして、最初は弱火で15分炊き、その後強火で10〜15分炊く、という事でした。水に長時間浸けねばならないのは、米を膨張させ、糠を柔らかくして割る為の様です。しかし、弱火の後に強火で炊く、というのには違和感を感じました。というのも、それは漏れなく底を焦がしてしまう炊き方だからです。
   ともあれ、この炊き方をやってみたのですが、特徴的だったのは、沸騰しても噴きこぼれがなく、蓋も持ち上がらず、グラグラと煮えてる感じが暫く続きました。強火に切り替えて5分ほどして、ようやく重湯状になってきたのですが、10分もしないウチに湯気が焦げ臭くなってきたので、底が焦げてると判断して火を止めました。その後、中身をかき混ぜて15分蒸らしました。食べてみた感じは、確かに殻っぽい食感がするので、自然によく噛むのですが、味は思っていた以上に悪くなく、むしろ麦飯よりも全然美味いと感じました。ただ、予想通り、底は焦げていました。
   ご飯の炊き方で、よく「弱火→強火」という風に説明しているのを見かけるのですが、これはやはり間違いではないかと思います。

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8時間水に浸した玄米
水を吸って膨らんでいます

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弱火で15分炊いたあと、強火へ
10分もしないウチに焦げ臭い匂いがして来ました

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強火に切り替えて2分くらいした状態
やっと重湯になりました

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炊きあがった時のカニ穴が
白米の時よりも明確に出来ています

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案の定、底を焦がしてしまいました


■強火→弱火

   やはり、あとで強火にするのは、どう考えても底を焦がしてしまう、という事で、今度はいつも通り、先に強火、そして弱火に切り替える方法でやってみる事にしました。ポイントは、白米の場合は、沸騰したら直ぐに弱火に切り替えますが、玄米の場合は沸騰してもそのまま強火で炊き続け、10分したら弱火に切り替える、という事です。米が糠に包まれている分、強火時間が長いという事です。
   実際にやってみたところ、スタートから沸騰後、7分目辺りまでは、激しく沸騰してても中の水は重湯状態にならず、その後、ようやく糠が割れるのか徐々に重湯状態になって煮こぼれする様になり、沸騰10分後に弱火に切り替えてからは、激しく湯気を吹きつつ噴きこぼれして、5分そこらで重湯が消える、という状態でした。
   炊きあがりは、弱火→強火方法よりもフックラした感じで、もちろん、底の焦げ付きもなし。「強火でスタートし、5分ほどで沸騰、そのまま強火で10分煮て、弱火に切り替えて5分で重湯が消える」どうやら、これが玄米を炊く時の基本的な方法の様です。
   この炊き方を踏まえた上で、台所のガスコンロやファイヤーボックスでも炊いてみましたが、火器によって火加減は異なるものの、同じ炊き方で同じ炊きあがりを再現する事が出来ました。

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玄米を洗う時は、水の中で掌を擦るようにします
浸けた水は捨てるので、この手のザルが便利です

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水加減は、米2合に対して、水600ml
白米の時より少し多めです

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沸騰後、5分経過した状態
まだ重湯になってません

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重湯化すると、噴きこぼれがそれなり出て来ます

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炊きあがりは、やはりカニ穴がくっきりです
かき混ぜて蓋をして、15分蒸らします

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弱火が後回しだと、底が焦げません



■ビックリ炊き

   玄米を炊くためには、玄米を長時間水に浸けておく必要があるのですが、浸水の必要の無い炊き方に「ビックリ炊き」というのがあります。方法は、まず米を洗って、規定の水加減をして、上記の通り、強火で炊いて、弱火に切り替え、重湯が消えた辺りで米の0.8〜1.2倍の冷水を入れてかき混ぜ、そのまま弱火で10〜15分炊く、というやり方で、途中で冷水をいれてビックリさせる事から、ビックリ炊きという様です。
   実際やってみたところ、強火から弱火に移行しても水は重湯にならず、そのまま蒸発してなくなった感じです。そこに水を入れてかき回し弱火で炊き続けたのですが、その頃になってようやく水が重湯化して噴きこぼれが出る様になり、それでも10分そこらではまだブクブク言っているので、結局15分弱火に掛け続けました。さっするに、浸水してないので、糠も米も水を吸っておらず、そのためか糠が割れず米も炊き切れてない感じでした。ところがビックリ水を入れてから、急に重湯化して噴きこぼれし始めました。結果、15分後、良い感じに炊けました。
   ビックリ炊きでは、ビックリ水を入れてから、さらに15分炊くという事で、スタートから終了まで、トータルで35分かかりました。何時間も水に浸けておく手間がなく、炊きたい時にすぐ炊けるメリットがありますが、白米の場合の3倍の時間が掛かっています。

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ささっと水を注いで、手早くかき混ぜます

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普通の炊いた時よりも、やや柔らかい感じです
しかし、この方法でも美味しく炊けます


■玄米飯に合うオカズ

   玄米というのは、白米よりは味のあるもので、かつ殻たる糠もある事から、あまり味の濃いオカズは合わない気がします。特に洋風のオカズは、玄米の美味さを引き出せない様に感じます。その玄米に合うオカズとは、日本伝統の一汁一菜、即ち、みそ汁に漬物であると自分は感じました。
   一汁一菜というと、貧相なオカズの代名詞みたいなところがありますが、ところがどうして、これは美味いのです。それこそ、みそ汁と沢庵だけで、ご飯2合行けてしまう勢いです。「昔の人は貧乏で、オカズはほとんど食べずに飯ばっかり食ってた」なんて話しもあるのですが、実際に一汁一菜をやってみると、むしろ、好き好んでこういうのを食べてたんじゃないか、と思います。
   栄養学的には、玄米は完全食と言われるくらい、滋養豊かであると言われています。その栄養素は、糠の部分に多いそうで、白米は精米して栄養豊富な糠を取ってしまうので、白飯ばっか食べてると脚気になったり、という話しがある訳です。(まぁ、白ご飯も、直火で炊いたご飯は、めっちゃ美味いのですが)

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玄米ご飯にたくあん。これが猛烈に美味い!

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みそ汁と福神漬け
流石にこれだけでは何なので、レタス付けました

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レトルトの中華丼ぶっかけました
これでも美味いですが、やっぱり漬物の方が合います


■掛子にイン

■玄米のデメリット
   玄米が見直されるにつれ、玄米のデメリットも声高にアピールする向きもあります。自分は栄養学には詳しくないので、ここでは論じませんが、一つ確実に感じたのは、玄米飯を3日立て続けに食べたら、お通じがとても良くなりました。玄米の効能で一番に上げられるのは、デトックス効果ですが、それは確かにある様です。
   玄米を巡るメリット・デメリット論争は昔からあった様で、先の大戦中も、東條英機首相が玄米食を進めようとするのに対して、陸軍の栄養学者の川島四郎大佐が反対した話しなどが伝わっています。もっとも、この話しは玄米の栄養面での可不可論ではなく、白米に対して玄米の方が炊く手間とコストが掛かり、国家危急の決戦下には似つかわしくない、といった部分での話しだった様です。確かに、玄米は炊くのに手間ひまが掛かります。しかし、その手間ひまの部分を度外視できるのであれば、栄養的なメリットは軍の栄養学者らも認めざるを得なかった様です。
   決戦下でない現在において、玄米の大きなデメリットは、白米みたいにスーパーに売っておらず、ネットで注文するくらいしか、まとまった量を買えないという事だと自分は感じています。しかも、30kgとか大量で、一人暮らしではなかなか消費し切れない。その上、害虫は玄米の方がわき易く、保管にも気を使う訳です。もっとも、対策として、辛苦パックにして発売するなどの工夫もなされる様になりました。スーパーで売っている白米よりは、若干高めではありますが、健康食品として考えれば、妥当な値段とも言えます。
   玄米の食感や味がどうしてもダメ、という人もいるのですが、自分は麦飯より遥かに美味いと感じます。その決定的違いは冷めた時で、玄米飯は冷めても美味い。白米の場合もそうですが、冷めても美味い飯は、本当に美味い飯です。そして、別に圧力釜とか使わなくても、飯盒でも十分美味い玄米飯が炊けるのを発見したのが、今回の成果でした。

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余談ですが、飯盒の掛子はすり切り1杯で2合という事ですが
重さは290gしかありません
今、米2合は300gとされているのですが
飯盒が開発された頃と今では、どうも米の嵩と重さに違いがあるようです