自分は18歳で上京して以来、飯盒を使って来たのですが、たしか3代目の飯盒が自衛隊の飯盒でした。飯ごう2型が採用されてから、1型と称される様になったこの飯盒ですが、当時はまだこれが制式でした。実はしばらく使っていたのですが、あまり印象に乗ってなくて、知らない間に捨てたかしてなくなっていました。しかし、自衛隊とはいえ、一応は軍用品ですし、もともと仮想軍隊なんてやってた自分が、使わなくなったからといって、捨ててしまうというのも、今から思えば変な話しです。今回、たまたま安く手に入れる事が出来ましたので、当時、どんな想いで使っていたかを振り返ってみたいと思います。
■まず見た目
以前、自分が手に入れた物は、値段も安かった代わり(確か1,000円しなかったと思う)、塗装が極めて雑で、所によっては泡立った跡があったりして、どうみても手作業で、しかも適当にスプレーしたとしか思えない様な出来栄えでした。もしかしたら、再塗装品だったのかもしれませんが、とにかく雑な印象が強かったです。今回手に入れたものは、それに比べたら大分マシです。また、デッドストックだったのか、使用した形跡があまりなく、飯盒の中もほとんどキズらしいキズが見当たりませんでした。しかし、底がボコってました。おそらく保管時に何かの拍子に凹んだのか、あるいは払い下げで廃棄物化する為にそうしたのか(米軍の放出軍装品にはよくある)、せっかくキレイな状態なのに、残念な事です。大抵、焦げる時はこうした凹んだ所が焦げて、かつ焦げがなかなか落ちないものです。
飯盒と蓋には、いわゆるQマークが入っていましたが、掛子には入ってませんでした。以前持っていた物は、掛子にもQマークが入ってました。もともと入ってなかったのか、適当に民需品で員数を合わせたのか、分りません。何にしても、自衛隊の1型飯盒は、塗装が薄くてチャチな印象を受けます。民需品の飯盒と比較すると、ドイツのベルリン警察の飯盒と東ドイツ軍の飯盒の差くらいの、出来の悪さを感じます。
今回届いたのは、19961年納入品らしいです
おそらくデッドストックでしょう
中は綺麗なのですが、底がボコってるのが残念です
出品時の写真では、ここが隠れる様な撮り方されてました
掛子にはQマークなし
まぁ、欠品よりはマシですがw
■スライド式釣り手
飯盒1型の特徴であるスライド式の釣り手は、元々は旧日本陸軍の将校用飯盒の新型の釣り手を参考にしたもので、スライドさせる事で釣り手を飯盒に沿わせ、かつ蓋をロックして、背嚢に収納する際に釣り手が邪魔にならない様にする工夫です。日本の兵用の飯盒のある意味、発展形であると思ういますし、飯盒文化華やかなりし頃には、民需品の飯盒でもこの手のスライド式の釣り手を採用したものがいくつかありました。しかし、飯盒文化の衰退とともに、スライド式釣り手も姿を消して行きました。
ところで、かつて自分がこの飯盒を使っていた時、この釣り手をさほど便利に感じた事がありませんでした。というのも、はじめのウチはスライドしていたのですが、使っては洗いを繰り返して行くうちに、スライド部分が錆びてきてしまい、ゴジゴジになって動かなくなってしまったからです。となると、ただの釣り手な訳で、しかもスライド部分が全部錆びてる訳で、見た目にも汚らしく、だったらスライドしない普通の釣り手でも良いな、と感じていました。結局、最終的には捨ててしまったのですが、最後は釣り手が錆び切ってスライドの部分が折れてしまい、それで捨てた様な記憶があります。
アイデアとしては、とても優れていると思うのですが、塗装が悪いのか材質が悪いのか、とにかく錆びてしまったのではスライドさせようがありません。この釣り手が錆びない材質の金属であったら、また違った評価を下せたかもしれません。
こんな感じでスライドさせ、蓋をロックする
この機構自体は、とても優れていると思います
しかし、動かしているウチに塗装が剥げて
鉄がむき出しになって、錆びてしまうとアウトです
錆びたら釣り手を交換してたのかも?
■兵式飯盒との比較
飯盒1型は、旧陸軍のロ号飯盒を元にして、というか、釣り手以外はほぼコピーして作られています。同じく、ロ号飯盒のコピーである戦後の民需品の兵式飯盒とも、ほぼ同じです。伸ばした時の釣り手の長さも、民需品の兵式飯盒と同じでした。違いがあるとしたら、釣り手の太さで、飯盒1型は太さ約3mmほど、それに対して兵式飯盒は4mmほどです。飯盒1型は、スライド式という事もあって、あまり太く出来ない事情があったのでしょうが、その前に旧軍の飯盒の釣り手も、現代のものより若干細めです。それ故に、結構グニャってるのも多いのですが、その辺りを戦後、改良したのが今の兵式飯盒の様です。個人的な感想としては、上記の様にスライド釣り手が錆びて動かなくなるくらいであるなら、普通のスライドしない釣り手の方が、見栄えの上でも本来の目的の上でも、使い手があると感じています。恐らく、その辺りが、一応は軍用品でありながら、非常に印象の薄い記憶しかこの飯盒が残さなかった理由だと思います。
■飯盒2型との比較
自衛隊では飯盒はほぼ食器の役割しかない、という事で、より食器色の強い戦闘飯盒2型が採用された訳ですが、自分個人の意見としては、だったら別に空豆型してなくても良かったろう?と思います。「飯を炊く道具」として比較した場合、1型の方がより適しているのは明らかで、例えば、パックご飯や飯缶を温めるとか、インスタントラーメンを煮るとか、そうした炊事には2型は向かないと感じています。自衛隊の方で、各個炊爨はもはやあまり想定していない、という事なのでしょう。しかし、こうやって1型と2型を並べてみた時、改めて2型の疑問点が浮かび上がる事となりました。そのもっともたる部分が釣り手で、飯盒1型の場合、収納時に釣り手が邪魔にならない様にするのと、蓋をロックする為にスライド式にした、という理由が明確に分ります。ところが飯盒2型の場合、飯盒本体に対して釣り手が無駄に長く、スライドさせても蓋をロックする事も出来なければ、飯盒本体から釣り手が突き出て収納にも難がある。旧陸軍の将校用飯盒の様に、短めの釣り手を付けるのが正解だと思うのですが、この無駄に長い釣り手の納得いく理由を、まだ聞いた事がありません。
ソロ用クッカーとしてか、飯盒2型はやたら人気があって、スウェーデン軍飯盒と同じく高価で売られているのですが、純粋にご飯を炊く道具としては、飯盒1型の方が優れているというのが、自分の判断です。
飯盒2型は、明らかに収納性が悪そう
おそらく、釣り手外して収納してるんじゃないでしょうか
結構、釣り手なくす人多いみたいですし
スライド部分の違い
1型は縮めた時にロックが掛かるのに対して
2型は伸ばした時にロックが掛かる仕組み
そんなこんなで、20年ぶりくらいに再会した飯盒1型ですが、やはり今回も普通の飯盒でいいや、という気分になりました。昔は、この手の飯盒も売っていたのに、結局、スライドしない古いタイプの飯盒しか残らなかったのは、自分と同じ様な感想をもつ人がそれなりにいた、という事なのかもしれません。そして、改良改善を施す前に、飯盒文化が衰退してしまい、辛うじて大戦中のタイプの飯盒が生き残ってる、という事なのかもしれません。
しかし、いくら兵式飯盒が冷蔵庫の中で納まりが良い、といっても、やはり釣り手が余るというのは確かな事なので、是非とも錆びない金属でスライド式釣り手を作って貰いたいものです。
コメント
コメント一覧
御存知かとは思いますが、自衛隊において飯盒炊爨をすることは殆どありません。食事を受領するためのメスキットだと思って頂ければ結構です。大量に調達するので、単価は低く必然的に薄く貧相になります。
塗装が雑なのは年に一度の物品管理検査の際に隊員自らがスプレーで塗るためです。ボロボロのまま検査を受けると手入れ不十分と怒られます。
底がボコボコなのは背嚢に入れて携行する際、不用意に背嚢を地面に下ろすと収納位置の関係で飯盒底面が地面に打ち付けられるからです。掛け子がスライド式なのは背嚢に上手く収納するための機能です。
まぁ、大体この辺りで、自衛隊飯盒のアレな理由が見えてきますよね^^
ともあれ、ロ号飯盒の進化形である1型飯盒が、結局、飯盒文化の花形になりえなかったのは、
やっぱり収納性重視のスライド釣り手が、使用感、堅牢性において、
旧型の釣り手よりよろしくなかった、という点ではなかろうかと考えています。
民需用はアルミの厚みが違うのかも知れませんね。
ご飯が焦げ付く原因は、火に掛けてる時間が長過ぎた事なんですが(炊き込みご飯の場合は除くw)
飯盒のモノによっても違いがあるかも??
逆に焦げ易いってのもありますしねw
見た目とか印象の違いかもしれませんが、自分的には1型(2型もですが)よりも、
キャプテンスタッグとかロゴスの飯盒の方がしっかりしてる様に見えますねぇ。
なんたって、今使ってるのは10年選手ですからww
私もソロキャン好きな影響で家でも火で炊飯する事多いんですけど、自衛隊の飯盒は高くて......
自衛隊の規模だと例のキッチンカーで調理しないと間に合わないでしょうね、戦闘時にはパック飯(缶は廃止だそうで)をキッチンカーでボイルし、普段は災害訓練等も兼ねて基本米から炊飯するって感じでしょうか。いずれにしても陸自がキッチンカーをロストして飯盒で炊飯する状況=敗戦ですから本来の用途で使われない事を祈ってます(苦笑)
自衛隊に限らず、今日日の軍隊はどこでもフィールドキッチン的な装備はありますね。
まぁ、それはそれとして、だったらもっと食器に徹した物にしたら良さそうなのに、
そうしなかった所に、思い切りの悪さを感じないでもないです。(あ、2型の話しですw)
さて話が変わりますが、私の部屋はLPガスゆえ基本料が高く真冬以外はMSRのXGKに寸胴でお湯を沸かして使ってまして、しかし夜中の時あの轟音が問題でその解決法を探してこの辺のサイトうろついてます、やはり灯油を安定燃焼させるにはローラー式バーナーでないとダメなようですねー、サイレント式のウィスパーライトも灯油OKなのですがゴトクが軟く15kg以上の重みでは耐えられそうにないので....
でしたら、自衛隊の飯盒の記事を御覧になるより、
こちらを御覧になるのが近道でしたね^^
たしか、XGKにも使えるはずです。
http://blog.livedoor.jp/tanisi_corp/archives/51820062.html