兵式飯盒は、2合、3合、4合の炊飯が可能なのですが、食べ盛りの18歳の頃でさえ、1食で2合は食べ切れず、残して冷や飯を作る、という感じでした。その後、1合炊きに挑戦するのですが、何度やっても芯飯になってしまい、結果として、「兵式飯盒で1合炊きは不可能。2合炊いて、残り半分の冷や飯をどうするか考える」という線に落ち着きました。同じ様に感じる人も他にいる様で、それが常識となってました。
   しかし、昔の戦記を読んでいると、敗走中など、ロクに補給が無かった時は、2〜4合丸々炊くなんて事はなかった様ですし、何らか方法があるのではないか、と前から思っていました。


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兵式飯盒で米1合というと、かなり少ない感じに見えます




■炊き方の問題

 以前、飯盒で1合炊きに挑戦してた頃の飯の炊き方は、いわゆる弱火式で、とにかく、焦げない様に、噴かない様に、弱火で、もし噴きそうなら蓋開けて防止する、というやり方でした。最初に読んだ野宿ライダーの人の本に書いてあった事を、さらに自分なりに解釈を加えて、20年近く墨守してきたのですが、このやり方では、条件が悪ければ立ちどころに芯飯、半煮え飯、パサ飯になる事が、最近わかりました。
   火力が弱いと、半煮え飯系になってしまうのは、火力が弱いため、米の芯まで熱が回り切る前に水がなくなってしまい、見た目には炊けた様に見えても、実は米の中は炊けてない状態になるからです。この傾向は、アルコール系の熱源を使った場合に顕著で、特に気温の低い季節の屋外では、芯飯確定になります。飯盒で1合炊きした時は、芯飯なだけでなく、固い飯になってしまい、どうにも処置無しでした。2合なら食える飯になるのに、1合なら食えない飯。大いなる謎でした。
   最近になって、この弱火式の炊き方が間違いである事に気が付きました。「強火→沸騰→弱火→重湯無→消火→蒸らし」この手順の強火式なら、まずまず間違いない事。ストーブによって沸騰や重湯無までの時間は異なるものの、大体3〜5分の間で勝負すれば、美味しいご飯が炊ける事が分って来ました。そこで今回、この強火式で兵式飯盒の1合炊きに挑戦したのです。

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水は2合の水量線の半分くらいです
硬めに仕上がるので、若干多くても可です



■予想外に早い炊き上がり

 米研ぎと浸水はいつも通りに行います。むしろ浸水をしっかりしておかないと、芯飯の確率がより高くなります。浸水が終わったあと、おもむろに強火のストーブに掛けます。そのまま沸騰するまで放置します。どんな場合でもそうですが、どんな強火に掛けていても、沸騰するまでは焦げ付いたりはしないものです。
   ところが、予想に反して、えらく早く沸騰しました。沸騰したら、直ちに弱火に変えます。しかし、弱火にしてもまだ強いのか、盛んに蓋を持ち上げ、湯気を盛大に噴き出します。水分が豊富に残っている時は、湯気も吹き零れもあるので、暫く様子を見てました、それらが収まって直ぐに焦げた匂いがして来ましたので、蓋を取って重湯が消えているのを確認して、火から下ろしました。
   きっちり15分蒸らしてから、中身を確かめてみると、カニの穴も出来て美味そうに炊けています。表面を食べてみると、芯など全然なくフックラ炊けていてます。底の方も焦げもなく、美味く炊けていました。どうやら、芯飯になるのは弱火式の間違った炊き方が原因だった様です。

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強火でガンガン
あっという間に沸騰します

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弱火に切り替えてからも、暫くは蓋が持ち上がります

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蓋が持ち上がらなくなっても、湯気が盛大です
重湯がなくなるタイミングを見逃すと焦げます

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予想に反して、美味しく炊けました
ただし、ちょっと硬めかな


■1合炊きを実測

 あまりにも炊きあがりが早いので、ストップウォッチでタイムを計ったところ、意外な結果が分りました。強火で沸騰するまでが、約2分、弱火で重湯が無くなるまでが約3.5分強。これは2合炊きの時の3分の2くらいの時間です。恐らくこれは、米と水の分量が少ないのに火力は2合炊き4合炊きと同じ火力で炊くので、早く沸騰して早く水分が消えるからだと思います。その分、湯気の噴く量が多い訳です。しかし、分量が少ない分、背の高い飯盒を越えて煮汁が溢れ出す事はありません。
   気になる焦げ付きも、弱火にするタイミング、火から下ろすタイミングを間違えなければ、焦げ付く事はなさそうです。ただし、上記に挙げた理由から、2合炊きの時より火力が強くなる傾向にあるので、いつまでも火に掛け続けず、重湯が消えたらさっと火から下ろす事が肝心です。また、水の量は1合分よりやや多めのでないと、固い仕上がりになるので注意が必要です。
   上記の点を注意すれば、兵式飯盒で1合炊きは可能という事が分りました。ただし、1合だけたくのはコスト的にはやや無駄が多いですし、また食味も2合以上炊いた方が美味しいので、その辺りは必要に応じて行うのが可と思います。

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異様に早いタイムを示しています
素早い火加減が要求されます
(ボケッとしてたら焦げます)

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盛大に噴いてくるので、箸で蓋を押さえています

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底に焦げも出来ず、予想外にグッドですw