飯盒といえば、空豆形のいわゆる兵式飯盒(日本陸軍のロ号飯盒)をイメージするのですが、あれは兵式というだけあって、下士官兵に支給されていた飯盒で、将校さんは違う形のを使ってました(ちなみに将校は被服から装備にいたるまで、全部自前です)。まぁ、どこの国の軍隊も、兵隊さんと将校は装備が違ってたり、グレードが違ってたりするもんですが、飯盒もその例に漏れなかった、という訳です。
■概要
飯盒というのは、もともとは食器からスタートしてまして、それこそ下士官兵用の飯盒も当初はただの弁当箱からスタートしたのですが、将校用ともなるとその度合いはもっとで、形からして弁当箱そのものです。実はその昔、近所の商店街の金物屋で売れ残ってた将校用飯盒を買った時、そこの店主が「こないだ、女の子が弁当箱として買ってった」と言っていたのですが(ほんとかな?)、まぁ、この形をみて飯盒と思えと思う方がちと無理があります。上記の写真の様に、旧型の将校用飯盒は、弁当箱そのものだったのですが、今回紹介する新型では、一応は火に掛けて炊爨できる様に改良されたタイプです。まぁ、やるやらんは別にして、出来んより出来た方が良いに違いない、という発想だと思います。
基本的な構成は兵式飯盒と同じで、掛子(蓋)と中子(中蓋)と本体で構成されています。本体に飯、中子にオカズ、という風に使う為でしょう。兵式飯盒との決定的な違いは、その形もさる事ながら、容量です。兵式飯盒は最大で4合炊けましたが、この将校用飯盒は2合です。主食の分量は、将校も下士官兵も同じ1食2合だったと思うのですが、兵隊さんは2人一組で飯と汁を作る組炊爨が基本だったのに対して、将校さんはそんな縛りがなかったという事でしょう。
この飯盒のユニークな点は、吊り金が蓋のロックの代わりをしてるという事です。まぁ、火に掛ける時は吊り金を伸ばさなければならいので、炊飯中に蓋を押さえるためでなくて、持ち運び中に蓋が外れたりしない様にするためと、吊り金が邪魔にならない様にする為でしょう。兵式飯盒は背嚢の背中に縛着するので吊り金は別にどうでも良かったのでしょうが、この飯盒は背嚢などのバッグ類にいれて運んだのではないでしょうか。となれば、吊り金だの把っ手だのは、邪魔にならない様になってるに越した事ありません。
■ご飯の炊き方
先ほど、この飯盒の飯の炊ける量は2合と言った訳ですが、ではその2合をどうやって測るのか。兵式飯盒では中子に擦り切り一杯が2合で掛子だと3合だったのですが、将校飯盒で試してみたら、中子すり切り一杯は約290ml、2合には少々足りません。そこで掛子で試してみると、丁度2合でした。蓋類が計量カップの代わりになっているとは思ったのですが、中子はオカズ入れとしての役割しかないようです(あるいは、ダイエットモード用の分量か?)この飯盒には水量線が一つだけありますが、一つしかないのは、2合炊きのみの前提であって、1合炊きは想定してない、という事だろうと思います。まぁ、やってやれない事はないでしょうが、浅く広くになるのでやり難そうです。その意味では、同じ2合でも兵式飯盒の方が全然炊き易いイメージです。飯を炊くにあたっては、水入れて米を研ぐ訳ですが、底が浅いだけにそろそろと洗わねばならず、ちょっと面倒くさかったです。
■使い勝手
さて、早速飯を炊いてみたのですが、火力自在なガスバーナーであれば、上手に炊けます。ただし、火力の強いガソリンストーブや、火力が一定のアルコールストーブだと、鍋の高さが低く吃水も浅いので吹きこぼれが凄いかもしれません。ガスだとその点は上手い具合に調整できます。何にしても、ポータブルストーブを使う分には良いと思ったのですが、もしもこれが焚き火などの直火だと、少々やり難いのではないか、と思いました。というのは、吊り金が短く、必然的につり下げる道具なり機具も低くせざるを得ず、かつ横長の箱ですので、兵式飯盒に比べると見るからに炊き難そうです。その点は、今の自衛隊の戦闘飯盒II型に相通ずるものがあります(戦闘飯盒II型も食器としての用途がメインです)
食器としての使い勝手は、そもそもそれがメインの作りですから、使い易いです。それこそ、箸でご飯食べるのも苦になりません。実は角形だけに冷蔵庫の中でも納まりがよく、日常的には飯炊く用ではなく、おかず入れとく用に使う事が多いです。
この将校用飯盒も、結構長い間、兵式飯盒同様に登山具店などで売られてた様ですが、今では完全に廃れてしまいました。思うに、兵式飯盒はライスクッカーとして極めて巧妙かつ精巧に作ってありますが、将校用飯盒は「やれば出来る」程度の炊飯能力ですし、食器兼クッカーとしてなら最近はもっと使い勝手が良い物が沢山ありますので、廃れるのも仕方ないと思います。
兵式飯盒との比較
大きさは2/3ほどですが、吊り金を伸ばした時の長さがかなり短いです
直火での炊爨がやり難そうです
ポータブルストーブなら問題ありませんが
横に長いので、熱伝導上、若干不利です
とはいえ、そこそこしっかり炊けます
底が浅いだけに、食器としては使い勝手がいいです
もっとも、2合も飯食えませんww
コメント
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ここで紹介されている釣り手付きの角形飯盒、私も持っていますが島田軽金属(ポスト印)製ですね。
最近、同品の未使用品を入手したんですが、付属していたタグの説明書きによると、この製品は2合ではなく1.5合炊きなんだそうです。私も2合だと思い込んでいまので驚きました。中子の容量も同様のようです。記事の中の約290mlというのは間違っていないわけです。
ただ、その原型になったはずの戦時中の将校用飯盒の場合、少なくとも私が所有している物の中子はもっと深いです。ざっと測ってみると外観の厚みが島田で約25mmなのに対し将校用が約30mmでした。これなら2合くらいの容量がありそうです。
ただ、本体の水量線の高さは同じくらいです。果たして2合用なのか??
まだ中子の容量や水量線までの容量を計測してませんが、島田と将校用、微妙に異なっていることがわかりました。
これ、島田軽金属なのですね、道理でどこの刻印か分りませんでした。島田のは持ってないもんで(^^;;
ロ号飯盒の方でもそうなんですが、戦後のは谷口金属系とオオイ金属系では、掛子や蓋の容量が違うんですよね。
メーカーによってオリジナル性を発揮したのか分りませんが、
戦時中に生産されたのと、微妙に異なってるのは想像できます。
この箱形の飯盒、空豆形の兵式飯盒より容量も少ないし、箱形だけにザックへのパッキングもし易いので、
単独登山やってた人には重宝がられてたんじゃないかなー、と想像してます。
その名は「雷鳥飯盒」!
詳しくは御検索ください。
https://www.youtube.com/watch?v=WUCoF8jpiU8
これですね、見ましたw
将校飯盒で飯炊いた事ありますが、ぶっちゃけた話し、炊きにくかった印象です。
まぁ、基本は弁当箱で、将校さんがあれで飯炊く事はまずまず無かったと思うんですよね。
でも、いざという時は炊ける様にって、旧型から進化させたんでしょうね。
将校飯盒(の戦後版)も今でもオクで見かけますが、アホみたいに高くなってますよね。
昔、近所の金物屋で売れ残りのが500円だったのが懐かしいw