前回の飯炊き講座の最後に、「野外では通り一辺倒ではない」と締めくくったのですが、まさにその通りで、常温無風の室内では上手く行っても、風が吹いてたり気温が低かったり、場合によっては気圧までもが違ってたりすると、なかなか上手く行かないものです。基本的なメシの炊き方は、前回述べた通りなのですが、それを原則として状況に応じて加熱時間等を工夫する必要がある訳です。そして、そのコツは出来る限りメシを炊く事でしか習得出来ません。
   という訳で、今回は雪降っても不思議でない滅茶寒い夜を選んで、携帯燃料を使ってベランダ炊飯をやってみました。


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厳冬期に強いのはガソリンストーブですが
今回はあえてアルコール系の携帯燃料でやりました
ただし、ガスよりは安定した火力を提供してくれるはずです




■失敗例

   屋外でかつ激烈に寒く、しかもケイネンを使うという事で、今回は先日作製した兵式飯盒用の風防を使う事にしました。アルコールストーブは微風でも影響を受けて火力が落ちますし、風防を利用する事で風を除けるだけでなく、風防内で熱効率を高める事も期待出来るからです。今回は兵式飯盒で、2合の米を炊く事としました。
   風防の中に携帯燃料をセットして、マッチで点火。火が大きくなってから、飯盒をセットしました。室内であれば、5分もしないウチに沸騰し始めるのですが、気温が低いせいか10分経っても湯気が出てきませんでした。まぁ、沸騰してくれない事には蓋を開けて中身を確認しても仕方ないので、そのまま放置しました。(滅茶寒くて待ってるのがツラかったです)
   15分ほどして、ようやく沸騰し始めたので、蓋を取って中身を見てみましたが、湯気が猛烈で中身が見えません。気温が低いので、湯気の出方も半端ない訳です。しかし中身が見えない事には、たにし式炊飯では状態が読めないという事なので、ちょっと戸惑いました。
   そのまま炊き続け、時々蓋を開けて中身を確認するのですが、その度に湯気がスゴくて良く分りません。そして、室内炊きの時の様に若干水が残った時点で火から下ろしました。普通はそのまま蒸らしに入るのですが、こんだけ寒いと蒸らす前に冷えてしまう事も考えられたので、部屋に持ち込んで蒸らしました。(流石に2合の米を無駄には出来なかったので)
   さて、蒸らしを終えて中身を見てみたのですが、何だか全体的に半煮えっぽい出来映え。取りあえず上の方は食えるレベルだったのですが、底の方はベシャベシャで明らかに半煮え以下で、米がまったく膨らんでない状態でした。感じとしては、火力が強すぎて米が完全に炊ける前に水がなくなってゴッチン飯になる前に火から下ろした、といった感じです。
   ともあれ、炊飯器に移して一晩置いておいたら、何とか食える飯になりましたが、決して美味い出来映えではありませんでした。

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アルコール系の燃料だからと言って馬鹿にしてはいけません
ガスと違って、気温が低くてもしっかり燃えます
しかも風防で覆うと意外に強いです

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こんな感じでメラメラ燃えています
飯炊きの場合、あまりに火力が強すぎても
飯が炊ける前に水分が飛んでしまってゴワ飯になるのでダメです

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冬場の場合、湯気が物凄くて飯盒の中身が確認しずらいです
瞬時に強く息を吹きかけて、湯気を飛ばして中を確認
素早く蓋を閉じます

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室内で炊く時は、蒸らし様にこの程度水気を残しますが、、
屋外の場合は、この限りではありません

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ぱっと見た目には、ちゃんと炊けた様に見えましたが
底の方は十分炊けてなくて
水気の中に半煮えの米が泳いでました



■成功例

   昨日の失敗は、放っておき過ぎて底を焦がすのを恐れるあまり、早めに火から降ろした事に原因があるとみて、今度はもうちょっと気合い入れてみる事にしました。ところが、寒さは昨日以上で、雪は降らなかったものの、降ってもおかしくない寒さで、素足でサンダルでは足首から先がガチガチに凍えるほどでした。
   昨日使った兵式飯盒はシチュー入れるのに使ってしまったので(こんな感じで、我が家では飯盒を日常的に使っている)、今回はイタリア軍の飯盒を使い3合の米を炊く事にしました。炊き方は昨日と同様に風防とケイネンを使用して炊きます。
   ところが、今日は昨日よりも寒いせいか、20分経っても沸騰する気配がありません。察するに、兵式飯盒よりもイタリア軍飯盒は細身で、風防との隙間から熱が逃げているんじゃないかと思いました。まぁ、沸騰してくれない事には仕方ないので、そのまま放置しましたが、22分過ぎた辺りでようやく炊いてますよ的な雰囲気になりました。
   さらに炊き続ける事10分。時々蓋を取りながら中身を確認しましたが、昨日以上に湯気がスゴい。しかしひるむ事なく息を吹き掛け、うっすら見える飯盒の中身を確かめつつ、また蓋をして炊き続ける、というのを続けました。そして、表面の水が無くなったところで、それ以上炊き続けたら底が焦げると判断して火から下ろしました。
   今回も蒸らしは部屋の中でやりましたが、水はほとんど残ってないとみて、飯盒を逆さにして蒸らしました。いい感じに蒸らしてから、中身を見てみたのですが、表面がほんの少し芯が残っていたものの、あとは上手い具合に炊けていました。

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二日目もケイネンで
使いさしのケイネンは、表面が固まってるので
崩してから火を付けた方が、早く燃え上がります

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昨日と同様に飯盒の中で元気に燃えてましたが
細身の飯盒のため、隙間が多くて熱が逃げやすいのか
沸騰するまで時間がか掛かりました

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あまり蓋を開けまくらず、いい感じに水気が飛んだところで火から下ろしました
水気が残っていると、飯盒を逆さにすると
蓋から水気が溢れますが、その時は火から下ろすのが早すぎた時です

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今度は成功!いい感じに炊けました
ただ、炊きたての時は美味しかったのですが
次の日の昼には少し味が落ちてました


   今回は似た様な気温の日に、2日立て続けに炊いたので感覚が判って失敗をリカバーできた訳ですが、実際には毎日天候は変化する訳で、その変化に上手に対応していく必要があります。その意味では、ガソリンストーブだから火力が強いとか、ガスストーブだから弱火ができるとか、アルストやコケネンは火力調整が出来ないといった、固定観念に捕われず、状況に合わせて勘を働かせることが大事です。

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上手に炊けたご飯ってのは美味しいもんです
毎日飯盒でご飯炊いてたら、結構上手になりますよw