飯盒に対する愛を熱く語ったのは、今から７年も前の事ですが、この度、陸上自衛隊の飯ごう２型を購入しました。といっても、官品ではなくレプリカですが。いわゆるPX物なのかもしれませんが、仕様書がアップされているので作ろうと思ったら作れちゃうんでしょうね。実際問題として、官品はなかなか流出しない様ですし、売ってても１万円近かったりしますから、実用品として買うにはちょっと手が出ない。それがこれまで手を出さなかった理由でもあります。もっとも、レプリカでも送料入れて4,500円強しますので、飯盒としては高い部類です。（キャプテンスタッグの兵式飯盒など、1,000円くらいで買えます）
レプリカの飯ごう２型
官品の場合は、蓋、掛子、本体の左側に桜Ｑマークの刻印があります
まぁ、レプリカといっても、官品同様の様です
■まず見た目
飯ごう２型は、それまで自衛隊で使われてきた４合炊きの飯盒（いわゆる兵式飯盒のツルがスライド式になったもの）よりも、より食器としての位置づけを強めた飯盒で、サイズも兵式飯盒の３分の２。炊ける飯の量も２合です。兵式飯盒の半分しか炊けないのに、サイズが３分の２なのは、掛子が兵式飯盒よりも大きく、蓋のハンドルと連結して食器として使える様にしてあるからです（この辺りは、ドイツ軍の飯盒を参考にしたらしい）。兵式飯盒では、蓋と掛子はそれぞれ３合、２合の軽量カップの代わりをしていましたが、２型飯盒ではその様な配慮はなさそうです。一応、掛子の下の段のほんのちょっと多いくらいが２合の様です。まぁ、実際に自衛隊でもこれで飯を炊く様な事はないらしいので、米の量が量れるかどうかはあまり問題視されなかったのでしょう。
兵式飯盒との比較
高さは３分の２ほどになっています
２型飯盒の構成
旧ドイツ軍の飯盒にかなり影響を受けています
■飯の炊き方
自衛隊ではこの飯盒をもっぱら食器として使っているとの事ですが、一応は飯も炊ける様になっています。まぁ、食器としてしか使わないのだったら、別に飯盒の形に拘る必要もなかった様に思うのですが、その点は国情というか文化というか、そういうの事情があったのでしょう。飯ごう２型は２合炊きの飯盒です。まず米の量は、掛子の下の段の辺りが２合ですので、それを目安に計ります。飯盒本体には２合炊きの場合の水量線のみついてますので、その線まで水を入れます。あとは、兵式飯盒と同じ様に火に掛けて炊くだけです。
２型飯盒はツルを伸ばした場合、ツルの先端がロックされる仕組みになっていて、ストーブに掛けている最中、兵式飯盒の様にツルがパターンと倒れてストーブの火に炙られる（その結果、塗装が剥げて錆びてくる）事がありません。その代わり、蓋に付いているハンドルにはロックがないので、火に炙られない様に手で持っておく必要があります。まぁ、飯を炊いている最中は飯盒の前から離れる事はありませんし、中身を点検するのに蓋を開ける事もままありますから、ハンドルを手で持ってても大して支障はありません（まぁ面倒ではありますがｗ）
掛子の下の段の辺りが大体２合
水量線は一つだけです
つまり、この飯盒は２合炊き専用という事です
ハンドルがパターンと倒れて火に炙られるのを防ぎます
まぁ、気にしない人は倒れたままでも良いですが
背が低いため、２合でも噴きこぼれはそれなりにあります
（兵式飯盒で４合炊いた時と同じくらい）
水が無くなりきる前に火から下ろします
この辺りは兵式飯盒と同じです
ところで、４合炊きの兵式飯盒で１合炊きをやると、どうにも上手く炊けない事が多く、大抵は芯飯になってしまう事が多いです。そのため、「兵式飯盒は２合炊きから」という認識を長らく持ってきたのですが、１食で２合食うというのは、なかなか至難の業です（昔の兵食では、１食２合が定量でした）。
そこで、せっかく容量が減った飯ごう２型ですから、１合炊きが出来ないかチャレンジしてみました。兵式飯盒の場合は、飯盒に４合と２合の水量線が付いていますが、２型飯盒には１合の場合の水量線は付いていません。目分量で大体半分くらいの水の量を入れます。少ないよりは多い方がマシだと思います。次に、あまり火力の強くないストーブを使います。ガスやアルコール系が良いでしょう。ガソリン系は弱火にしても火力が強いので、ゴッチン飯になりやすいです。
炊き方は２合の場合と同じですが、沸騰したら蓋を取って残ってる水の量に注意する事、焦げの匂いがしてきたら早めに火から下ろす事、この辺りを上手くやれば、芯飯にならず焦げ飯にもならず、飯盒の底を焦げ付かす事もなく、上手に炊ける事が判りました。
２合の水量線の半分くらいまで水を入れます
水の量が減り、焦げっぽい匂いがしたら
火から下ろします
２合の時よりも早く沸騰するので注意です
上手に炊けば底は焦げず、後始末が楽です
蓋と掛子を連結して、食器として使えます
見た目カッコイイのですが
実際に使うと、ちょっと食べにくいです
■長いツルの謎
飯盒のツルというのは、大抵邪魔に感じるものなのですが、自衛隊の１型飯盒は旧日本陸軍の将校用飯盒と同様のスライド式のツルで、畳めば蓋を押さえられる良く出来たツルでした。ところが飯ごう２型のツルは、飯盒のサイズに比してはやたら長く、スライド式でありながら蓋を押さえる事が出来ず、一体どうしてこんな長さにしたのか、かなり謎のある作りになっています。先にも述べた様に、炊飯時にツルを伸ばすと伸ばした位置でロックされるので、倒れてこないメリットがあるのですが、収納時は上にも下にも出っ張って邪魔ですし、斜めにしてもツルが出っ張って邪魔ですので、パッキングにはかなりストレスが溜まる作りになっています。
どうしてこんな作りになったのか、色々考えてみましたが、ドイツ軍の飯盒の様に、蓋と掛子を連結してその間にツルで飯盒をぶら下げるにしても、こんなに長い必要はありません。もし可能性があるとしたら、焚き火で炊爨する時に、４合炊きの兵式飯盒と底の高さを出来るだけ合わせるために、この長さにしたのかもしれません。もっとも、装備の体系として１型と２型が混用されるとは思いにくいのですが、、
もっとも、このツルは簡単に外せますので、外して使っている人も多い様です。また外したまま無くしてしまう人もいるらしくて、別売もされていますｗ
無駄に長いツル
伸ばした時は倒れない様にロックされる仕組みです
こうやって提げて持つにしても
ここまで長い必要はないのですが、、
焚き火で炊爨する時の
兵式飯盒との底の高さの差
ツルは簡単に取り外せます
■携行方法
自衛隊の背嚢には、わざわざ飯盒を入れるポケットが設けられているらしいですが、一般的にはバックパックの中にパッキングするのが普通だと思います。しかし、昔の軍隊では背嚢の外側に縛着していたので（ドイツ軍の場合は、雑嚢に付けてた）、自分もアサルトパックの外側に付けてみました。アサルトパックにはそこかしこにMOLLEウェビングが付けられているので、ストラップを通す事で好きな所に飯盒を付ける事が出来ます。兵式飯盒の場合は、背嚢に縛着するために飯盒にバンド通しが付いていますが（最近は付いてない製品も多い）、２型飯盒にはバンド通しが付いていません。その代わり、蓋に付いているハンドルの先端にストラップを通す事で、ストラップが飯盒が脱落しない様に出来ます。
問題は長ったらしいツルで、飯盒にツルを付けたままでも縛着出来ますが、斜めったツルが何となく邪魔っ気です。そこでツルを外してウェビングに差し込む事で、スマートに縛着できる様にしました。まぁ、実際使う時も、焚き火で炊爨する時以外はツルは要らないので、外しておいた方が良さそうな気がします。
ツルを付けたままだと
こんな感じでツルが余って邪魔っけです
外してウェビングに差し込んでおけば
結構スマートな格好になります
要る時だけツルを付ければ良い訳です
ちなみに、兵式飯盒だとこんな感じ
一気に古めかしい感じになりますねｗｗ
自分は長年、兵式飯盒を使ってきたのですが、深い鍋なので箸であれスプーンであれ食べにくいのは確かです。とは言え、使っているウチに慣れてしまうので、それほど不便を感じた事はありませんでした。むしろ、鍋釜としては良く出来た製品だと思っているくらいです。
今回調達した２型飯盒は、食器としての利便性を強く打ち出しているせいか、鍋釜としては兵式飯盒よりかなり見劣りする感じがしました。食器としての機能を優先させるなら、角形クッカーの方がより良かったのではないかとも思えます。もっとも、角形クッカーでは焚き火で煮炊きする事は出来ないので、炊爨も出来る食器としてギリギリの線で設計されたものなんだろうと思います。
コメント
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飯盒�況拭�！
これは僕の「いつかは欲しいなリスト」に載っている気になっていた物です。
販売しているショップも自宅から30分位で行けるのですが、飯盒にしては高いのと、所有しているスノピのワッパーに似ているので購入に迷っていました。
レポを見て、ますます迷いました。(笑)
たにしさんの道具考察ってホントに面白いです！
要は、買っても使うか使わないかの問題なんですよねぇ。
使わない物に高いお金は掛けたくないですし。
自分の持論としては、本当に飯盒好きなら、兵式飯盒使えってところなんですけど、
欲しけりゃ買っちゃえってのもありますんで、
取りあえず買って使ってみるってのが良いですよw
自分も使ってみなきゃ、このレポート書けませんでしたしw
自衛隊では飯盒炊爨なんかしません（体験入隊や新隊員教育隊を除く）。部隊の移動が多く、ましてや火を使えば自殺行為です。「自衛隊も飯盒炊爨やるんでしょ？」という声を聞くのですが、自衛隊では飯盒は食器です。ていうか、食器として使われているのはまれだと思います。野外では野外炊事をする部隊が炊事したものを食べられる時に食べるか、レーションを食べられる暇がある時は食べます。
ご指摘の件、存じ上げております。
ついでに言えば、洗う手間を省くため、ビニールを敷いてその中に糧食を受けたりもするらしいいですよね。そこまでするなら、最早、飯盒の形をしてなくても良さそうなものですが、敢えて、飯盒の形にこだわり、かつ独軍の飯盒のスタイルにしたのはどうしてなのか、興味のあるところであります。
当方現役ですが、いい加減な事を書かないで下さい。
新教では野外炊事はしません。
中隊ではそれぞれのカリキュラムがあるので千差万別です。
演習の多い部隊に行けば活用してる事実に触れられるでしょう。
飯盒って、一般的な認識では、調理器具なんですが、実際は食器としてスタートしたらしいですよね。
もっとも、感覚的には、片手鍋でインスタントラーメン作って，そのまま食べる、みたいな感じですがww
ボーイスカウト、学校のキャンプ、個人でキャンプした時にしか飯盒は使ったことしか憶えていません。
ただ、飯盒の使い方、飯盒での米の炊き方、中ブタを入れて炊くのは飯盒を直火で炊くと飯盒自体が変形したり、そして炊いたときに隙間からでる米のノリで飯盒の蓋が取れなくなる危険を防ぐ為に中ブタを入れて炊くのだとキツく教えられましたな。実際に実験して蓋が取れなくなるのは中ブタが入ってない飯盒でしたのを憶えています。
金属に熱が加われば、何らかの形で膨張したり変形したりするものですが、
少なくとも、国産の飯盒で蓋が開かん様になるほどヤワな飯盒は見た事がないですよ〜。
変形するのは、大抵は落としたり、変に力加えたりした時ですね。
あと、重湯で蓋が取れなくなる様な事態になった時は、掛子はさらに取るのが面倒っちい事になってそうですが、
この辺りは経験の差？なんでしょうか。
寺崎勉さんも、何かの本で書いてましたが、
自分が食って「美味い！」と感じれる炊き方ができたら、
及第点だと思ってますw
戦闘飯盒２型のレプリカ、もう今後は製造されないのでしょうかね。欲しいです。
「無いものは作る」の精神で、仮に100個ほど作った場合、たにしさんの周りで欲しいという方はいらっしゃいますか？
レプリカというか、本ちゃんのQマーク入りのを作ってたメーカーが、
QマークなしのPX物を作ってた、というのが実際のところの様ですが、
おそらく、市場在庫がなくなって来たみたいですね。
自分の周り、というと、実はバイク仲間ばっかりでして、
あの人らが欲しがるとは思えないのですが（それでも魚沼支部から来た兵式飯盒は強制配布しましたがｗ）
ヤフオクなどに出せば、そこそこ需要あるんじゃないでしょうか。
ちなみに、防衛省から制式の仕様書が公開されているので、
設備のある人なら作れちゃうんじゃないでしょうかね？？
http://www.mod.go.jp/j/procurement/chotatsu/nds/pdf/s/s2036.pdf
二型は中蓋で一合分の水蒸気炊飯が出来ます！
さりげなく中蓋に一合用の水量目盛りがあります💡
水蒸気炊飯って何ですか？
昔の軍隊みたいに、蒸気釜使うやり方、ではないですよね？？
まぁ、この飯盒はやっぱ食器としての役割の方に重点を置いてる様なので
うまい飯炊くのなら兵式飯盒一択ですねぇ、自分は^^
名前について疑問があります。
戦闘飯盒２型はいつからその名前になったのでしょうか？
この記事の当初は飯盒２型のようでしたが、いつからか戦闘飯盒という名前になっています。
レプリカを作った会社がつけた名前なのでしょうか？
それとも自衛隊でも最初から戦闘飯盒２型という名前で呼ばれていたのでしょうか？
戦闘飯ごうという名称は、陸上自衛隊仕様書ＥＱ−Ｋ１７００２７Ｊに記載されているのですが、
https://www.mod.go.jp/gsdf/eae/eadep/tyokai/matudo/matudoHP2015/2koukoku/273siyousyo.pdf
飯ごう２型と併記する格好で書かれているんですよね。
飯ごう２型の仕様書ＤＳＰ Ｓ ２０３６はネットで見つかるんですが、
戦闘飯ごうの仕様書ＧＱ−Ｓ００００５１は見つからないので、
別個のものなのか同一のものなのか、分からないんです。
また、あの飯盒を現役の人がなんて呼んでるかも、知り合いが居ないのでわかりません。
ただ、個人的には、飯盒に「戦闘」の名を付けるのは、実に妙ちくりんな事だと思ってますｗ