ゲルネンとは、いわゆるジェル状のアルコール燃料の事で、もっぱらBBQの時の炭熾しの火種として売られてます。まぁ着火剤ですので、これまであまり注目してなかったのですが、この度、米軍がジェル状燃料のUtility Flameなる固形燃料を採用したとの事で、興味が増した訳です。
■日米ゲルネン対決
今回のオフ会場となったのは、さいたま市の秋ヶ瀬公園。アドレスでビューッと行ってきました。ちょこっとした雑木林を抜けたベンチの所でポンチョ張って風よけ作って、地面にシート敷いて会場設営完了。米軍のポンチョって、昔からタープ代わりに使ってましたが、あると便利です。昔持ってた奴は売ってしまったのですが、改めて手に入れたい一品です。取り敢えず、Utility Flameとゲルネンの見た目の比較。Utility Flameはアルミか何かパッケージでパッケージを開封して中のジェルを出して使うタイプ。ゲルネンはビニールでパッケージされていて、直接火を着けて使います。Utility Flameは専用の風防兼五徳があるのですが、これがペラペラのブリキ板で、一応は上にクッカーを載せれる事になっているのですが、あまり重たい物を載せると潰れそうです。ゲルネンの方には五徳なんぞはそもそも使う目的の物ではないので、エスビットとキャンティーンカップスタンドを用意しました。
とりあえず、エスビットにゲルネンをセットしてみたのですが、これがあつらえたみたいにピッタリです。さっそくキャンティーンカップに水を400mlほど入れて火を着けてみたのですが、これがよく燃える。そりゃまぁ元が着火剤ですから燃えて当然なのですが、ゲルネン1個でアルファ米を戻せる程度のお湯を沸かす事が出来ました。Utility Flameの方も似たような感じで湯を沸かしていましたが、ゲルネンとの違いは煤がカップの底に付く事。エスビットタブみたいな煤で、ウェットティッシュで拭いても粘つく様な煤でした。ゲルネンの方は煤は出ません。
今度はカップ焼きそばのお湯も沸かしたのですが、多少のそよ風など無視してよく燃えていました。この辺りは液体アルコールよりもゲルネンの方が頑張ってるなー感がありました。
■キャンティーンカップスタンド最強伝説
当初、ゲルネンを燃やすと中の燃料が溶け出して燃え広がるんじゃないか、みたいな事を考えていたのですが、そんな事は全然なくて、むしろ燃え滓は収縮して小さくなりました。Utility Flameの方は白い粉っぽい燃え滓になりました。問題は、Utility Flameの方は一回使っただけで風防が焦げてしまい、こりゃ何度も使えるもんじゃないなー、という感じでした。まぁ、見た目からして何度も使うものでもなさそうですが。。。ゲルネンを使ったエスビットの方は何ともありませんでした。さて、今度はキャンティーンカップスタンドを使ってみました。元々キャンティーンカップスタンドは、昔、米軍で支給していたトリオキサン固形燃料を使うためのスタンドです。そのスタンドにキャンティーンカップをセットして、スタンドの中で固形燃料を燃やす訳です。まったく同じ様にゲルネンをスタンドの中で燃やしました。ただし、アルミホイルを敷いて、その上で燃やすようにしました。
すると、エスビットより囲われてる部分が多いせいか、より風に強く、かつエスビットより空気が入らないせいか、ゆっくり燃える様でした。今度は200mlほどの水を沸かしたのですが、燃料消費はかなり抑えられている様でした。何にしても、キャンティーンカップスタンドが本来あるべき姿で使える、という点ではゲルネンのポイントは非常に高いと思いました。
キャンティーンカップスタンドは、これまでにもトランギアTR-B25の五徳として活用してきた訳ですが、ゲルネンの登場によってますます需要が高まってきました。米軍がUtility Flameをどういう意図で採用したのかよく判りませんが、カップで温め物をするという事であるのなら、キャンティーンとスタンドを再採用した方が良いんじゃないか、みたいな話しをしていました。
■ゲルネンで炊飯
ゲルネンが十分実用に耐える事を確認した上で、自宅に帰ってから飯盒で飯を炊いてみました。キャンティーンカップスタンドの上に飯盒を置いたのですが、この状態だとアルストだと空気の流入が少なくて火が消えてしまうのですが、ゲルネンはしっかり燃えました。しかし、さすがに1個では炊ききれなくて、2個目を投入しました。この種のゲルネンは燃焼中に追加投入すると危険とされているのですが、火が小さくなってからゆっくり入れる分には問題なく追加出来ました。最大の問題は、燃焼ガスが結構有害だった、という事です。最初は気が付かなかったのですが、2つめを投入して暫くすると、ネコがクシャミをし始め、自分も目がチリチリとしてきました。こりゃヤバイと思って立ち上がって窓を開けようとしたら、部屋の上空はかなり空気が汚染されていて、マジでヤバイ感じでした。アルストやコケネンではこういう事はないですし、エスビットもまぁ臭い部類ではあってもここまで酷くないので、油断していました。ゲルネンは元が屋外で使う着火剤ですので、部屋の中やテントの中で使うのは、よほど換気に気を付けないと無理です。実質的には厳禁です。
その点はとても残念ではありましたが、それでも2個目が消える頃にはしっかり飯が炊けていました。屋外で使うという条件はありますが、着火剤として、また固形燃料として、どちらにも使えるというのは大きなメリットであります。
■ゲルネンはウルトラライトたり得るか?
ゲルネンの大きなポイントは、燃えたら後はちょっとした燃え滓しか残さない、と言う点です。アルストはアルコールストーブやボトルがありますし、コケネンも缶入りだと缶が残ります。その点では、ゲルネンはほとんど残らない訳です。言い換えれば、容器の分だけ軽く安い、と言えます。そのゲルネンを持ち運ぶ上で心配なのは、何せただのビニールのパッケージですから、潰れたり何かが突き刺さったりして、中身が爆裂する恐れです。もっとも、これはケースに収める事で防止出来ますから、アルストセットのアルストの代わりにゲルネンを入れていけば、キャンティーンカップがケース代わりになります。
値段に関して言えば、缶入り固形燃料よりも安い事になります。平井のホームズでは、ニチネンのトップ缶の250gが348円ですが、これは200gで298円です。キャンティーンカップスタンドは大体600円くらいですが、これは一度買えばずっと使えるますし、何なら空き缶だって良いわけです。その意味で、価格的にもウルトラライトな燃料と言えると思います。
■Utility Flameって何のさ?
さて、米軍が採用したUtility Flameですが、日本のゲルネンと比較して、取り立てて珍しい物でも優れている物でもありませんでした。むしろ昔のトリオキサン燃料の方が、煤も出さずに良いくらいです。この種の燃料を米軍が採用するなら、トリオキサン燃料を再採用した方が良いんじゃないか?という意見で一致しました。そもそも米軍は、キャンティーンカップとかで温め物をしたりするのか?という部分でも疑問です。よしんばそうしてるとして、Utility Flameのしょぼいブリキの風防では、安心して湯も沸かせません。そこで考えたのは、今、米軍が戦っているアフガニスタンは山岳地帯で、昼夜の寒暖差が大きく、このUtility Flameは暖を取るために採用されたんじゃないか、という事でした。
そこで思い出したのは、自衛隊では頭からポンチョを被って、中で缶入り固形燃料を燃やして暖を取る、という話しです。同じ様な事をこのUtility Flameでやったとして、ゲルネン同様に有害なガスが出たら、目も当てられない事になります。まぁ、何にしてもソリッドタイプのトリオキサン燃料は復活して欲しいものです。
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