昔から我が国には、炊いた米を干して作った「糒」というのがあるのですが、その現代版がアルファ米です。元は先の大戦で軍の要求に合わせて開発された物ですが、21世紀になってようやく、防災用またアウトドア用として一般化してきた様に思います。
   アルファ米の一般化への道のりは、すなわち、「味」であったと思います。恐らく、製造過程や保存能力云々に関しては、戦前に開発された時と技術的には大差ないんじゃないかと思うのですが、如何せん、昔のアルファ米は不味かった。しかも手間が掛かった。だったら白米炊いて食った方がマシ、と思えるほどだったのです。
   アルファ米が、大震災で欠品するほど用いられる様になるには、開発者達の「味の向上」への不断の努力が続けられていたのだろうと想像する訳です。


onisi_alfa
尾西食品の2食分のアルファ米
一人で食べるにはチト多すぎです





■昔のアルファ米

   一昔前まで、アルファー米といえば、アルファ食品の「アルファ化米」しか見かけませんでした。これしかないから選びようもない訳で、不味くてもこれを食うしかありませんでした。初めてこれを食った感想は、とにかく薬臭い飯、というもの以外の何物でもなく、非常食としてこのアルファ米と乾パンとどっちが良い?と聞かれたら、間違いなく乾パンを選んでました。

alfa
自分が知る限り、登山具店などに並んでいたのは
このアルファ化米だけでした
言っちゃ悪いけど、激烈に不味い代物でした


   アルファ米というと、お湯を注げばできるイメージがあるのですが、このアルファー化米は説明書きによると、炊かねばなりませんでした。所用時間は15分程度。だったら、普通に米から炊いた方が良いような気がしてました。しかも保存期間はものの1年間。これじゃ、非常食としても心許ない。その様な訳で、非常食としてもキャンプ用としても、このアルファ化米を使う事はありませんでした。


■アルファ米が一般化し始めた頃

   アルファ化米は随分前からあったのですが、世紀が改まった頃から、他のメーカーの物も登山具店やアウトドアショップに並ぶ様になりました。その中で一際大きなシェアを持っていた(様に感じた)のが、尾西食品のアルファ米商品でした。以下の試食レポートは2006年頃のものですが、圧倒的にアルファ化米よりも味が向上していました。それでも多少の不満があった様です。(値段は2006年当時、2食分のものです)

onisi_alfa_siro
<アルファ米白飯> 473円(税込)
   いわゆるプレーンな白ご飯です。出来たてでは、思ったほど薬臭くなく、パサパサ感もありません。おかずに 良く合うご飯、という感じでした。が、器に盛ると、急速に冷め始め、半分食った頃にはぬるくなってしまいました。と同時に、徐々に薬っぽい臭いとパサつき が気になるようになりました。それでも、最後まで食いきりましたから、「食える」アルファ米です。量が多いので、1人分として食うにはキツイものがありま す。丼ものとか焼きめしなんかに使うと良いかも。〔味評価…○〕

onisi_alfa_sekihan
<アルファ米赤飯> 630円(税込)
   試食第二弾は、いきなり餅米いってみました。薬臭さはまったくなく、しっかり赤飯してました。餅米特有の 粘っこさもあまりなく、適度な粘性で食感も良かったです。冷めても美味しく頂けるところは大変よろしい。ごま塩の小袋が付いてましたが、2食分なんですか ら、2袋入れて欲しかったところ。今回は腹が減っていたせいもあって、二食分ペロンと食べてしまいましたが、腹にもたれる事がなく助かりました。あずきが 底の方に固まっているので、食べる前に器に移してかき混ぜた方が良いでしょう。〔味評価…◎〕

onisi_alfa_kinoko
<アルファ米きのこご飯> 630円(税込)
   尾西フーズのアルファ米には色んな炊き込みご飯がラインナップされてる。このきのこご飯は、名称通 り、きのこがメインの炊き込みご飯である。今回は、具の比重が軽かったのか、ご飯の上の方に具が固まって仕上がった。味は確かにきのこご飯で、そこそこ美 味しいのだが、炊き込みご飯としてはちょっと薄かった気がする。今回、食べるまでに少し間が空いてしまったので、冷めるのが早く、冷め始めるとアルファ米 独特の臭いがしてきた。早めに食べた方が断然美味い。〔味評価…○〕

   この当時に共通して書いている事は、「温かいウチは比較的美味いが、冷えると薬臭い」という事です。しかしながら、かやくご飯などは具が上に溜まっていて、混ぜているウチに急速に冷える、という具合で、どうしても薬臭さからは逃れられない感じでした。また、この時使ったのは2食分だったのですが、熱湯を入れて20〜30分も待たねばならず、出来た時にはヌルくなり始めており、袋を開けた途端に急速に冷めていった、と記録しています。



■そして今のアルファ米

   この様な訳で、相変わらずアルファ米への評価は低いままだったのですが、最近になって、あちこちから「美味い」という声をよく聞くようになりました。美味い不味いは人によって味覚が異なりますので、他の人が美味くても自分が不味かったのでは意味がないのですが、前回試食してから7年近くが経っており、もしかしたら格段の技術革新によって味が向上したのかもしれません。そこで「だまされた」と思ってアルファ米を買ってきました。

20121002_113949
前回は四角くパッキング出来るところに注目して2食分を買ったのですが
あまりに量が多くてエライ目にあったので
今回は1食分にしました

20121002_114000
容量は100g、仕上がりは260gですから、茶碗1杯分くらいです
160mlの湯を注いで15分で出来上がりと書いてあります
水(15度)だと1時間くらい掛かるそうです


<アルファ米の作り方>
   パッケージの裏にイラスト入りで丁寧な説明書きが書いてあるので、その通りに作っていきます。

20121002_114050
   封を切ると、先ず目に止まるのが脱酸素材とプラスチックのスプーン。湯を注ぐ前にこれらは取り出します。パッケージの片面に水量線が描いてあります。

20121002_114914
   沸かした熱湯を注ぎます。説明書きには水量線まで入れる様に書いてあるのですが、ギリギリだと上の部分がカチカチのまま残ってしまう事もあるので、ちょっとだけ多めに入れておく方が良いかもしれません。

20121002_115015
   15分待ちます。飯炊いてる間の15分はあっという間ですが、タダ単に待ってるだけの15分は結構退屈です。実際のキャンプなどでは、ラーメン煮たりして、それが出来たらご飯も出来る、という感じでしょう。

20121002_120426
   15分経ったら出来上がり。封を開けたら冷め始めるのは、今も変わらない様です。暖かい季節にはともかく、冬場や雪山では結構厳しいんじゃないかと思うのですが、まぁ、炊かずに食えるのがスゴイのでしょう。


■試食の結果

   さて、食べてみた結果ですが、お味の方は昔のアルファ米に特有の薬臭さは大分無くなっていました。雰囲気としては、ちょっと古い米を炊いた感じです。かなり前に、糒を作った事があるのですが、その糒の埃臭さを相当薄めた感じです。ご飯だけ食えと言われたらちょっと厳しいですが、オカズがあれば大丈夫という感じです。特筆すべきは、冷えても温かい時と味が余り変わらなかった、という事です。これは7年の技術の進歩をみて取る事が出来ました。という事は、あと数年もしないウチに、炊いた米の飯と変わらないアルファ米が出てくる可能性もあると思います。
   今回の率直な感想では、これなら防災用や極力荷物を軽くしたいキャンプなどの時に使える、と感じました。まぁ値段はやはり多少お高いですが(100gで298円)、用途や状況を考えれば納得いく値段だと思います。他の炊き込みご飯やかやくご飯も機会があれば試食したいと思います。

20121002_120541
炊いたご飯とは比べようもないのですが
味の方は十分賞味に耐えうる物になっていました