先日、オフビのコースのマディをまったく走れなかった事に衝撃を受けて、素人がオフロードを走る上で、タイヤの選択が如何に重要かを痛感した訳ですが、それ以前に履いていたタイヤというのが納車時以来9000kmも走ったタイヤという事で、オンロードならともかく、林道を走るのでさえ、そろそろ交換時期に来ていると判断し、前後ともタイヤを交換する事にしました。
   さて、これがブロス時代なら、タイヤ交換はバイク屋の社長に任せてしまうところですが、何と言ってもオフ車です。タイヤ交換やパンク修理というのは、やっぱりオフ車乗りとしては出来る様になっておきたい。もっともXRは性能が良いのか、たまたま自分の運が良いのか、これまでパンクというのをした事がなくて、タイヤ交換やパンク修理をやる機会がありませんでした。しかし、レースに出るならタイヤ交換は自分で出来た方が良い、という意見が圧倒的に多かった事、また普段履きとレース用のタイヤを頻繁に交換する機会が増えそうな事、などなどの新要素を勘案して、このタイヤ交換は技術習得のチャンスと捉え、バイク屋の社長の指導の下、交換作業にチャレンジしてみる事にしました。

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本日投入のミシュランT63、ダンロップのハードチューブ
そしてビートストッパー前後
新品の臭いプンプンです




■タイヤの選定

   当初、交換するタイヤは、納車時と同じダンロップのD605を再度付ける予定でした。このオフも走れるオン寄りのタイヤは、9000km以上も走れた事から耐久性は抜群で、普段乗りには最適なタイヤでしたが、オフを走るには少々力不足、ましてやマディなコースではほぼ役立たず、という事で、もっとオフ寄りのタイヤに変える事にしました。
   大体、評判が良かったのは、ピレリのMT21かミシュランのT63であった訳ですが、これらのオフよりのタイヤをもってしても、オフビクラスのマディでは効かないという事がその後の調べで判り、ではどういったタイヤになるのかというと、公道使用可のエンデューロタイヤや、公道では不可とされるモトクロスタイヤでなければ力を発揮しない、との事でした。しかし、これらのタイヤはアスファルトの道では良く滑り危ないとの事。また一般道で使えば、減りも滅法早いとの事でした。
結局、レースの時はレース用のタイヤに履き替える事にし、普段履きとしてはMT21かT63という事で話しが落ち着き、MT21を注文したのですが、たまたまピレリ本体でタイヤの在庫が切れているとかで、ミシュランのT63を履かせる事になりました。ちなみにタイヤサイズは、前が90/90-21 54S、後ろが120/80-18 62Sです。(ダンロップの場合は、前3.00-21 51P、後ろP4.60-18 63P)
そして、タイヤを交換するだけでなく、ビートストッパーとハードチューブも入れ、ちょっとレーシーな足回りにしてみる事にしました。よく聞く話しでは、これらを入れるとタイヤ交換やパンク修理が大変だ、という事ですが、どの程度大変なのか、また入れてみてどの程度の効果があるのか、やってみない事には判らないと考えたからでした。

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左が9000km走ったダンロップD605、右がミシュランT63
明らかにT63の方がオフ車っぽいですね



■前輪を外す

   タイヤの交換をするためには、まずは車体からホイールを外さねばならん訳です。しかし、自分が一番、この作業で難しいと感じていたのは、実はこのホイールを車体から外す作業でした。というのは、元々メカ音痴で、昔から「バラした機械は元通りにはならない」というのがたにし的定説でして、しかも人ほどの大きさもあるバイクなど、バラせるのか〜、と感じていたからなのです。まぁ、バイク屋さんなどは普通にバラして組み立ててますから、出来る様に作られている訳ですが、自分はどうにも苦手意識があった訳です。しかし、そんな事言っておれないので、バイク屋のあんちゃんの指示に従って、バラします。
   まず、キャリパーのボルトを2本抜いてキャリパーを外し、前輪のアスクルシャフトのブラケットのボルトを緩めて、アスクルシャフトを留めているナットを緩めます。これには工具バッグに入れている17mmのコンビレンチを使いました。というのも、出先で修繕できる様になるのが、今回の作業の目的ですから、手持ちの工具で基本的には作業する事にしていたからです。
   しかし、このナットが固いっ! まぁ、高速で回転する車輪を留めている訳ですから、ヤワな留まり方はしてないんでしょうが、やっぱ固い。素手でレンチを持ったのでは、手が痛くなるほどです。まぁ、長いレンチを使えば楽なんでしょうが、あくまで「手持ちの工具」での作業ですから、3〜4回ほどフンヌとチャレンジして、やっと緩めてシャフトを抜く事が出来ました。

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ブラケットのボルトを緩める
ラチェットがあれば楽なんでしょうが、重いので装備してません
スライドヘッドハンドルを使うなら
いっそコンビレンチでやった方が楽でした



■フロントタイヤ交換

   実はこの数日前、ジョルノのタイヤを交換しており、その際にタイヤの交換の要領だけは予習していました。ですので、タイヤレバーの使い方などは一応は頭に入っていました。ただ違うのは、ジョルノの方はチューブレスなのに対して、XRはチューブが入っているので、レバーでチューブを噛まない様にしなければならない事です。
   まずはムシ回しでムシを抜いて、空気を抜く事からスタートですが、ムシ回しを使うのも今回が初めてで、空気を抜く時にムシを飛ばしてしまいました。これが林道だったら、ムシをなくしていたかもしれません。空気が抜けたら、タイヤのビートを落とさねばなりませんが、前輪の方は手で押さえる程度でビートが落ちました。そんな感じなので、タイヤを外すのもそれほど手間ではなく、エッチラオッチラとレバーを差し込んで片側のタイヤのビートをホイールから外し、チューブもビニョーンと取り外して(タイヤを外す前に、バルブのナットを外すのを忘れない事)、タイヤを良い案配に外しました。

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エッチラオッチラとタイヤレバーを繰り出します
うっかりすると、外れたところが元に戻るので
油断も隙もありません


   続いて、今回初投入のビートストッパーの取り付け。ここでワタクシ、大ボケをかましてしまいました。というのは、ずっと長い間、ビートストッパーはチューブのバルブの部分に宛がうものだ、と思いこんでいたのです。だから、ホイールのバルブが出てくる穴も大きくするんだろうな、と思っていたら、違うところにビートストッパー用の穴が設けてあってビックリした、という次第です。物事を知らんというのは、怖い事ですねぇ。

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まぁ、形が形だけに、勘違いしておった訳です

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こんな感じでビートストッパーは付けます
これで空気圧を落としても大丈夫!?



   ビートストッパーを取り付けたあと、新品のミシュランの臭いをプンプンさせているT63のビートにワックスを塗って、回転方向を確かめた上で片側のビートをホイールにぶち込み、チューブを仕込む訳ですが、そのチューブというのが普通のチューブよりも分厚いハードチューブで、タイヤとホイールの狭い隙間から押し込むのに難儀しました。ビートストッパーが入っているから、余計に入れにくかった様です。
   それでも何とか上手い具合に入れ、ホイールのリムにチューブが掛からない様、しっかり中に入れたあと、もう片側のビートをホイールに入れ、ビートストッパーもちゃんと噛ませて、作業完了。コンプレッサーで空気を入れてみたところ、空気漏れもなさそうなので、チューブも大丈夫だった様です。現地で修繕する時は、コンプレッサーなどなくて、ポンプで空気を入れなければならないでしょうから、もっと作業は大変だと思うのですが、今回は交換要領の実習ですから、そこら辺は省略です。
   ホイールをフロントフォークに組み直し、前輪は作業終了。

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丁寧にチューブをリムの内側に入れて、と
隙間が狭くて、軍手をしてたのではやりにくいので素手で
手がちょっと痛かったです


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外した部品を忘れず組んで
メーターのコマもちゃんと噛み合わせて
ちゃっちゃーっと(は行かなかったのですが…)組み立てます



■後輪を外す

   前輪の分解・組立で自信が付いたので、後輪の方もバリバリ作業します。が、難易度はこっちの方が若干上でした。というのは、アスクルナットが滅法固いっ! こちらはキジマのタイヤレバーに付いている21mmと24mmのレンチで、アスクルシャフトの両側からボルトとナットにレンチを掛けて、右側についているナットを回さねばならないのですが、とてもじゃないが片腕では力が足りない。かといって、両腕で回せば左側のボルトの頭が空回りする。結局、左側はレンチが下向きになるようにセットしてレンチを足で押さえ、右側のレンチに全体重を掛けてエイヤッと回して外しました。

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リアタイヤの方は、チェーンとかあるので
前に比べると少々面倒です



■リアタイヤ交換

   さて、前輪と同様にムシを外して空気を抜いた訳ですが、後輪の方はそんなもんじゃビートが落ちず、レバーを噛ませてパンパンとビートを外していきました。そしてタイヤを外しにかかったのですが、こちらは物もごついせいか、前輪の様にパッパとは外れず、少々手こずりました。

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後輪はなかなか大変でした
腕に浮いた血管が、それを物語ってますw


   それでもビートストッパーを付け、新しいタイヤの片側のビートをホイールにはめ込むまでは何とか出来たのですが、チューブを入れるのに大苦戦しました。というのも、まずバルブがホイールの穴からなかなか出てこない事、またチューブがごつくてタイヤとホイールの隙間から入れるのが相当難儀であった事。結局、自分一人ではやりきれず、バイク屋の社長にかなり手伝ってもらって、ようやく入れる事が出来ました。

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ハードチューブにしたのを少々後悔中……

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結局、社長にやって貰う事に
バルブがなかなか出なくて
ラジペンで押し出す様にホイールから出しました


   空気漏れのチェックも終わり、今度はスイングアームにホイールの取り付け。この作業そのものは、バラし方が判れば難しくはないのですが、ここでちょっと問題発生。というのは、アクスルナットを締め込もうとしたら、チェーンのテンションを調整するコマがずれてしまうのです。まぁ、ゆっくり注意してやれば良いのかもしれませんが、あまり気持ちよくないという事で、左右のコマを入れ替えて逆さに付けてみる事に。それでナットを締め込んでも、コマがずれる事はなくなりました。調整する時は、下から叩き上げてやる様にとのあんちゃんのお達しです。まぁ、そんなに頻繁にいじるところでないので、緩みさえしなければ良いでしょう。

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後輪の組立中
押したり引いたり、プラハンマーの必要性を実感しました


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通常とは逆向きに付けた調整のコマ
要は、案配良ければいいのです



■試運転

   何だかんだで交換が終了しました。早速、試運転をしてみましたが、これがなかなかイイ。接地面はD605よりも少ないはずですが(ほぼ1/2)、制動性は大して変わりません。なのにグリップが良くなった感じがして、運転しやすくなりました。評判通り、時速60kmを越えたあたりでタイヤノイズがしますが、気になるほどではありません。
   取り敢えず、新品の状態でオフビの泥を走ってみて、上手く行けばこの種のタイヤを使い回す方法で対処しますが、ダメな時はEDタイヤやMXタイヤに換えて、往き帰りの一般道は厳重要注意安全運転で対処する他なさそうです。林道やドライなコースは恐らく大丈夫でしょう。

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試運転に向かうワタクシ。タイヤがやる気満々です


■気がついた点

   キジマのレンチ付きタイヤレバーは、今は廃番になってしまって手に入らないのですが、タイヤレバーとしては使える強度を持っている事が判りました。 まぁ、自宅で作業をするのであれば、もっと長いレバーの方が作業はし易いのだろうとは思うのですが、携帯工具としては及第点だと思います。ただし、レンチ として使う場合は、持ち手の部分がレバーですので力を込めると手が痛くなります。グローブをするなど対処する必要があるでしょう。
   今回の作業で、もっとも難易度が高かったのは、リアチューブのバルブをホイールの穴から出す作業で、結局はあんちゃんに頼んでやって貰ったのですが、出 先ではそういう訳にいきません。あんちゃん曰く、「ホイールの穴からバルブ出しやすくするワイヤーみたいな物」を使うと楽、という事でした。恐らく、エアバルブプーラーという奴だと思うのですが、そんなに高い物ではないので今度試してみたいと思います。
   今回、一番痛感したのは、ハードチューブはその名の通り、「入れるのがハード」なチューブだという事。恐らく、取り出すのもハードなのでしょう。レース では入れている人が多い様ですが、恐らくは空気圧をかなり落とす(0.6くらいまで)からではないでしょうか。これでパンクしないのなら、まぁ有り難い話 しですが、パンクしたら目も当てられません。予備で持って行くチューブは、普通のチューブでないと交換が大変そうです。まぁ、なってみない事には判らない のですが。。(その為の練習でしたし)

■感想
   作業が終わって、改めて振り返ってみると、大変には違いないけど楽しかったな、と感じます。人にやって貰うのは確かに楽なんですが、やっぱり自分のバイ クですから自分でやれた方が、楽しみ方の幅も広がった気がします。何より、出先でパンクした時の安心度は、かなりアップしました。これからも交換作業を続 けて、目つぶっても出来るくらいになりたいものです。
   ホイールを車体から外し、また付け直す作業は、やってみる前はかなり難しそう、というか、ちゃんとやれるのか心配だったのですが、これは思ったほど難しいものではありませんでした。むしろ難しかったのは、アスクルシャフトを留めているナットを外す方で、これもやっぱり“コツ”なんだろうな、と感じました。
予   め、バイク屋の社長から言われていたのは、「タイヤ交換は“コツ”ですよ」という事でしたが、実際にやってみて、その通りだと思いました。もち ろん、力も込めなければならないのですが、力だけじゃどうにもならない事も多い訳で、コツが分かれば大分作業は楽になるんだろうな、という感じがしまし た。
   今回の作業は、バイク屋の社長の手助けなしには、絶対に無理でした。この場を借りて、お礼もうしあげます。(そのバイク屋さんは→こちら